新井紀子「AIvs教科書が読めない子どもたち」
■MARCHに合格ーAIはライバル
【AIを実現するためには二つのアプローチしかない】
①人間を数理的に解明する
→これは絶対に無理。
②たまたま工学的に色んな方法を試したらできちゃった!
→飛行機みたいな例は過去にあるが、ほぼ不可能。
・AIとAI技術は違う
→AI=Artificial Intelligence
→AI技術は日常様々な場面で運用されている(ルンバなど)
【AIの歴史】
1960年代:第一次AIブーム=推論と探索のみ、条件が複雑になると機能しない
1980年代:第二次AIブーム=エキスパートAI(ある問題に特化したAI)
曖昧な表現や数値化できないもの(Ex.人間の感情)が難敵
現在:第3次AIブーム=機械学習の時代
※ディープラーニング
繰り返し学習することでパターンや経験則、重要度を見い出す
人間が枠組みを用意し十分なデータを用意し、AIがデータを調整する
※強化学習
目標と制約条件が明確になっていれば教師データを食わせなくても
ディープラーニングが可能になった。
※AI=人間の脳と同じように判断できるようになるは間違い!
人間の脳を模倣しているのではなく、「脳」を模倣しているだけ。
「脳」はサルでもトカゲでもついている。
【東ロボくんプロジェクト】
AIが東大入試に合格することを目指して立ち上がったPJ。
ただ、研究者でAIが東大に合格できるようになると考えている人は一人もいない。「AIには何ができて何ができないか」を世間に発信するのが目的。
・成績
2013年:5教科7科目900点満点中387点 偏差値45
2016年:5教科8科目950点満点中525点 偏差値57.1
→MARCHの中にも合格判定がでたところもあった!
【AI=人々の仕事を奪うは楽観視できない問題】
歴史上多くの新技術が登場し、それによってなくなった仕事がある。
その一方で新たな仕事が登場し、何とか乗り越え豊かな社会を築いてきた。
今回もこれまでの歴史が繰り返されるのか?
長期の好景気、過去最高の企業の内部留保にもかかわらず、賃金の中央値は下がり続けている。移民のせい?いや、日本はほとんど移民を受け入れていない。つまり、イノベーションによる労働者の分断が起きているのだ!
20年でホワイトカラーの50%が消えるインパクトはこれまで人類が経験したことない出来事になる。
■桜散るーシンギュラリティはSF
※シンギュラリティとは
→技術的特異点。自律的に自分自身よりも能力の高いAIを作り出せるようになること。
★東ロボくんの限界
「頭の回転が速い」=「1秒間の演算処理回数が多い」ではない!
<得意科目>
世界史⇒情報検索
数学⇒論理的な自然言語処理と数式処理
人間の認識している事象を論理や確率、統計によって表現してきた。
ただ、そこに意味を記述する方法がない。あるのは「真偽」のみ。
「私はあなたが好き」と「私はカレーライスが好き」の違いを表現する
のは非常にハードルが高い。
<苦手科目>
英語、国語
→英語については150億文を食わせても120点に届かない。
AIは意味を理解して問題を解いている訳ではない。
→入力に応じて計算し答えを出しているだけ。
結局ただの計算機でしかない。
★AIは結局検索と統計、推論しかできない
・Siriの例
Siri=音声認識技術×情報検索技術
「近くにあるおいしいイタリアンのお店を教えて」
「近くにあるまずいイタリアンのお店を教えて」
2つの質問をSiriに聞いても、似たようなお店がリストアップされる。
AIには「おいしい」「まずい」の意味が理解できないから!
「まずい」を検索する人は少ないから、それ以外の情報で判断している。
つまり、Siriは論理的に文章を理解するのを諦め、統計と確率を用いている。
・画像認識の陥穽
ハードが進化すると、1から教師データを作成するところからやり直さないといけない。
★シンギュラリティはロマン
コンピューターが数字を使って動いている限り、予見できる未来にシンギュラリティは来ない。
■教科書が読めない
AIに任せられる仕事は任せて、人間はAIにできない仕事をすればいい。
AIによって生産性が向上し、結果働く時間が短くなるなんて夢物語。
下記が10年後に行き残る仕事のリスト。
特徴はコミュニケーションが必要な仕事や柔軟な判断が必要な肉体労働であるということ。
★現代人はAIに判断できない読解力や常識、柔軟性や発想力を身に付けているのか?
・中高生の学習到達度→「読解力」の項目は世界トップ10入りしてる!
→日本は移民を積極的に受け入れていなかったり、みんな日本語を喋っていることから有利。額面通りに受け取ってはいけない。
★RSTをやってわかったこと
一言でいうと想像以上にやばい状況。
①基礎読解力と偏差値の高い相関性
L0.7~0.8の高い相関関係
L御三家と呼ばれる中学の生徒は12歳時点で18歳並みの読解力がある
→ただ、どうすれば読解力が身に付くかは分からない・・・
→一つだけ言えることは、就学補助率と読解力には負の相関がある
■最悪のシナリオ
★AIにできること=生産効率を上げること
→決して新しいサービスを生み出したり問題解決をしたりはできない。
《これから起こりうること》
①デジタル化→情報の非対称性の修正
②一物一価が達成される速度が早くなる
③消費者はより安いものを探すようになる
④リアル店舗はショールーム化し、経営が立ち行かなくなる
⑤企業は利潤が下がり、非正規雇用が増える
⑥格差が拡大→1世帯当たりの平均賃金の中央値が下がり続ける
★新井先生の考えるシナリオ
「企業は人手不足で悩んでいるのに、街には失業者があふれている」
LAIにできない仕事をできる人間がいない。
LAIによって生み出される産業で失業者を吸収しきれない…
・じゃあどうすればいいか?
→不合理を見つけて、行動を起こすようにしよう!
《読後の雑感》
AIについての理解が全然出来ていなかったと痛感。
AIにロマンを見るのは良くない。
HRの領域でもAIを導入する企業は増えている。
ソフトバンクなどでは、書類選考や面接の合否判定の補助にAIが用いられている。本書を通じて、AIオンリーで採用をする世界は不可能だと感じた。
アニメの「サイコパス」のような管理社会はこないだろう。
読解力と営業成績にどんな相関があるのか調査をし、サービス展開したら面白そうな気がする。