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マダハイール製作裏話

みなさん初めまして。

ゲームマーケット2021秋で初出展させて頂きました、アソビケーションゲームズのドラと申します。

普段から週3日程度のペースでボードゲームで遊んでいる、根っからのボードゲームマニアである私が今回のゲーム制作に至った経緯や、裏話を語れる内容で語らせて貰いたいと思います。

マダハイールに込めた想い

結論からいうと、「マダハイールを遊ぶことで、プレイヤー自身の成長を色々な人に感じ取ってほしい」という想いがありました。

まず私自身の話ですが、かれこれボードゲーム歴20年程になります。

そして結構な頻度で遊んでいるので、プレイ時間の長いゲーム(所謂重ゲー)を遊ぶ事で、思考をするのが好きと言う部分は多くのボードゲーマーの方と共通する部分かと思います。

気に入ったゲームは、可能なら買うと言ったことを繰り返してきたので、所有するボードゲームの数は1000個に迫る勢いで、メガシヴィライゼーションなどの超ド級ゲームも所有しております。

そんなボードゲームマニアな私ですが、最近では重ゲーよりも、プレイ時間が60分くらいまでのゲームの持つ、切れ味の鋭いシステムに舌を巻くことが増えてきました。

良くも悪くもボードゲームは人vs人の構図がメインで、協力ゲーとかソロゲーの人vsシステムなどの例外を除けば、『他人より上手い行動をとることを競うもの』という部分はどのゲームも共通しています。

昨今のボードゲームでよく取り入れられている、ゲーム終了時の得点計算で大きく点数が動くので、今誰が勝っているか分からないシステムというのも、「あなたの選択よりも、上手い行動があったよ!」という選択ミスをゲーム途中で感じにくくさせ、ストレスの軽減に貢献していると思います。

ただ、上記のシステムではゲーム終了時にのみ結果が評価されるという評価方法なので、ゲーム途中の行動1つ1つの『上手さ』を判断することが困難な作りとも言えます。

例えるなら、ゲーム終了時に得点計算型のゲームは

「学期末の通知簿で子供の成長を感じる親」

それに対して、ゲーム途中で評価状況が分かりやすいゲームは

「子供が悪さをして、その都度学校に呼び出される親」

といった感じでしょうか?悪さをする子供の親は、学校呼び出しで怒られるストレスを感じながらも、子供の行動をダイレクトに知ることが出来て、躾をしたり、諦めたりといった次の行動がとれるでしょう。

いま、子供を例に挙げたのは、子供と言えば成長の象徴で、ボードゲームの目的の一つにプレイヤー自身の成長があると考えているからです。

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マダハイールでは、冒頭に挙げた「プレイヤーの自身の成長を感じてもらう」ために、こうやって遊んでね!というシステムでの誘導を極力無くし、「カップに詰め込んだお宝が捨てられなくなると負け」というルールの大枠を用意し、どうやったら勝てるのかを試行錯誤して欲しいと考えました。

その為、結果がすぐに分かるラウンド制脱落型による結果の公示リアルタイム制でも制限時間を設けない、などトライ&エラーを繰り返してもらいやすいルールを採用しました。

また、もう一つの想いである「色々な人に」、という部分を満たすためには、見た目のキャッチーさや、ルールの分かりやすさなどに気を配った結果、梱包に使用したコットン袋+シルク印刷という、他のボードゲームに埋没しない見た目を追求したパッケージになりました。

こういった考えを経て、冒頭の「マダハイールを遊ぶことで、プレイヤー自身の成長を色々な人に感じ取ってほしい」という想いを満たせるマダハイールが誕生するに至りました。

思考よりも試行

今回のマダハイール制作で、特に感じた部分はココです。上記の想いではサラッと書きましたが、「シンプルなルールだから、思い付きでサラッと作ったネタゲーだろ!」と思われがちですが、そうではないんです。

以前Twitterでも紹介した、7 Wondersの作者Antoine Bauza氏が「テストプレイは50回はした方がいいよ!」と数年前のゲームマーケットのイベントに、ゲスト登壇されたときに仰っていたのですが、これが正に金言。

マダハイールの構想直後(第1回テストプレイ)では、全く違うゲームでした。大きく違っていたのが容器で、「西フランクの聖騎士」の収納作業中にパンパンの箱に収める作業がゲームっぽいなぁと感じたことが出発点だったこともあり、いわゆるチャック袋でした。

チャック袋でマダハイールを試していただけると分かるかと思います。ゲーム自体は出来るっちゃ出来るんですが、出来る限り多くを詰めよう!と無理をするとチャック袋のサイドが裂け、その袋が使用不可能になるのです。

最終系のプラカップも破損するやんと言われそうですが、1ゲームを終える事すらできないチャック袋では、ラウンド途中に容器破損で脱落という、ゲームに参加できない事態が発生してしまうので、いくら消耗品と捉えても難しい部分がありました。

詰める物も当初は、園芸用の石・ビー玉・おはじき・木片・フェルトボール・化粧用スポンジ・激落ちくん・S字フック・ランチャーム(魚型のしょうゆ入れ)など色々と試しました。

