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七草にちかという少女について

はじめに

2ndLIVE、そして3rdLIVETour名古屋公演の熱も冷めやらぬまま新ユニットSHiisの一人である七草にちかがプロデュースアイドルとして実装されました。
彼女は283プロの事務員である七草はづきの妹です、当然そこが七草にちかをプロデュースするにあたっての物語の焦点の一つになるはずです。
天井社長とはづきさんはそれぞれクリスマスイベントのコミュで人物像の掘り下げがなされています。天井社長はもちろんのこと、はづきさんも283プロにおいて非常に重要な人物です。明るい部屋でははづきさんの過去を含めた内面を垣間見ることが出来ましたね。
そんなはづきさんの妹である七草にちかは一体どんな少女なのか。

以下WING編優勝までのネタバレを含みますのでご注意ください

七草にちかとプロデューサーの出会い<she>

出会いはとあるCDショップ。プロデューサーはフロアスタッフをしてるにちかに声を掛けられ倉庫のような場所に連れ込まれる。当然不審に思うプロデューサーにアイドル志望で歌とダンスを見てほしいと一方的に告げる。困惑するプロデューサーに対してヒートアップし、「大声を出す」と脅しまでかけてくる始末、第一印象悪すぎでは。そんなにちかに対してプロデューサーが抱いた感想は以下の二つ。

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しかも脅されてもきちんとしたオーディションを受けに来てくれ、という死ぬほど丁寧な対応を取る。流石ですね、ミスター・お人好し。
プロデューサーが連絡先と名前を聞くとにちかは【八雲ななみ】と名乗る。
胸に【七草】と書かれた名札があったため速攻でバレたが。
その時のプロデューサーの回想がこれだ。

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これまで、どの出会いでもプロデューサーはそのアイドルの何かしらに惹かれ、予感を感じている。しかし、にちかにはそれがないのだ。これは、少なくないシャニP達に動揺を与えたのではないだろうか。少なくとも私はこのことをかなり異質だと感じた。そして、にちかがどんなアイドルになるのか楽しみでもあった。

くすんで見えるにちか

だが、WING編のコミュを読み進めても、翳った気持ちが消えない。それどころか増していく。にちかの心に引き摺られるように。

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コミュの一幕でにちかがプロデューサーにパフォーマンスを披露したときの、プロデューサーのモノローグがこれだ。
にちかは、最初からプロデューサーに何かを見出されたわけではない。しかし成長する余地はあるのだという希望がここで一度砕かれるのだ。このプロデューサーをして、くすんで見えてしまうというにちかはシャニ世界において本当に平凡な少女でアイドルにはなれないのではないか、という不安を抱えてしまう。

にちかと偶像(アイドル)

にちかは、【八雲なみ】という20年ほど前に伝説となったアイドルを特別視し、憧れています。恐らく、この憧れが強く前に出ているため、彼女のパフォーマンスは八雲なみのコピーとなってしまい、くすんで見えてしまうのでしょう。
にちかはコミュ各所でアイドルへの憧れの強さを見せる一方で、どんなアイドルを目指したいかを明確にしません。やる気はある、けれども覚悟がない、といった印象を私は受けました。にちかも自分で言っていましたが遊びでやっているわけではないのでしょうが、気持ちが先行して本当に見るべきものが、見えていないんじゃないかというのをプロデューサーは感じ取っていたのかもしれません。にちかは、自分が自分のまま輝くことは不可能だと感じています。だから模倣に走ってしまう、偶像に縋ってしまう。

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にちかは、八雲なみのスカウトの逸話に憧れていました。自分にアイドルになる何らかの素質を見出して欲しかったのでしょう。しかし、現実は彼女の言う通り、人ごみに紛れる一人でしかありませんでした。なればこそ、彼女は八雲なみに縋る、アイドルになるために。

にちかが至る結末

WING準決勝前、にちかはプロデューサーに予言してくれと言います。
「可愛い、上手くいく、大丈夫」
プロデューサーが言った言葉を自分に言い聞かせるようににちかは繰り返します。
それを見送るプロデューサーはこう言いました。
「優勝させてください、もう苦しまなくて済むように。何度そう願ったかわからないよ」
「でも、違うよな。苦しまないためじゃない、笑うための戦いなんだ」

