酒だ、酒よ、酒なのさ

酒の入った瓶が
そこにあったら飲み干さずにはいられない
なんでか分からないけれど
飲まなきゃいけないような
そんな気がして
飲んでも何も変わらないのは分かりきっているけど
酔っぱらっていることも、
酔っぱらっていないことも、
すこしばかり灯りが滲むか、ぼやけるか
高い酒も安い酒も強い酒も弱い酒も
どうしようもない妄想の氷を入れて薄めて飲んで
酔ったところでそれほど馬鹿にはなれなくて
酔わなくたってどうせ同じなのに
人生に巻き戻しがないと分かった時から
さっさと明日に早送りしたくて
酒を飲んでいる
そんなことを思って
酒を飲んでいるくせに
眠れば自分にはまた明日が来ると
漠然と信じている
妙なところで明るい自分を笑って
酒の微睡みくらいで
絶望に肩まで浸かるのはとても馬鹿らしいことだから
馬鹿らしいけど、馬鹿になりきれない
馬鹿なのは間違いないけど、馬鹿だとは思いたくない
しょうもない酒を良い酒にするか
良い酒をしょうもない酒にするか
そんな話もあるかもしれないけれど
酒はいつだって酒
冷たいか温いかでちょっとは違うかもしれないが
酒は酒
俺は俺
明日死にたくて飲んでいる酒か、
明日も生きたくて飲んでいる酒か、
酔っぱらっているからわからない
酔っぱらったからわからない
お皿も洗いたくない
歯も磨きたくない
寝て起きたらまた明日
寝てしまったら今日で最期
とりあえず水を一杯
明日も生きていたら酒を飲むよ
今日死んだなら、このまま死ぬならほろ酔いで最高
酒の味なんて忘れた
誰と飲んだかも忘れた
どこで飲んでいくら払ったかも
忘れた忘れた
飲んでも忘れない記憶は吐いてゲロした気分だけ
さようならさよなら
酔いが回ったから地球は回った

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