色々試して、テストプレイを重ねていく中で、かつて篠原遊戯重工様より頒布されていたXing(バッティング)が手元にあり、そのコンポーネントとしてアクリルのダイヤが使われていたので、それを起点にネット検索をかけたところアクリルアイスという商品に巡り合いました。

最近になってリゴレ様がリメイクされた版が発売されましたが、バッティングというシステムを極限まで煮詰めるとこういうゲームになるといったゲームで、マダハイールのシンプルさはこの作品にも影響を受けております。

少し脱線しましたが、そういった試行錯誤+テストプレイを重ねていく過程でゲームのシステムも変化を遂げていきました。

最初はコマに価値(値段)があり、詰めたコマの金額が一番多いプレイヤーの勝ちというスタイルだったのですが、プレイ時間(コマを詰める時間)に対して得点計算時間(コマ数と値段で掛け算する時間)の方が長く、モッサリとしたゲームだったのですが、あるテストプレイヤーの声で閃きます。

初テストプレイのある一人から「このゲームって玉入れをイメージしたんですか?」といわれ、違いますよーなどとその場で答えていたものの、後でその言葉を思い返し、玉入れの集計方法で捨てていけば一目瞭然だ!と思い、現在のシステムに至るヒントが得られたのです。

といった感じで、テストプレイを環境を変えながら、色々な場所で行いました。ボードゲームカフェで試した時はゲーマー目線。コワーキングスペースで試した時は未経験者目線。デイサービス絡みで遊んだ時は障害を抱えた人目線。そんな1か所に留まらないテスト環境が用意出来ました。

様々な人の目線、意見をすり合わせブラッシュアップを重ねていくと、マダハイールが様々な人に刺さる可能性があると実感を持てるようになりました。

何より、手を掛けた時間が長くなればなるほど、ゲームに対する愛着が沸くのも確かで、アートワークをhoteltokyo氏に任せたこと以外、動画の作成・試遊会の参加・予約フォーム作成・丁合など自分で出来ることは自分で頑張りたいと思えました。

大きな反響とこれから

ゲームマーケットが終わり10日ほど経過した時点で、本記事は書かせて頂いています。私が使用しているTwitterでのエゴサですが、エゴサを観測する限り、マダハイールの見た目を重視して買ってもらった方が大半かと思います。

実際の声を参照頂いた方が、お買い上げいただいた人の声が分かると思いますので、Togetterまとめリンクです。

マダハイールの見た目で買って頂けたことは、hoteltolyo氏のアートワークや袋・アクリルコマなどのパッケージにしたことで注目頂いた結果として、大変ありがたく感じております。

そして、そういった方が実際にプレイされてみて、「見た目だけで終わらない、戦略性のあるゲーム」と評して頂いていること自体が、マダハイールを通してやりたかった「プレイヤー自身の成長を色々な人に感じ取ってほしい」を実現できた証だと、安堵しています。

実際に販促活動の一部で、他ボードのゲーム制作者の方と遊ぶ機会があったのですが、その場で「2回目からが本番」と言って頂けたので、ルールライティングの面でも、大きな自信へと繋がりました。

この様に、大きな手応えのあった2021秋ゲームマーケットでの初お披露目の次は、地元(京都で活動中)である関西の2022大阪ゲームマーケットですが、現時点では大きな問題を含んでおります。

実は、製品に使用するコマが一括発注すると物理的に大変なことになると思い、製品100個分ずつくらいで発注しているのですが、そのうち指輪のアクリルコマが現時点で入手できる見込みが立っていません。

今月中に目処が立たなければ、2022大阪ゲームマーケットで、サンプル品の展示のみに終わる危険も含んでおり、内心ドキドキしながら代替品を探していますが、何事もなく発注元の在庫が復活することを切に祈っています。

旬な悩みもこの場で言ってしまったので、マダハイールの製作に関わる秘密事項なんてほぼ皆無ですので、他のボードゲーム製作者さんで聞いてみたいことがある方は、私のTwitterアカウントまでDM飛ばしてください!

ドラ@GM2021秋新作マダハイール増産中さん (@dora_dora_pi) / Twitter

マダハイールのリリースが終わった今、増産して遊んでみたい皆様の手元に届ける事はもちろんのこと、次の作品も試作していく必要があります。

現在進行中の新作イメージは、「手探り」です。手探りな状態にあります!という訳ではなく、手の感覚で遊ぶことを主軸に置いたゲームという意味合いですので、次の2022春ゲームマーケットで出せるように調整を進めていきたいと思います。

今後の作品も、何をするのか分かりやすい直感的な作りでありながらも、大人が遊んでも1回で全貌が掴み切れない様な奥深さを持たせることを意識した作りを行いたいと思っていますので、今後とも皆様よろしくお願い致します。

アソビケーションゲームズの目指す方向性は、日本におけるHABA社の様な立ち位置で、初めてのボードゲームとして色々な人に愛して貰えることを目指して邁進します!

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