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ここがヘンだよコンカフェ人

「おかえりなさいませ!ご主人様!」

誰もが一度は耳にしたことがある定番の台詞です。

メイド喫茶、メイドカフェ。メイドバー。メイドと名の付くお店や、何かしらのメイド要素をコンセプトにしたコンカフェでは、必ずと言っていい程に使用されている挨拶ですよね。世にあるコンカフェの中でも一番多いコンセプトのベースは『メイド』です。“○○メイドがコンセプト”というタイプの店が圧倒的に多い割合を占めています。

Q. ではその理由はなんでしょう?

A. 一番分かりやすいからです

コンセプトカフェのコンセプトなんて何でもいいのにも関わらず、一体なぜメイドベースが選ばれるのか?そんな事を考えた事はありませんか?ない?ない了解!ないならもう話す事はありません。でも私は考えるんです。ずっと思っていました。なぜそこまでしてメイドにこだわる?もっと自由な発想でいいのに。今回はそんな疑問のお話です。


コンカフェに対して何の知識もない人にコンカフェについて説明をする際に、1から10まで説明をするのは大変ですよね?相手が非オタクなら尚の事です。ですが、コンカフェを知らない人でもメイドカフェの存在は知っていたりします。文化の表面的なイメージとして世間に浸透しているからです。『メイドカフェ』『コスプレイヤー』『地下アイドル』等は、深い内容までは知られていなくても、オタク文化に於ける分かりやすいアイコンとしては広く知られている名称です。

つまり、『コンカフェ』をビジネスとして始めるにあたって「客」「従業員」「広告メディア」に対して最も説明が少量で済み、また最も伝わりやすいシステム(コンセプト)がメイドベースという訳です。実際、他業種から参入する事業者(内部にオタク文化に明るい人材が居ないような)が選びがちなのもメイドベースが多かったりします。

メイドベースのコンカフェの共通点として、

店に来る→『ご帰宅』
店を出る→『お出かけ』
男性客→『ご主人様』
女性客→『お嬢様』
いらっしゃませ→『おかえりなさいませ』
またのお越しを→『いってらっしゃませ』
出勤→『お給仕』
ビラ配り→『お散歩』

等といった隠語が使用されます。何をコンセプトにしようが、ベースにメイドがある限りこれらの隠語が違和感なく通用します。これがいわゆる一般的なコンカフェのシステムに於けるマジョリティであり、共通イメージの“核”のようなものです。

非オタク層の新規客が来店したとしても、まだ理解が追いつくギリギリのラインとも言えます。「おかえりなさいませ?あぁ、テレビで見た事がある!」となり、まだ比較的多くの人に受け入れられる可能性があるのがこのラインまでです。

完全に独自路線のコンセプトを掲げたコンカフェは、その奇抜さや特異性から注目を得やすいのと引き換えに客を選びます。非オタク層にとって「どういうシステムや世界観か難しくてよく分からない」「そこまで凝った店だと入るのがちょっと恥ずかしい」という感情を抱かせてしまう可能性があります。

この辺りのさじ加減は、事業者の判断により様々です。コアなオタク層を中心にターゲットを絞るのか、或いは非オタク層の一般人を中心にターゲットを絞るのかで大きく変わる訳です。

一か八かの勝負に出るよりかは確実に利益をあげたい。そんな事業者が選ぶのは間違いなく後者です。オタク文化に明るい人材が居ないような事業者であればある程、より分かりやすいコンセプトである後者を選ぶでしょう。1から世界観やコンセプトを考えるよりは遥かに楽です。なぜならメイドカフェの基本は既に用意されている訳ですから。後は衣装と内装を考えれば大枠は完成です。求人の際も、コンカフェをよく知らない層のキャスト希望者にとって、最も分かりやすいのがメイドベースです。特殊なコンセプトの店より遥かに人が集まりやすいでしょう。

