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2020年8月の記事一覧

『アーモンド』(ソン・ウォンピョン)読了

人は誰もが”アーモンド”を2つ持っている。 アーモンドを語源とする扁桃体は、不安や恐怖といった情動を司る場所だ。つまり、感情と言われるようなものを感じる場所といったところだろうか。 そんな場所を、私たちは頭の中に持っている。 しかしユンジェはその扁桃体、アーモンドを持っていながらも「感じる」ことができなかった。 「僕は、周りの人がどうして笑うのか、泣くのかよくわからない。喜びも悲しみも、愛も恐怖も、僕にはほとんど感じられないのだ。感情という単語も、共感という単語も、僕には

『月と六ペンス』(サマセット・モーム)読了

ストリックランドは人間が意識して感じられる領域を超えた場所にある美を求め、そこに人の見返りや干渉などそのほか一切を求めなかったが、もしかしたら誰よりも自分の美に対する情熱を愛情深く思っていたのではないだろうか。 まるでそれがろうそくの火の如く、音もなく消えてしまうことを一番に恐れるように。 実在しない男の人生に心動かされたわたしは卑怯な気がする。熟れすぎたいちじくを、さもこの世の何よりも耐え難く美しいと感じることで自分を慰めるみたいだ。とても清々しくなれない。 読み終わっ