ヘルメットの温もり

帰ってきて一年が経った。正確に言えば7年ぶりの太平洋の冬を半屋外で過ごしている。
肉体労働のアルバイト。ツナギ、ワークマンの長袖ポロシャツ、厚手のアンダーシャツ、作業ブルゾン、安全靴、ネックウォーマー。

去年のあの頃とほとんど変わらない格好で、俺は故郷で非正規労働者をしている。運ぶものは違うけど。タバコ吸いながら作業もしないけど、何か物足りなかった。それはヘルメットだと気付いた。肉体労働につき、汗をかき、気合いを入れる意味合いで五分刈りより短いソフトモヒカンにした。ヘルメットのない冬空は、たとえ故郷の真っ青な空の下といえど、襟足や刈り上げた側頭部には木枯らしが吹いて。俺は風邪を引いた。情けなく鼻水を垂らした顔で、これまた未練がましくあの温もりを思い出していた。泣くのは早い、その思い出で酒を飲むのもまだ。地響きのように鳴る汽笛と、C重油の煤など。思い出せるうちに思い出しておこうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?