WINGでの敗退時、彼女はこう言います。
「やっと………やっと…………終わった………」
「なみちゃんは………楽しかったかな……」
「楽しかったかな………アイドル………」
それに対して、私もプロデューサーも返す言葉を持ち合わせていません。
本当に、返す言葉もなく敗退コミュが終了します。
少なくとも、にちかにとってアイドルは少なくない苦痛を伴う活動だったのでしょう。
WINGでは負けても勝っても最後に天井社長とはづきさんに会うシーンがありますが、ここも他のアイドルとは会話の内容が違います。
はづきさんはにちかにアイドルを続けてほしいのかそうでないのか、自分の中でもわかならなくなっています。それに対し天井社長は、プロデューサーに厳しい現実を突きつけるとともに、行動を促します。
「行ってこい。どうするべきか理解しているのなら」と。

一方にちかは、空元気を出して笑いを浮かべつつ
「もう自分が、なみちゃんでもアイドルでもないと、思わなくて済む」
とこぼしています。それだけ、にちかにとって八雲なみというアイドル、そしてアイドルという存在そのものが重圧として圧し掛かっていたのです。
恐らくにちかも、アイドルを続けたいのか辞めたいのか、はっきりとはわかっていないでしょう。しかしそれ以上に、アイドルというものの重みに耐えられなくなっていた。諦めるという選択をにちかにさせるにはそれで十分だったのでしょう。
プロデューサーの言葉も否定し、言葉を重ねるにちかのセリフでWING敗退コミュは幕を閉じます。
コミュタイトルは<who>。結局、彼女は誰だったのか。何物にもなれず、そのアイドル活動に終止符を打つことになりました。
後悔もなく、再起もなく、本当に彼女の物語はここで終わってしまいます。

WING準決勝勝利後、にちかはまだ続くのかとプロデューサーに問いかけます。それに対してプロデューサーは「続けられる、まだまだ」と返します。
敗退コミュを読んだ後なら明確にわかりますが、この時既ににちかは早く終わってしまってほしいと願ってもいたのでしょう。
「わかんなくて。嬉しいか、どうか」

そしてついにWING決勝です。
ここにきて、にちかは己の中の恐怖をプロデューサーに吐露します。
それに対してプロデューサーは、こう言います。
「もう笑わなくてもいい、これまで作ってきたものだけで魅了できる」
にちかは「笑えとか、笑うなとか」と苦笑を浮かべます。
そして、鏡を見てくると言ってコミュが終わり、WING決勝が始まります。
実はWING準決勝で笑顔を鏡を見て作っている、といったようなことを言っています。にちかは、笑顔を作る選択をしたのかそれとも……。

にちかの続く結末

WING優勝時、あまりの緊張からにちかは倒れてしまいます。
呼吸がままならない中、息も絶え絶えににちかはプロデューサーに問いかけます。にちかがどんな顔をしているかを。笑えているかを。
プロデューサーの答えはこうでした。
「どんな顔って…苦しそうだよ…!-けど、笑えてる…!」
そう、にちかは笑っていました。ただ苦しいだけではないのです。
苦しみの中でも、笑えているのです。この瞬間、にちかは本当の意味でアイドルになれたのではないでしょうか。

さて、優勝時もやはり他のアイドルとは天井社長とはづきさんとの会話は少し異なったものとなります。(はづきさんはセリフ枠も色が違うような…?)
にちかはいつものように八雲なみのシングル【そうだよ】を聴いています。
この八雲なみというアイドル、プロデュースをしていたのは当時の天井社長でした。天井社長の手腕で伝説とまでなった八雲なみですが、彼女もにちかと同じような悩みを抱えており、最終的に天井の元からも姿を消してしまいます。にちかは【そうだよ】に背中を押してもらっている、と語りもしますがその一方で悲しい曲だと思っていたとも。社長室でサンプル盤を見つけ、手書きのタイトルは【そうなの?】を見てにちかは悲しいからこそ好きになったのかも、と。プロデューサーがかつて感じたように、八雲なみとにちかは似ているのでしょう。それこそ、天井社長がかつての自分と彼女を、プロデューサーとにちかを重ねてしまうほどに。
ここからのにちかはきっと、にちか自身の靴で歩んでいけるでしょう。
そして、ここでプロデューサーはなぜ自分がにちかをプロデュースしたかったかに気が付きます。

