赤い風船

久しぶりにバスに乗った。
赤い風船を持った女の子が手を振っている。運転手に? 私に?
時間調整だろうか、バスは私一人 乗りこむ客もいないのに走り出さない。
女の子はまだ手を振っている。5歳ぐらいだろうか。

「お客さん 懐かしいだろ」
と運転手が振り返らずに
そういえば奇妙に懐かしい。

「あの子 小花っていうんだ」
「えー 私と同じだ」

バスは走りだした。
振り返ると赤い風船だけが停留所にくくられている。

「同じ名前のはずさ」
「何で」

「気付かなかったかい」

・・・・

「あの子あんただよ 5歳の時の」

「降ろしてください」

「もう遅いよ会えないよ」
 ・・
「次のバス停で運がよかったら10歳のあんたに会えるかもしれないがね」

バスは坂道をゆっくり下っていく。

読み切り。投げ銭スタイル。

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