大規模言語モデルは世界をどう変えるか

IT業界はブロックチェーン、メタバース、Web3などのバズワードが定期的にもてはやされる。
ただそれらはほぼ投資を刺激する以上の意味を持たず、世界を、生活を変える技術には未だなっていない。

一方でChatGPTのような大規模言語モデルは明らかに別格だと感じる。いわばインターネットの発明のように大きく世界を変える技術であり、これから数多のビジネスが大規模言語モデルを軸としたものとそれ以外に分類されるだろう。
つまり大きく世界が変わる技術に見える。

散々擦られるネタだとは思うが、今後の道筋を考えるにあたり個人として世界がどう変わっていくのか考えてみたいと思う。

変化が起こる業界と起こらない業界

まず当然のことで、技術があるからといって世界が変わるわけではない。「紙」「はんこ」「電話」「FAX」が未だビジネスの中心にあり、インターネットですら、未だに活用されてないのが現状だ。
そんな企業が突然AIを活用するかというとそうではないだろう。

とはいえ米国のタクシー業界が数年でUberに潰されたように、AIを使いこなす側が一気に使いこなさない側を食うような展開も考えられる。
今後AIを使いこなす側と使いこなさない側の差はどんどん広がっていくと考えられるため、割とその未来も近いのかもしれない。

求められるAIへの適合

AIを使いこなすには、組織自体がAIに適合していく必要がある。

まずAIに情報をどう与えるかがAIの生産性に大きく寄与するため、情報のまとめ方は重要になってくる。「情報が分散していない」「情報が検索可能である」「AIが読み取れる文章構造になっている」など、情報の持ち方から整理した方が良いだろう。

また作業手順が自然言語で記述されてることも大事だ。自然言語で記述さえされていれば、AIによってそのまま自動化できるからだ。特に今後LLMで動作するRPAツールのようなものができれば、PCの操作手順書でそのままAIに作業を代替させられるようになる。

使いこなす人と使わない人

個人レベルでもその差はあるだろう。基本的に若い世代ほど新しい技術を使いこなすため、使いこなす新卒に多くの人が食われることにことになると思われる。
今までは検索力の高さが仕事のパフォーマンスにつながるという話も多々あったが、AIが望む答えを返すような質問を書く力(いわゆるPrompt Engineering)が重要になってくるだろう。

特に次の投稿にもあるように、AIは低い能力を補う役割を果たす。
体感としても上位1割ぐらいの能力値はある印象を受ける。
つまり能力の高さで売ってる熟練者も、そのポジションにあぐらを書くことが許されない時代になってくるだろう。

特に藤井聡太のようにAIに常にサポートしてもらいながら育った人は個人としての能力が飛躍的に向上すると思われる。
たとえばAIと英会話をひたすら添削してもらった人の英語力は高くなるだろう。「AIに文章添削してもらう」「AIに人生相談する」「AIとプログラミングする」といったことを繰り返す人は自然のAIレベルに自身の能力値も均一化するだろう。
プログラミングの仕事は未経験でも、シニアエンジニア並みのコーディング能力を持った新卒が入ってくるのも時間の問題だ。

今後職場でどんな人が求められるか

誰もが上位1割ぐらいの能力を得られるということは、もはや職種の壁はなくなったようなものだ。誰もがプログラミングができるし、絵も描ける。
つまり「他人に任せる」という行為自体が無意味な行為になり得るのだ。

「その機能も誰でも数分でできますよ」って時代に、仕様書まとめて、MTG組んで、仕事を割り振って、マネジメントして…といった行為は無駄でしかない。
なんでもできる少人数の作業者で回せる組織が強くなってくると思われる。

つまり他人に任せるばかりで、自律的に仕事を推進していけない人の居場所はなくなってくるかもしれない。
誰でもあらゆる仕事がすぐできるようになるからこそ、モチベーションの格差によるパフォーマンスの差は大きくなってくる。

経験は貴重な財産

能力での差はなくなる一方で、経験はAIで代替できない貴重な財産となる。
AIは教科書的な答えを導くことはできるが、現実問題それが良い結果をもたらすとは限らない。
Webエンジニア業界でも特定の技術が教科書的にもてはやされ、流行った結果「いざ試してみるとうまくいかない」ということは常々ある。教科書からだけじゃ学べないそうした経験は貴重であり、その経験を解像度高く語れる人の需要が下がることはないだろう。

特に今後はAIの登場によりTrial&Errorのスピードもますます上がっていく。
そのなかで実際に行動を起こしてフィードバックを得る人と、何もしない、もしくは経験から学ばない人との経験格差は超えられない壁になってくると考えられる。

人としての魅力

そして当然のことながら「人」それ自体は代替されない。
能力が均一化され仕事に差が生まれづらくなるのであれば、純粋に人物としての魅力にフォーカスされる。

人としての魅力は経験からくるものも大きい。毎日寝て食べてを繰り返してるだけの人よりは、色々の国を旅行してさまざまなことを経験した人の話を聞いてみたいと思う人が多いだろう。

AIの力を借りながらあらゆることに挑戦し、さまざまな経験を得ることが、今後のAI時代に適合するための一番の近道なのかもしれない。

おわりに

大規模言語モデルは世界を変える技術であり、未来において数多くのビジネスがこれに置換されることは間違いないだろう。そして個人レベルでもAI時代に適合した人物になれるかどうかが大きな差になってくることは間違いない。

多面的な技術であり未来予測は難しいが、常に情報を追い続け些細な変化も見逃さないことがあらゆる事態に受け身を取るためにも大事になってくるものと思われる。

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