「内部留保課税」がおかしい本当の理由

内部留保課税が話題になっている。希望の党が公約に掲げる「消費税増税凍結」。その代替財源として挙げられたのが「内部留保課税」だ。これには多くの賛否両論があり、ネット記事でも活発に議論されている。

おそらく、内部留保として貯めこまずに給与を増やしたり、設備投資に回しなさい、といったメッセージを伝えたいのだろう。ネットでは「内部留保は現金ではない」といった反対派の意見もある。僕もその通りだと思う。しかし、それ以前に、なぜ内部留保は「内部留保」として存在しているのかを考える必要がある。つまり、なぜ給与に「回せないか」ということだ。

内部留保とは、簡単に言うと「最後に手元に残ったお金」だ。利益に対して経費や税金、配当も全て支払った後に残るものだ。自分が法人になったと想像してみると、給与から家賃や水道光熱費、食費等のあらゆる経費を引いて残ったものが内部留保。完全に自由に使えるお金だ。

手元に残るくらいなら、給料(=経費)を増やしても大丈夫そうだな。そう思うのはある意味正解。ここで重要なのは、内部留保を生み出した原因は「給与」であること。一般的に、給与というものは、よほどのことが無い限り下がることはない。つまり、内部留保は「恒常的に」発生するが確定している。だから内部留保を使うことができる。

一方、給与は横ばいだが、宝くじで100万円が当選したとする。自分は「増益」だ。ここで「増益だし、埼玉から六本木ヒルズに引っ越そうか」と家賃(=経費)を上げるだろうか。普通はならない。なぜなら、宝くじは「一過性」だからだ。今後何年も続くものではない。

ここ最近日経平均も持ち直し、国内経済は好景気であると報じられている。にもかかわらず、活発な投資や給与アップが行われないのは、この好景気が「一過性」であるというマインドが蔓延しているからだ。これは経営判断としては真っ当だ。この判断を間違えると従業員を路頭に迷わせることになる。

内部留保が「内部留保」たる原因はその企業にはない。日本経済のせいだ。にも関わらず、政治家はその責任を企業に負担させようとしている。筋違いだ。有権者へ一方的に笑顔を振りまく前に、まずは有権者の「顔」を見てほしい。

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