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WING優勝でやっと、プロデューサーはにちかにしてあげたいことが定まりました。一方でにちかも、八雲なみへの依存はまだありますが少なくとも彼女が果たしてアイドルを楽しくやっていたのか、という疑問へ至っています。にちかがその答えを見つけ、彼女自身の靴を履いてステージに立つ日を楽しみにしています。

七草にちかという少女

さて、ここまでほぼネタバレオンリーで意見を書いておらず、一度全部消そうとも思いましたが勿体ないのでこのまま続けます。
結局、私にはWINGシナリオだけではにちかの個性というものがほとんど見えませんでした。八雲なみの模倣をする、そこに縋る平凡な少女。何者にもなれない悩みを抱えるアイドル。そんな月並みな印象しかありません。
プロデューサーにかすんで見えたのはにちかが自分ではなく他人の輝きを放とうとしたため。あさひも他人の動きを真似ることがありましたがあさひの場合は彼女自身に輝きが宿っているためそのこと自体は問題にならないんでしょう。にちかの場合は彼女がアイドルとしての自身を持っていないことにあります。アイドルとして活動するには自分以外にならなければならないがそれは模倣であってはならない、わかってはいるがそれしか自分には道がない。そんな強迫観念がにちかを苛んでいたんでしょう。何より、プロデュースを始めたきっかけが曖昧で、にちかがアイドルである必要性が無いというメタ的視点の恐怖があります。にちかが今、天井社長の過去の一幕をユーザーに提示するものとしての舞台装置に過ぎません、おそらくこれは意図して演出しているのだと思います。それほどまでに、あまりににちかのアイドルとしての個性がありません。にちかが思い描くアイドル像が八雲なみに擦り寄っている限り、にちかの悩みが消えることはなく、プロデューサーも天井社長もそれに苦しむことになるでしょう。これはにちかの自己評価の低さと八雲なみに対する崇拝が原因だと考えられます。その理由も今後明らかになっていくでしょうし、美琴との絡みでより浮き彫りになってくるでしょう。WING優勝まで、いえ優勝しても、にちかが八雲なみを振り切ることは出来ませんでした。プロデューサーもまた、彼女自身の靴を見つけることが出来ていません。ただ、苦しむだけのアイドル活動は確かに終わりを告げたのです。
正直、プロデュースしている間、私自身もこの重さから解放してくれと願わずにはいられませんでした。でも本当に解放されるのはまだまだ先なんでしょうね、辛い。
はづきさんは恐らく、にちかが自分の靴を履くアイドルを目指してないことを理解していて否定的だったんでしょう。それではただ苦しいだけだとわかっているから。
いつかにちかが幸せをつかんで本当の意味でアイドルになり、はづきさんも笑顔でいられるように心から願っています。

そして、にちかとプロデューサーが一つの壁を乗り越えたことで天井社長も過去の呪縛の一つから解き放たれたのではないでしょうか。
八雲なみというアイドル、およそ20年前に伝説となり消えています。そしてそのプロデュースをしたのは天井社長。ついにプレゼン・フォー・ユーでのアイドルが誰だったのかが判明したのです。これは大概の人がしている妄想でしょうが斑鳩ルカは八雲なみの娘、ではないでしょうか。年齢が20歳であること、283プロを敵視し「使われも捨てられもしねー」と言っていること。八雲なみが心の底から天井社長を憎んでいたとは私は考えていませんが何かが間違って伝わり娘であるルカが敵意を向けてしまうことは十分にあるでしょう。きっと美琴とも関わりがあるでしょうし今後の掘り下げが楽しみですね。七草父は天井社長の親友で弁護士だったこと以外は情報がなく八雲なみとどのように関わってくるのか気になるけど知りたくない気もします。

終わりに

長々と書いてしまいましたが中身がなくなってしまいました。
勢いで書くとダメですね。
ここまで読んでいただけた方、本当にありがとうございます。
次も何か感情が溢れたら書きます。

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