VRChatを日本人が満足にプレイするには結局いくらかかるのか

初心者案内をすると、Quest版VRChatやデスクトップ版VRChatで始めた人とかかわることがある。その人たちに「PCVRじゃないと人権ないよ」などと現実を突きつけるのは、希望に水を差す行為で嫌である。その気持ちを発散するためのお気持ちエントリーである。お気持ちなのでご意見不要。



「VRChat自体は無料」の現実

Meta Questが安価となり、Quest単騎でVRChatを始める人は最近多い。しかし実際に始めたあとどのような現実に直面するか。

Quest勢は絶滅危惧種

日本人Quest勢は存在する。しかし日本人VRChatユーザはPCVRばかりである。まわりの日本人ユーザは皆PC専用アバターのみで、Quest勢にはfallbackした姿でしか見えない。またパフォーマンスの問題でユーザ個別にshow avatarしないと見えないことが多い。さらに自称初心者案内屋なるものがPCオンリーアバターであるという現実がすべてを表している。これは「Quest勢に人権はない」と断言して差し支えない。

デスクトップVRChatの現実

音声チャットはできるが、VRワールド・パーティクルライブは一部しか楽しめない。

つまり日本のVRChatにおける人権とは

HMD+PCVR勢のことである。人権がなくても、個人で生きる・デスクトップ勢としてヒエラルキー下位で生きることは十分可能。ただ、自分に人権がないマルチプレイゲームが楽しいわけがないだろう。

世界的にはQuest勢は多い

そもそもゲーミングPCは高級品である。日本はお金持ちの国だね。いっそ海外交流をメインにするならQuest単騎で楽しむこともできるかもしれない。


では、日本人がPCVRでプレイするには、プレイし続けるには、結局いくらかかるのか。

始めるのにいくらかかるのか:ハードウェア観点

VRReadyとは

https://vrinside.jp/device/vr-ready-pc/

OculusRiftに必要なPCスペックグラフィックカード:NVIDIA GTX 1060または、AMD Radeon RX480以上
代替可能なグラフィックカード:NVIDIA GTX 970または、AMD Radeon R9 290以上
CPU:Intel i5-4590、またはAMD Ryzen 5 1500X以上
メモリ:8GB以上のRAM
ビデオ出力:DisplayPort 1.2 / miniDisplayPort
USBポート:USB 3.0ポート1つ
OS:Windows 10

https://vrinside.jp/device/vr-ready-pc/

2022年時点のものである。
現在のゲーミングPCと銘打たれたPCでこれを満たさないものはほぼないだろう。

ゲーミングPCを持っている人は強い

だいたいVRreadyである。
ただし、VRChatでボトルネックとなるのは、主にVRAM容量である。8GBではVRAMが枯渇し描画性能を発揮できない状況が多い。パフォーマンス設定で逃げるか、パーツ更新の必要性を覚悟すること。

ゲーミングPCを持っていない場合のPC構成

VRChatをプレイすることを主眼に置いた、コストパフォーマンス有線のPC構成を例示する。ここではVRChat向けに、グラフィック描画力よりもVRAM容量を優先して考える。

●PC構成例
1.ミドルクラス
ミドルローとしてGeForce 3060 12GBとしたところ、2024/3時点で以下の価格である。

OS:Windows 11 Home
CPU:Ryzen 5 4500
メモリ:16GB(8GB×2) DDR4-3200 DIMM (PC4-25600)
グラフィック機能:GeForce RTX 3060 12GB GDDR6
ストレージ:500GB NVMe対応 M.2 SSD
価格:115,800円

大半のミドルスペックグラフィックボードはVRAM 8GBである。VRChatを目的とする場合、VRAM容量が少しでも多いグラフィックボードを軸にすることをお勧めする。なお上記でも総合スペックや安定性などは保証しない、自らのニーズに従い検討すること。あくまで価格例である。
モニターやキーボード等が必要であれば当然別途。

2.ミドルハイクラス
GeForce 4070 Ti SuperはVRAMが16GBなので、VRにもよいであろう。
しかしあくまでもミドルでしかないので、完全再現できない状況は多い。
グラフィック描画力が上がった場合、CPUも相応の性能がないとボトルネックとなることがあるので、気を付けること。

3.ハイクラス
GeForce 4090とか好きにして。適当に40万円くらい出してつよつよPC買いなよ。

●Radeon
「昔はひどかった、今は昔ほどじゃなくなった、でも結局今でも完璧じゃない」という噂しかしらない。「すでにRadeonを使っている」「あえてRadeonを使おうとする」人以外に積極的に勧めるに至る知識はない。

