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2020年9月の記事一覧

『外は夏』(キム・エラン)読了

携帯電話の中の訃報を思い出しながら、ふとスノードームの中の冬を思った。球形のガラスの中では白い雪が舞い散っているのに、その外は一面の夏であろう誰かの時差を想像した。p189 ひとつひとつの物語を読み進めるとき、名前もつけられぬまま浮遊していたさまざまな感情を、光を反射せず吸収していく酷くざらついた白い紙製のファイルにひとつずつしまうようだった。ふくざつに入り組む感情たちは早く名前をつけられて安堵したいのか、あるいは絡まりあったネックレスを解く作業を諦めてほしそうに、私の周り