クロロホルム #4

かつては麻酔として世に名を轟かせ、心毒性はあるけど利便性の方が勝るから使われ続けた50年近くを経て、新しい麻酔の登場と共に衰退して、現在では化学者かミステリーオタクの間でしか認知されていない(偏見)クロロホルム。今回はその物性に注目する。

現代社会での主なクロロホルムの利用方法は、有機溶媒(水に溶けにくいものを溶かす液体)であり、重クロロホルム(CDCl3)はNMR(磁気を使って化学物質の構造を探る方法の1つ)などの化学分析の際にも使われている。
融点は-64℃、沸点は62℃なので、常温では液体。比重は1.49と水より重い。水に溶けにくく、水と一緒に入れると2層に分離して下にくる(水より重いから)。また、不燃性の液体であることから、クロロホルム自体は燃えないが、沸点が低いことと高温になると分解することから、火災時には刺激性あるいは有毒なガスになる。さらに、強酸、強塩基(強アルカリ性みたいなこと)、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛などの特定の金属と激しく反応し、爆発を引き起こす可能性がある。

余談ではあるが、クロロホルムと同時期に麻酔として使われていたエーテル(正確にはジエチルエーテル)はそれ自体が可燃性かつ揮発性の液体であったため、結構な頻度で麻酔中の爆発は起こっていたらしい。これは憶測だが、クロロホルム麻酔の爆発はあまり聞いたことがないため、現役で麻酔として使われていた当時はエーテルより爆発しないこともクロロホルム麻酔採用の利点として挙げられていたこともあったのかもしれない。

参考:

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ikakikaigakuzassi/27/9/27_KJ00003450046/_pdf


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