●そんないいかげんな
そう思ったら、この辺りを参考にしてください。よくまとまっている。


HMD本体を買ったら終わり、ではない

経験則から、以下の追加出費が必要になる
●USBケーブル
最近のHMDは無線接続が主流だが、無線ゆえにトラブルは多い。問題切り分けのためにPCとUSBケーブルで接続してプレイすることはよくある。この場合5m程度の長距離USBケーブルを用意することになる。またUSBケーブル自体の品質も高いものであることを要求され、5000円前後。

●エリートストラップ・フェイスカバー
頭の標準ストラップは締め付けがよくない。頭痛が起きる。エリートストラップに変更する人が大半である。また接顔部の汚れが嫌でシリコンのフェイスカバーを追加することも多い。5000円前後。

●眼鏡レンズ
大半の低視力ユーザは、眼鏡をつけたままHMDをすることになる。嫌ならHMD用視力調整レンズをつけることになる。10000円前後。

●イヤホン・マイク
HMDはオープンエアスピーカである。音漏れが嫌であればイヤホンを追加することになる。デスクトップ勢はマイクの音質が気になり新調することになる。合計10000円前後。

●電池
HMDのコントローラは電池消耗が激しい。単三電池の消費量があがる。

●Wifiルータ変更
無線接続ではデータ転送量から5Gが推奨されている上に、よく障害点となる。大体の解決方法はWifiルータ新調である。10000円前後。

ざっくり+3万円くらいは覚悟しよう。とはいえどんなゲーム機買っても追加出費はあってしかりである。
また高級フルトラHMDはベーストラッカーの不具合で更新することが多い。機材不具合リスクは常に存在する。

始めるのにいくらかかるのか:アセット関連

アバターにかかる費用

VRChatの魅力のひとつ、アバター。VRChatは自撮りをするゲームであると言っても過言ではない。そのためには自らを着飾る必要がある。

●アバター代
もう1体5000円時代は終わった。1体1万円時代。
ただしアバターディーラーの増加に伴い市場が飽和。アバター平均価格は今後低下することを期待している。

●アバター衣装代
高騰傾向にある。一着1000円未満は安い、一着3000円~5000円もざら。
所持アバターが増えれば増えるほど、高額なフルセット衣装を購入したくなる。

●アセット代
UnityアセットストアやBoothのツール・アニメーションとする。
アバターダイエットや改変に使う。
アバターパフォーマンス向上のためのポリゴン削減ツールや、個性を輝かせるアニメーションなどを有料で購入する日が来るであろう。

●ギミック代
Boothの衣装以外の3Dアセット。Just?お砂糖?知らんよそんなの。なんか知らんけどいろいろギミック仕込むんでしょー。

とりあえずアバター1体はまず購入すると考えるべし。8000円。さらに衣装変更で2000円。

アバターってそんなに必要なの?

いろいろなアバターを使って着せ替えプラットフォームとする場合は、出費は青天井である。ただし単一アバターをアイデンティティとして固定し追加出費を抑える手もある。むしろ名を売り活動するクリエイターは、イメージ定着のためか、アバターは固定化傾向が強い。
また、アバター変更は個性と思われがちだが、「販売アバターをそのまま使うこと」すらも没個性とみられがちである。つまりアバター購入は必然的に衣装変更のトリガーとなる。

始めるのにいくらかかるのか:まとめ

現在の状況

現在Quest2本体は過去最安値であり、買い時であると断言してもいい。
中古HMDの購入で安く済ますという手もあるが、「他人が接顔した頭部機材の中古」という言葉で嫌悪感を示す人もいるであろう。
また機材は青天井のため、新規PCだとしてもミドルローはおすすめである。

ミドルローエントリーで試算

●HMD関係
Quest2本体:32,000円
関連費用:15,000円

●PC関係
ミドルローPC:130,000円
モニタ等必要機材:30,000円

●アセット関係
アバター関係:10,000円

各自の判断で、現在ある機材や節約の意思などでもっと費用を下げることはできるであろう。

今後いくらかかり続けるのか

VRChatはコンプレックス無限発生機

実際に遭遇するコンプレックスとフローを挙げる。
●人権を得る
Quest単騎の場合、PCVRが欲しくなる。デスクトップ勢の場合、HMDが欲しくなる。
●外見の個性を得る
外見による個性の主張を行うために、アバターや衣装を変更する。それを繰り返す。
●動きの個性を得る
HMDの三点トラッカーでできる動きに不満を持ち、全身トラッカー、いわゆるフルトラを導入する。トラッカー点数はそのままヒエラルキーである。
●住居環境
フルトラを活用するために、運動が可能な住居に引っ越す。

すべての解決方法が、追加投資である。コンプレックス解消の手っ取り早い手段が、資産投入である。
VRChatとは、無限に発生するコンプレックスをお金で解決するゲームである。投資価値を見出せなくなったところが終着点である。例外はない。

