僕の冒険は母さんと共に ~ドラクエの日に思う事~

ードラゴンクエストシリーズのおすすめを教えてくださいー

そう聞かれると、少なくとも僕は悩みます。

やっぱりロトシリーズは必須科目だし、
3に関して言えば今でもプレイするくらい大好きだし…
ロトをやるなら最新作の11も必修科目だし…
かといって天空3部作は、名作中の名作揃いだし…
個性豊かな仲間と大所帯で異世界大冒険するなら4と6は外せないし…
RPGに留まらない人生の追体験をするのなら5は絶好の作品だし…
いいことも悪いことも全部含めて冒険の旅なら7は絶対外せないし…
やっぱり王道の少数精鋭パーティーで楽しく行くなら8だし…
友達とワイワイしながら遊ぶなら9と10はオススメだし…
と、困り果てた僕は、大体こう聞きます。


ーどんな冒険がしたいですか?ー

「僕はドラクエ7が一番好きです。」

こう切り出すと、多くの人は
「やー!ハードだったよね!ボリューミーで!」と返してくれます。

確かにハードでボリューミー。
最初の戦闘までに2時間くらいかかるってどういうこと!なんて
独り言を言いながらプレイしました。

3DS版が発売されても、仕様は変われど
「やっぱ長ぇなぁ!」と笑いながら、ウッドパルナへと急いだものです。

ドラゴンクエスト7は、
魔王によって封印された大陸を取り戻していく、長い長い旅。

世界地図の中心に、母なる島が一つだけ、という寂しい星は
いつの間にかたくさんの個性あふれる大陸で一杯になっていました。
街や村、王国の1つ1つに、喜怒哀楽様々な思いが存在していて、
時に笑い、時に涙して、時に、やり場のない怒りを覚えたり。
7だけではなくて、「ドラクエ」ってそんなゲームです。
※言ってしまえばFFシリーズもテイルズシリーズもその他のRPG全部そうなんですけど
今回はドラクエに絞ります。

ドラゴンクエストには、多分誰かの【人生】が詰まってます。

僕が好きなのは7ですが、決して7を一番オススメするわけではなく。
きっと人それぞれ、感情移入するキャラクターが違うように、
誰かの【人生】になるドラゴンクエストシリーズは、
きっとその誰かにしかわからないんだと思います。

僕も、生まれて初めてプレイしたのはドラクエ5でしたし、5だって大好きな作品です。

そんな中で、ドラクエ7が一番好きな理由は、本当に様々ありますが、
1番大きなものはといえば「家族を繋ぎとめてくれたから」という、個人的なものです。
個人的、ですが、僕にとっては、とっても大事な事です。

僕が小学生の頃。

僕の母は、俗に言う「教育ママ」でした。
塾や習い事に通わせてくれる、それでいて
妥協を許さず、順位が下がれば手が出るような
とても厳しい人でした。
TVゲームも時間を決められて、少しのこぼれも許さないような、そんな人でした。

そんな母の事が、正直僕は、怖かったです。とても。
大好きだったけど、それ以上に怖かったです。

ある日の夜中、目が覚めた僕は、
リビングから漏れる光を見ました。
こっそりと覗くと、そこには
ドラクエ7をプレイする母の姿がありました。
母は、僕に内緒で、こっそりと隠れるように
そして、楽しそうに、コントローラーを握りしめていました。

その時、思い出しました。
母が昔【勇者の父親】として旅をしていたことを。

僕が幼稚園児の頃。
まだ母が「教育ママ」で無くともよかった時期、
スーパーファミコンのドラゴンクエスト5は
僕と母の大好きなゲームの1つ。

僕がドラクエに出会えたのは、
僕の母がドラクエ好きだったからです。
恐ろしき教育ママは、実は、ゲーマーで、勇者だったんです。
※5は勇者じゃないぞ?っていうツッコミはひとまず置いといてもらえたら
とってもハッピーです。

当時幼稚園の僕は、あまりストーリーもわからず、
内容について覚えていることと言えば、レヌール城がめちゃくちゃ怖かった事と、
ビアンカがお墓に閉じ込められているのにびっくりした事。
ジャミとゴンスに泣きながら怒った事。
ママってゲマに似てるね、って言ったらさすがに怒られた事くらい。
でも「駿ちゃん、私もやっていい?」と声をかけられ、
自分の進めているデータで冒険を始める自分の母親の姿は
今でもよく覚えていて。
僕のデータより先に進んでいる、全然知らない場所で、知らない仲間と
楽しそうに冒険する「リカ」という主人公の姿が
子どもの僕には、少し不思議な存在に映っていました。

そしてそんな母の姿が、時間を超えて、目の前に広がっていたのです。
幼心に、母の秘密を察した僕は、特に会話をする事もなく寝床へと戻りましたが、
普段怒った顔ばかりの母の楽しそうな姿を思い出すと、なんだか、嬉しくなったのでした。


