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【19/29】樫野さんを魅力的に感じられる要因は星の数ほど存在する。 煌めく星のようなちっちゃな魅力の集合が、樫野さんという稀有な生命体となるのだ。: 樫野さんの魅力分析レポート


【GISHIKI】

人が生きていく上で大切にしたい持ち物は「希望」である。
希望には、人の顔を上向きにしてくれる力がある。希望は明日への架け橋であり、絶望と戦うための大きな武器にもなる。
希望がある限り、明日へ、また明日へと今日を繋いで生きていけるし、今が少し辛くとも、前を向いて進んでいける。
自分が推しているアーティストの新作が発売される。
これは、「希望」を与えられることである。この先も毎日生きていくためのエネルギーの補給だ。世間にとってはただの音源だったり、映像だったりするかもしれない。しかし我々にとっては生命の源が詰まった聖水のような存在なのだ。
なので、毎日昼夜問わず生命のエキスを体内に注入するために、推しているアーティストの新作を堪能し聖水を身体の隅々まで染み込ませなければならない。

ここまで読んでこられた読者であればすでにご存知かもしれないが、ここでもう一度、パヒュームファンの約八割が実践していると言われる、パヒュームの新作を初めて体験するときの儀式を紹介しよう。これを機に、パヒューム初心者の君も是非、実践して欲しい。

まずは、準備以前の段階として、本日の様々な業務をすべて終わらせること。新作を聴きまくるのが本日の最終業務だ。晩酌が好きな人は、おつまみなどは予め用意しておいたほうが良い。もちろん、社用携帯の電源は切って、真っ二つに割って窓から放り投げよう。二度とそんなものは使いたくない。

まずは、部屋全体を清める。特に、新作を再生する機器周辺は、ホコリ一つないようにしたい。部屋の清めが終わったら、今後の儀式がスムーズに進むように、部屋の湿温度を最適な状態にしておくこと。

さて。

部屋を清めたら、今度は自分自身を清めよう。
ここは、もっとも初心者には厳しい局面だが、大切な部分だ。驚かないで、素直な気持ちで実践して欲しい。
まずは、全身の毛を剃り落とそう。
頭髪もだ。
これは、パヒュームファンの間では「向かい入れ」と呼ばれる作法だ。西脇さんが発する、「ココロの粒子」を、スピーカーを通して全身の毛穴から流入させる意味合いがある。このときに「ココロの粒子」の流入が少ないと、イザというときに禁断症状が現れて犯罪に走るケースが多い。出来れば、内臓器官もむき出しにして粒子を受け付けたいところだが、世間一般ではそれを「切腹」と呼ぶので注意が必要だ。

全身の毛を剃り落としたら、生まれたままの姿で浴槽に漬かり、しっかりと身を清めたい。バスルームの鏡を利用して、剃り残しのチェックも忘れずに。三十路過ぎの紳士諸君は、「耳毛」の処理にも気を払いたい。身体が赤くなるほどにゴシゴシとしごくこと。
すっかりと身を清めたら、体脂肪のチェックだけを済ませ、服を着てはいけない。これは、パヒュームファンの間では「向かい入れの向こう側」または「活き穴」と呼ばれる作法だ。西脇さんが発する、「ココロの粒子」を、一つも残さずに全身の毛穴から流入させるために、全身の毛穴は常に開放的、刺激的に保っていたい。

主に東海地方で多いという話を聞いたことがあるが、風呂場から自室に戻る際には「love the world」を口ずさみながら戻ると縁起が良いとされる。ここは細かいルールは存在しないので、思い思いのパヒュームソングを口ずさみながら自室に戻ろう。もちろん、全裸で常に全身と末端の神経を高潮させること。発汗によって失われた水分の補給も忘れずに。
自室に戻ったら、腕を肩の高さまで左右に水平に開き、片足立ちになってくるりと一回転する。これには何の意味もない。
あらかじめ用意してある、卸したてのシルクハット、蝶ネクタイを着用する。部屋の気を乱さないように、静かに、克つしなやかな動作を心がけること。着用が済んだら、静かに深呼吸を五回。床に正座し、右手から先にジャケットを両手に持ち、ジャケット写真を三分間凝視する。その後、ビニールをスマートな動作で外し、今度は「嗅覚」でジャケットを楽しもう。
クンカクンカ、一心不乱に嗅ぐ。
「嗅覚」でジャケットを堪能したならば、言うまでもなく今度は「味覚」でも楽しもう。好きなメンバーの写真をぺろぺろ舐めること。
ぺろんぺろん!
ぺろんぺろん!
これは、一見すると変態的な行為に見えるが、ジャケットの紙質を確認する方法として江戸時代中期から後期にかけて確立されたもので、「鮭舐め」(じゃけなめ)と呼ばれ、主にカブキ者のあいだで流行していたということは一切なく、正真正銘の変態行為だろう。医者に相談したほうが良い。

