クロロホルム #2

急速な麻酔発現作用が歓迎され、イギリスのビクトリア女王の無痛分娩での使用により広く知られたクロロホルムであったが、その毒性については麻酔として使用され始めた翌年には報告されていた。1848年の1月、イギリスの15歳の少女が死亡した例を皮切りに、約50年間、毎月のようにクロロホルム麻酔死の患者が続出して医学界では大問題になっていた。
その頃、日本でも明治時代に入っており、ドイツへの留学者が中心となってクロロホルム麻酔を普及させていった。当然クロロホルムの毒性で死亡する例は日本でも明治の初期(1880年頃)から注目されていたが、状態の悪い患者にはエーテル麻酔で代用すべきとされたのは1900年頃であった。

ところで、私自身がクロロホルムを初めて知ったのは名探偵コナンのアニメがきっかけである。ハンカチに染み込ませたクロロホルムを後ろから相手の鼻に押し付けることで眠らせる、というフィクションにおけるクロロホルム麻酔の王道のようなシーンが初見であった。
実際このような方法で相手を眠らせるのはちょっと無理があるようで、仮にこれを実行したとしてもハンカチを押し付けた相手に咳き込ませ、顔に薬焼けのアザを作るくらいが関の山であるらしい。(それでも十分恐ろしいが。)
にもかかわらず、クロロホルムによって相手を鎮圧する手段が現代の漫画で採用されていることを鑑みるに、麻酔として現役だったころの「クロロホルム=急速麻酔」のイメージは相当なインパクトだったのだろうな、と想像する。

参考


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