様々な無害なキチガイたち

なんやかんやで日本って国の懐の深さというやつに感慨深い感情を抱く失業保険給付者の無職こと、どなてろです。

水曜日のダウンタウンが面白すぎて毎週欠かさず観ているのですが、映しちゃヤベェおっさんや、近くにいたら臭い物に蓋をしたくなる存在を平気で弄っていくスタイルで毎度ヒヤヒヤしながら、まさに怖いもの見たさで楽しんでいます。人権と多様性の認識ってムズカシイネ。

ところで、私は以前イベントやらコンサートの設営スタッフバイトをちょこちょことやってまして。ステージの設営や撤去メインで使われるんですが、駐車場整理やチケットもぎり、会場監視もこなさなきゃならんという非常にマルチな接客業もやらされていました。
前職はB2Bもいいとこだったのでキチガイは社内のパワハラオヤジとか、無駄に接待を要求してくるおっさんくらいしか接する機会がなかったわけですが、当時そのバイトでは有り余るキチガイに触れざるを得ない環境でした。ですから、日本の懐深イイネ🇯🇵と思うわけです。また、常日頃から接客業に従事されている方々を私は大変リスペクトしております。

そして今回は私史上もっとも記憶に残っているキチガイの1人をご紹介します。

現場は地方都市の中ホール。1500〜2000くらいのキャパ。お母さんと一緒に出演なさっていた歌のお兄さんお姉さん(お姉さんはたしかはいだしょうこだったはず)のコンサートで昼の部公演のみでした。
その日の私の仕事はセット起こして、バミリなど諸々やって、もぎりと会場内誘導、そしてステージ上手側最前列の警備という役割。

まぁ、もぎりの時点で本日のキチガイの入りがある程度分かるわけです。演目からして、ファミリー、もしくはママ友同士、とりあえず子連れで来るのが客層のスタンダードなわけです。ところが、おっさんのソロ入場や足りない男とおっかさん入場などなど、それなりにヤバいのもポツポツ。もぎりでブチギレられることもなく、開場して物販列整理や席の誘導を行います。子供がワーキャーやっとるのは微笑ましいですね。

そして私は暗転前に所定の位置につき、上手の最前列でカメラで撮ってる客がいないかなどの警備…そして、ここで目の前の客に違和感。

私と同年代か、少し上くらいの男性です。中肉中背、やや細身、顔は特別にまで崩れていたり、特有の顔や挙動はありません。しかし、男性客、それもそれなりに、この場における自分という立場に対する恥を感じなくてはいけない年頃の男性客がソロです。そしてわりと大きめのトートバッグ…

そして影ナレからのブザー、会場を見渡す、私の頭の上で鳴りはじめる軽やかで明るい幼児向け音楽と元気な演者の声。

ヤバい客は楽しそうです。純粋に楽しんでいる。まぁ、はいだしょうこの追っかけなのかもな。そうじゃなけりゃあ、こんな年頃の若者が最前列の高い席取らねえだろ、うんうん。などと思っていた矢先。
コンサートも半ば、演者が階段からステージを降りてオーディエンスとコミュニーケーションを取りに行く曲のところでそれは起きました。

ヤバい客がおもむろにトートバッグから何かを取り出しました。風呂敷に包まれている板？なんだ？そして現れたのは、おばさんの遺影です。しかもしっかりとした青いフレームの額縁に入れられた遺影です。大変穏やかそうな顔です。実の母親の遺影なんでしょうか。先ほどまで笑顔だったヤバい客がボロボロに泣きながら公演を観ています。隣席の若い頭の良さそうなお父さんの顔が引き攣っています。ヤバい客を見せないように、奥さんと娘と息子の壁になるように、お父さんが頑張っています。ヤバい客が遺影をガンガンにステージ向けて見させています。そこに歌のお兄さん登場。流石に笑顔です。笑顔でヤバい客と握手を交わしています。ヤバい客は泣きながらブンブン握手をしています。お兄さんが上手いこと離脱していきました。ステージに戻った彼は笑顔です。プロ。THIS IS IT.

そんなこんなで、それ以降もヤバい客は遺影をガンガンにステージに向けて鑑賞。特に問題なく終演。アンコールも披露された後、私は客をハケさせつつ、公演後、演者の2人による物販と買った客にサインと握手の警備などに回りました。

そして現れた遺影のヤバい客。またしても遺影解禁してます。レスもらえるってレベルじゃない。明らかにみんなが奇異の目で見ています。そしてCDを買って握手。遺影に関して本当に支離滅裂な話を展開して、社員さんに剥がされて退場…後にも先にも私はアレほど凍った空気を感じた事がありません。

彼の真意は全くもって謎のままでしたが、会場において非常に目立つことは確かですし、何か妨害することでもなく他人を傷つけることも無い無害なキチガイでした。しかしながら、俺が出会ったもっとも奇妙な男には間違いがありません。

教訓:君も遺影をガンガンに掲げて推しメンから爆レスを貰おう！

追記:魔法のとびらって曲がポップで良い曲だった。