パレスチナ問題に無知なので、勉強し始めの2冊。

『ガザとは何か』岡真理

ガザ攻撃後すぐの緊急講演の書籍化であるため、報道の偏りを非難し、情報操作されていることに気付いてほしい、と強く訴える内容でした。「ハマスとイスラエルは対等であり、パレスチナ問題は、宗教と憎しみの連鎖によるものだからこじれている」と思ってきた方は必読。
何故このようになったのか、という背景については、一般的な、ホロコースト後の世界の落としどころ+金の力とアメリカ選挙への影響力、という言及にとどまっている感じです。下記の書籍も紹介されていました。

『イスラエルとは何か』ラブキン(中古は高騰しており、図書館で他市から取り寄せてもらった)
上著ではさらっと語られている歴史的な推移(そもそもは植民地主義など、ヨーロッパの大国間の政治的な思惑から生まれ、その後、ホロコースト後のユダヤ人自身の強烈な被害者・犠牲者という意識と、ホロコーストを止められなかった(そもそもユダヤ人差別が根底にあった)西洋の贖罪意識が、もともとの民族離散のありようと合わさった結果シオニズムが主流となっていく過程)がかなり細かく書かれています。

ただ、ユダヤ教徒である歴史学者さんという背景があり、いかにユダヤ教とシオニストが別物であるかを、かなりくどめに語っています。ユダヤ教の一部の活動家は長く反シオニズムの立場にいる(彼自身もそう)という記述なのですが、ユダヤ人のメインストリームの中では、かなり異端であり、日本でいうところの「非国民」扱いというか、過去には暗殺や強い弾圧、言論統制などもあり、意思表示には大変な勇気と覚悟がいる感じを受けました。

岡氏の発言では、アメリカにおいて反シオニズムのユダヤ人は「人口的には半々」とあるのですが、ちょっと根拠は不明で、むしろ、ラブキン氏の「その平和志向において、アメリカ、その他の国のユダヤ人の主流からさほど遠くない位置を占めていると考えられるのです」という回りくどい表現にこそ、その立場の難しさが言外に語られているように感じました。

実際の、「普通の」「平均的な」アメリカ在住ユダヤ人の感覚・現状はニュースやルポではあまり見えてこず、だからこそ、先日読んだフォアの『ヒアアイアム』に出てくるキャラクターの、ちょっと無自覚な感じは、かなりリアルな当事者目線の描き方なのかなあと想像しています。

イスラエルにいくらお金と権力があったとして、
どうして岡氏の言うような一方的な情報戦略が成立してきたのかを、今は知りたいです。

ウクライナにしても、原発にしても、情報が手に入りやすい時代になったと思ったらどれが本当のことなのかさっぱりわからないという事態になりました。
手に入りやすい情報、声の大きな人、多数派、わかりやすい結論、気持ちが高揚する表現、すべてをNGリストに入れて、
手に入りにくく、めったに聞くことができず、知れば知るほど心の持って行き場がなくなる、どうしていいかわからなくなるような、
そういうものが真実だとすると、そういったものを伝えられるのは、
最終的には文学しかないのではないか、という思いにもなります。

村上春樹氏の壁と卵の話が好きなのですが、
それも「そういうこと」を言っていたのではないかと改めて思い出しています。

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