みじかいお話 #6
久しぶりの晴れ間だった。「晴れた日においで」と彼が言っていたから、こんな日を待っていた。
初めて会った時、彼は「森で暮らしているよ」と言った。それを聞いてから、僕はもうウズウズして仕方なかった。なぜって、僕は森に住みたいからだ。二度目に会った時は、どんな家なのか聞いてみた。すると彼は「今度、おいでよ」と言って、その日はそのまま帰っていった。
それからも、彼は「気が向いたから」「なんとなくね」と言って現れては端の方で微笑んでいて、ときどき言葉を置いていった。石を並べるみたいに。大抵黙っている彼が何か言うと、本当に、コトンと音がするようなのだ。
夏の終わりに彼が来たとき、
「今度は僕が行くよ。地図はあるの?」
と尋ねると、彼は少し困った顔をして
「地図に描くのは難しいんだ。説明するのも。まぁ来てみてよ。そしたら、きっとわかるよ。」
と森の入り口を教えてくれた。それから、こうも言った。
「心配しなくて大丈夫。でも、ゆっくり歩いておいで。走ると、なかなか着かないんだ。」
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