ハードウェアアップデートする必要性

HMD、とくにQuestは、HMDの中でも高級品ではない。普及帯価格・普及帯性能である。進化するVRコンテンツの再生にスペックが不足する日がくる。そこがミドルロー機器の限界である。ハードウェアのアップデートを迫られる。

アセット観点

近年、アバター向け衣装をはじめとしたアセットの高品質化・高価格化が顕著である。アバター着せ替えを四季ごと・シチュエーション別と行うと、それだけで数多の衣装が必要になる。さらにアバターが複数存在する場合、アバター別の衣装でなく同一衣装を多数アバターまとめ買いすることすらあり得る。

そんななかで、アセットを安価に手に入れる方法を考える。

●アセットセール
ブラックフライデーなどでセールを行うストアが増えている。割引率はまちまちだが、もしほしいものが安くなっていればとてもよい機会である。ショップオーナーに多大な感謝を。

●コンテスト・RTキャンペーンによるアセットプレゼント
アバター写真コンテストや商品RTキャンペーンなどで景品としてアセットが供与されることがある。運や実力でアセットをいただくこともあろう。その場合は提供者に多大な感謝を。

●フレンドからのプレゼント
VRChatアセット購入の主要サイトBoothは、近年の取引額が右肩上がりである。その要因の一つにBoothプレゼント市場の活発化があると考えている。

でも、貢がれ目当てで他人と交流するのはろくなことがないと思うよ。

●アセット共同購入・共有はダメ
だいたい規約で規定されているであろうが、単一アセットを複数人で共同出資し購入共有することはNGである。アバターも衣装も高額なので気持ちはわかるが、ダメなものはダメである。分不相応であったと心得るべし。

よいコンテンツにはよい推し活を

●イベントチケット代
企業イベントの場合、有料チケットの購入が必要となることがある。

●クリエイターエコノミーによる課金
VRChat自体が投げ銭機能を提供する予定である。これによりイベントエントリーフィー化する可能性は高いとみている。
現在VRで行われている、特に個人主催ベントは無償のものが多い。しかし収益化などにつながらなかったものはイベント自体が終了してしまう現状である。

●推し活しようね
有償無償にせよ、企業個人にせよ、継続開催を望むのであれば推し活は必要であると考える。その費用もある程度見込むことを願うものである。

今後いくらかかるのかのまとめ

乱暴に「なんかプレイ始めたあといろいろお金かかりそうだぞ?」ということを感じられればそれでよい。「メタバース」とは「マネタイズプラットフォーム」のことであり、それに参加するということはメタバース経済活動を行うという意味も含むのである。

その価値はあるのか

ゲームとしてとらえるか、デベロッパーキットとしてとらえるか、メディアプレイヤーとしてとらえるか、高額趣味としてとらえるかで、価値は変わる。たとえばデベロッパーキットであれば数百万円の機材代は普通である。ゲームであれば3万円も高額である。

VRChatはコンテンツとエコシステムが急速進化している

プロダクトライフサイクルは極短であり、コストパフォーマンスは非常に悪い傾向がある。ハイスペック以外はすぐに陳腐化しロースペックとなる。
「ミドルロー」などという言葉は、以前「ミドル」であった残滓表現である。

ゲーミングPCのオーバースペックさを活用する手段

あなたの高級なゲーミングPC、性能活用できてますか?
VRChatなら必要性能青天井だよ、性能活用するいい機会だよ?

ほかのメタバース・VRプラットフォームはどうか


Clusterなどはスマホ運用が主眼となっているため、スペック上限は低いと思われる。
またデータもVRMであり、自前のアバターセットアップシステムを導入している。無料で使うこともできるし、有料アイテムを装着させることもできる。自由度がVRChatほどでないことから、アセットに関わる費用はVRChatよりも低いのではないかと想像する。
どっちにしろ知らんけど。

まとめ

VRに限らず、どんな趣味を始めても、初期費用・一人前費用はだいたい30万円はかかるものと考えてよい。
VRChatを始めるにおいて「昔よりすごく安くなった」「流用できる機材があるなら今が最安値」ということは間違いない。

日本企業の売り上げが過去最高であることや、日本の株価が過去最高である原因は、円安による差益である。であれば国策としても当面円安が解消されることはないと予想する。つまり海外依存ハードウェアは今後高騰が解消することはないと考える。「いつでも今が最安値」である。

そして、始めた後も、意外とお金を使うという予感は持っておくべきである。

というまとめで締めるものとする。

一縷の望み

コレが例えば、PS5+PSVR2で「意外と満足にプレイできるぞ!?」という状況になったら、ハードウェアエントリー料金は格段に下がることになる。それに期待。


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