そんな母は、ドラクエ7発売から3年後の冬、病気で亡くなりました。
結局僕は、勇者リカと話をすることはなく、教育ママを、泣きながら見送りました。

一通りの供養が済んで、
母が現世にいない生活が始まったところで、
僕としては、毎日なんとなく笑いながら、
なんとなく泣きながら、なんとなくドラえもん観ながら
そんな、なんとなく、な毎日を送っていました。
まぁ、それも悪くないかな、と。なんとなく、思っていました。

そんな折、ふと、食器棚の上を見上げると、
天井と棚の間から、分厚く硬い、太めのCDケースのようなものがのぞいていました。
当時背が届かなかった僕は、近場の椅子を引っ張り、そのケースを確認します。
そのケースは、プレイステーションのソフトでした。
表紙に描かれているのは、
作品が違えば髪の毛が逆立ちそうな顔をした、3人の子供たちと、一匹のトカゲ。

一目散に椅子から降り、次に向かったのは押し入れです。
そこには、母が愛用していた新型のプレステが、こっそり隠されている事を知っていたからです。

プレステにコードを接続し、電源コードをコンセントに、
白と黄色の映像端子をテレビにつないで、ケースを開け、
DISK1と書かれたCDロムをセットして、スイッチをつけました。
夜に聞くと少し怖いプレステの機動音が鳴り響いて、
水色の波のような画面と共に、聞き覚えのあるトランペットの音が聞こえてきました。

これが僕と、ドラゴンクエストの再会でした。

データを見ると、そこにはちゃんと、
「リカ」という主人公のデータが残っていました。
母の生きた証は、物語の序盤も序盤で、しっかりと残っていました。
※エンゴウの火山をたいまつもって並んでる人たちを横目に進んでくとこでした。
炎の巨人倒す前ですね。

「母さんが果たせなかった夢を、僕が叶えるんだ。」という思いを1割持って。
「やったぜ!新しいゲームができる!」という思いを9割持って。
僕はそのデータをクリアする事を誓いました。
※エンゴウまでは、もう一つ「シュン」という名前でデータを作ってプレイして、
ストーリーはこんな感じかぁ、と理解してから進めました。

後は、通常通りのドラクエ7。
ゼボットとエリーに泣き、身勝手な親友キーファに怒り、過去ダーマで呪文を奪われて泣き、
とりあえずメンバー全員羊飼いにして無双し、
マーディラスの魔法大戦争に心躍らせ、プロビナでぼろ泣きし、
ルーメンに戦慄し、レブレサックで激怒し…
オルゴデミーラとの激闘を制し、
僕は勇者リカをエンディングへと導くのでした。
※職業はゴッドハンドだったとか言えない。

零れる涙は、
石板を取り忘れてクリア後のダンジョンへ行けなくなったからだけでは
きっとなかったと信じています。


後から祖母に聞かされた事ですが、
母は割と早い時期から死期を悟っていたらしく。
僕と一緒にいられる短い時間の中で、
なるべくたくさんのものを伝えようとしてくれたからこそ
厳しく接していたんだそうです。マンガかよ!
母は、僕に、嫌われる覚悟で厳しくしてたんです。
まったく、キーファと同じく勝手だぜ。
こっちの気持ちなんて全然考えないんだから。
本当は一緒にドラクエやりたかったぞ!!←

でも、僕がキーファの気持ちも理解できるように、
ある程度成長した今だからこそ、母の気持ちも理解できる気がします。
そして、たくさん、愛してもらっていたんだなぁ、とも感じています。

現実はゲームの世界と同じくらい過酷でした。
スライムやドラゴンは居なくても、
ギガンテスやキラーマシンと同じくらいの脅威はいくらでもありました。

でも、それを乗り越えるための心の支えは、間違いなく
「教育ママ」であり、「勇者リカ」でした。
ドラゴンクエストという冒険を通じて、母が得たものは
形を変えて僕に受け継がれました。
だから今、こうやって生きているんだと、感じています。

そんな、ドラクエ7をクリアしてから数か月後、
何とドラクエ5がPS2でリメイクされる事に。
弟と父を巻き込んで、家族全員で、僕らはまた、旅に出るのでした。

「強き心は時を越えて」
今はつぶれてしまった近所のゲーム専門店に貼ってあったポスターの
そんなキャッチコピーがやたらと響いたのを、とてもよく覚えています。


あれから10年以上経った今日はドラクエの日。

あの日、ドラクエが生まれてなかったら、多分今の僕は無いと思います。
そして多分、僕の家族の形も、全然違うものになっていたんじゃないのかな。

母さん。

母さんが好きだったドラクエは今もたくさんの人に愛されていて、
僕も、そんなドラクエが、今でも大好きで、
そんなドラクエが好きな自分でいられて、僕はすごく幸せです。

ドラクエを好きでいてくれて、勇者リカでいてくれて、本当にありがとう。

とか言って、案外ドラクエ10の天国サーバーで(あるのか!?)
はちゃめちゃに強い冒険者になってたりとかしたら
それはそれで面白いなと思います。
でも、天国にもドラクエあるよね、間違いなく。

これからも、たくさんの勇者の伝説が、
末永く、続いていくことを願って。

ドラゴンクエスト35周年、
心から、おめでとうございます!

#ドラゴンクエスト


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