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団塊のソテー

あらすじ

殺祭 蜜姪さむいり みつみ

『モップを握れば床は大理石。料理によりをかければ三ツ星シェフ。謎を呼べば深まる逸材女将候補』

そう裏で呼ばれる程のやり手だった。
だが、仕事人では無いし遊び人では無い。
ただ何かの力になって、居場所が欲しい家政婦の卵でもある。


本編

ある日、男性会社員は次々と現代老人によってストレスの渦中に追いやられる。

そんなある日、彼に封筒が送られてきた。

『RESTして頂ければと。』

何処かのレストランからの招待状だった。

彼はそこへ向かい、モップで床を掃除している姿が似合う眼鏡をかけた女子高生と出会う。

「おひとり様ですね?席へご案内します。」

水戸黄門のお銀のように正装へ早着替えをした彼女は彼を席へ案内する。

そこには普段は動画配信や地上波でしか見られないご馳走が並ばれていた。

彼が料理を食べ終わり、先程の女子高生が風呂や他の娯楽の案内をしてくれた後に彼へ囁く。

「もう貴方にストレスを与える者は一人も居ません。」

謎の言葉を残し、彼はレストランを出た。

「またのお越しを。」

遠くから声がした。

それからいつものように出勤をしていると、うるさい老人達の姿を見る事は無かった。

次の日も、また次の日も。

これはこれでいい。
彼は気にせず出勤する。

そこを望遠鏡で覗く女子高生の姿が。

「お掃除完了。」

あのレストランでモップを手に持ち、料理を振舞った女子高生だ。

彼女の腕は老人を捉えている。

「頼む!改心するから…もう余計な事は言わない。ちゃんと隠居するから助け…」

しっ!と指を唇に当て、女子高生は老人を睨みつけた。

「ちゃんと鮑を添えるから大人しくしていて。」

老人に拒否権はなかった。

女子高生は今日も店の為、世の為、邪魔者を文字通り片付けるのであった。

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