以上がメイドベースのコンカフェが多い理由です。


ここで更なる疑問です。

Q. なぜメイドと関係ないコンセプトなのにも関わらず、「おかえりなさいませ」とか「ご主人様」「ご帰宅」「お給仕」という言葉を使用するコンカフェがあるの?

A. 謎です。

私の推測ではただの「コンセプトの破綻」か、或いは「最初からそこまで深く考えられたコンセプトではない」です。恐らく雰囲気で働いている人達がなんとなく雰囲気で使っているというケースが殆どでしょう。それだけ「コンカフェ=メイドベース」という固定概念が浸透しているという事でしょうか。思考を停止させるのは楽ですよね。何も考えなくていいので。とはいえ不思議です。奥歯に何かが挟まったような気持ち悪さが残ります。


ついでに残り全部の疑問をまとめて。

Q. なんで皆「ログイン」とか「ログアウト」とか言うの?それにメイドじゃないのにお給仕をもじった「おきゅいん」とか「おきゅおわ」とか。意味は分かるけど気持ち悪いです。そもそも「お給仕にインする」って何?ログインから派生させた?誰が考えたの?あとシャンパンを「ポン」とか「しゅわしゅわ」とかキャストへのフードを「餌付け」とか、お金をわざわざ独自の疑似通貨に変えさせてから渡させる「10,000〇〇頂きました!」みたいなチップとか。隠語だらけで頭がおかしくなりそうです。

A. 生々しさを少しでも隠したいからです。

嫌な言葉を違う表現へと言い換える。これは日本語に多く見られる文化です。例えば英語のスラングのようなポップな言い換えとは違い、“隠す”という事に重きを置いた言い換えです。良くない表現も多いのでここで日本語の具体例を挙げる事はしませんが。

根底にあるのは“うしろめたさ”です。もちろんコンセプトに配慮した理由もあるのでしょうが、それだけでは理由にならない言い換えが多いのも事実です。メイドベースではないコンカフェキャストがよく使う「ログイン」や「おきゅいん」は先述の通り出勤するという意味です。紛れもなく仕事であり『出勤』で正解ではあるのですが、コンカフェのファンタジーさと似つかわしくないという理由で敬遠されがちです。これらは言葉の響きだけで愛用されている感が否めません。なのでメイドベースではなくても「お給仕」という言葉が使われているのです。これもまたひとつの『思考停止が生み出したコンカフェ文化の副産物』と言えます。

シャンパンも同じような理由で「ポン」や「しゅわしゅわ」と呼ばれています。シャンパンのままだと「高額の金」のイメージが全面的に出てしまうので、かわいげな響きの言葉であり、開栓音を連想させる「ポン」や、炭酸を連想させる「しゅわしゅわ」と言い換えられるのです。隠す事で本当に効果があるのかは甚だ疑問ですが。

「餌付け」は少し違った意味での言い換えです。客側から見て「何か施しを与えてあげた感」を増長させる効果を持たせる目的の言い換えです。なんかちょっと気持ち悪いです。逆にいやらしい印象を私は受けます。

チップに関しては、もちろんコンカフェである以上イメージ的にもリアルなチップを直接現金で渡すという訳にはいかない為、わざわざ店の独自通貨的なチケットを客に買わせた上で、それをキャストに与えさせるという回りくどいやり方となり、10,000円ではなく10,000〇〇と言い換えられるのです。あとこれには給料へのバック率を設定する事により「チップをキャストに総取りさせずに済む」という効果もあります。そもそもコンカフェにチップ文化なんか要るのか?という根本的な疑問を抱かずには居られませんが。

結論としては、

「オタクを相手にいかにも水商売らしい大きな利益の上げ方をしたいが、金や酒などの悪いイメージを出来るだけ濁したい。なのでありとあらゆるシステムやメニューを隠語を使って誤魔化そう。なんかかわいくて良い感じの言葉に言い換える事で。」

という思惑だと私は思います。


以上がコンカフェと隠語・言い換えに対する私の考察です。いかがでしたでしょうか?誰もが突っ込みにくい話題を積極的に書いていく。という精神で書き綴りました。他にも気になる事が沢山あったようにも思うのですが、思い出したらまた今度書きたいと思います。今回はそんなコンカフェ業界の表面的なお話でした。

それでは今回はこの辺で。

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