北朝鮮印象

 1  北朝鮮ツアーに参加申し込みて
  彼の国は世界に弧なり危うきか少年の心我に残れり
 
2  名古屋空港 10/6
  無事祈り写経しますと言いし人秋二つにしてジェット飛び立つ

3  ロシア上空より北朝鮮に入る サンセンコカイ
  名に恥じず鮮やかな国ぞこの国は山川湖海凛々として

4  平壌サーカス劇場にて
  少女高く舞いし空中ブランコ見る子らの静けさ我が胸高鳴る

5  普通江公園にて
   アニョン                    オミナ
  「安寧」に「おはようございます」と吾応えり驚き婦柳に隠れし
   
6  元山より金剛山に向かう
  藁を積み娘を積みて子らを積み手綱も引かれず牛車歩めり

  4 子供達は、ボーイスカウトのような格好。みな静かだ。
  5 「安寧」は挨拶言葉、いつでも使える。そして
     年輩の人は、かって日本語を強いられていた。
  6 社会主義国の集団機械化農業を予想していたが。

7  金剛山にて
                   マガイ クロン
  疾く登れ天女に逢わんと人の言う登れば摩涯に九竜の滝

8 金剛山にて
  「弥勒仏」三字大刻封印や山のあなたは韓国の原

9  金剛山より元山に向かう 10/8
  東海の長き砂浜微かに赤し金網越えし足裏の血か

   7 金剛山は38度線東側にある。
   9 東海とは、日本海をさす。
     金網、現在も臨戦態勢の国である。海岸には防御のため
         金網が張られている。

10 ガイドに日本語を何故学んだのかを問えば
  「怨み忘れじ」「日本語棄てよ」「縁絶つ」
        父の怒りたまえど東方学びたし

11 ガイドの答えに
  敷島の倭の言の葉嘘多し彼の志に答えざらんや

12 車窓より
  山陰の草に埋もれし白き墓無名の死を尊きとするや

  10 「東方」 アジアをさす

13  大安重工業にて
  オウオウと両手拡げて迎えし人のその顔その肩歴史刻めり

14 地下鉄光復駅にて
  見上げるも見下ろしもせず祈るかに
        人は深きホームへシャンデリア輝く

15 普通江公園にて
  柳下に一人少女うつむきて手紙細かに破きし黄昏

16 普通江公園にて 
  蓮池の匂いたちしか白霧の足音密かにマラソン人行く
  
17 万寿台会場にて
  ピョンヤン
  平壌は色無き都と思いしが全ての色ぞここにまどろむ

18  高麗民族産業発展協会と懇談�にて     ヨシ
  どの国も変わらぬものかな役人の表情無きを善とするのは

17 万寿台会場・・日本の国会議事堂にあたる
18 高麗民族産業発展協会・・日本でいえば通産省の外郭団体かな、 
                国会図書館の中の会議室での懇談だった

19 主体思想の塔にて
  この都この露台より眺むるを想いていたやそはバベルの塔 

20 凱旋門にて
  ヨモ        ケッカイ         オミナ
  四方圧す偉業の門も結界ならん侵略の果てぞ婦近づく

21 万寿台記念碑にて           
  この国は光影の移ろいを許さじか御頬が陰と写真写さず

 19 主体思想・・マルクスレーニン主義の金日成風アレンジ
 21 万寿台記念碑・・金日成の巨大な立像と抗日戦線に馳せた人々の
    群像がある。ここで記念写真をとる予定だった。3時近くに
    なってしまって、金日成の像の右頬が影になってしまい、記念写真は
中止になった。

22 普通江ホテルにて 
               リョオガン   マミ
  この国と心の距離は測れねど柳眼の春会い見えん

23  機上にて
  東海と日本海とそを呼べどただ静かに雲影浮かべし

24 日本上空にて
  雲上に富士の頂き現れて吾に感傷残るを知る

25
  御国の名は朝の鮮やかな国という日の本というも御国の知恵か

26 
  市場無き町のたそがれ路面電車の窓に押しつけられる人

27 金丸氏逮捕を聞きて、
  「ここに金丸さん」「あちらに田辺さん」「お二人の通訳私の誇り」

 25 かっての中華思想では、この国辺りを鮮卑と蔑視した。
    小さく卑しいものということだろう。それを朝の鮮やかな
    国と切り返した。

 26 北朝鮮は商店らしいものがない。食料品、日常の必需品は、
    全て配給制である。

 27 ベテランの女性の通訳さんだった。金丸氏逮捕は、彼女まで
    伝わっているだろうか。

 1992年10月、川崎倫理法人会の主催する北朝鮮視察団
 に参加した。帰国直後の印象をまとめて置いたものである。

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