そして、いよいよ「お初」の儀式に移る。ここから先は慎重に行動したい。もう一度自分の姿を鏡でチェックし、自分の肉体に付属しているものは
1・シルクハット
2・蝶ネクタイ
だけだ、ということを確認する。この状態を「正装」と呼ぶ。もしも夜であれば、自室の部屋のカーテンを開放すれば、ガラスに映る自分の姿を手軽に確認できる。
さて、ここでやっと円盤をプレイヤーに挿入するのだが、ここで君は突然目の前に現れた大きな問題に直面するだろう。そう。「円盤がケースから取り外せない」はずだ。ここは落ち着いて行動したい。
無理に引っ張っても、けっこうぐにゃーんと円盤がゆがむだけで、決してケースからは外れない。床に円盤を置き、熱心に中央部分を押す。これで安全に取り外せるはずだ。そして静かに円盤をプレイヤーに挿入する。近年はPCにて再生する人が多いとは思うが、基本姿勢は、背筋をピンと伸ばした「正座」である。椅子に座って聞く場合も、椅子の上でキチンと正座をするように。住環境の違いがあるので、ここは自由だが、なるべくなら音圧を最大限に楽しめる機器、ヘッドフォンなどを用意しておくこと。PC再生であれば、最適なオーディオキャプチャ、PC用スピーカーで聴きたい。
さあ。
これで準備は万端だ。
気をしっかりと持ち、「ココロの粒子」をビンビンに受け入れられるよう、常に全身の毛穴以外のことは考えないように。末端の神経もビンビンと刺激的に保ち、赤黒く腫れるくらいの気持ちを持続したい。

【好きっス!について】

 樫野さんの魅力分析レポート第三十ニ回。
「好きッス!」について。

樫野さんファンの間では挨拶代わりに使われる愛情表現だ。KREVA氏の、樫野さんに対する爽やかな愛情が感じられる名フレーズである。KREVA氏の作品の中では一番評価が高いとの意見も聞こえる。

「樫野さん好きッス!」

実にシンプルで力強い言葉だ。
もしも、この時にKREVA氏が
「はあはあゆかにゃんゆかにゃん愛してるんよチュッチュしたいおはあはあ~」などと言っていれば、樫野さんから「キモチワリュイ!」と股間を蹴り上げられ、樫野さんファンも無反応だっただろう。KREVA氏は別の意味で不動の地位を手に入れていたかもしれないが。
樫野さんファンは、みんな樫野さんのことを愛している。だけど「愛している」と言えば、樫野さんにキモチワリュがられるのは必至だ。ピンヒールで踏まれたいくせに、樫野さんにキモチワリュがられるのは若干怖い人達が多い。故に、どんなに愛情がたかぶっていても、どんなに俺の嫁だったら良いかと思いながらも、爽やかに
「樫野さん好きッス!」
と、愛情を表現するのだ。
マグマのような熱いハートをひた隠しにしながらも、表面上は爽やかな紳士淑女を演じている。

一方的な表現のツンデレーションだが、見えない角度で必死になって手をつなぎたい。絶望的な運命が、ある日恋に変わらなくても…。
「樫野さん好きッス!」
樫野さんファンの間では、樫野さんに愛情を感じたのであれば二十四時間いつでも使用できる。

結論。
「髑髏チャン!コレガiPhone14ダヨ!今夜メールシュルカリャ、首ニ巻イテ眠ッテネ!」と荒縄を手渡され、それを首に巻いて眠りにつきたい。そしてサッと荒縄の端を持ってベランダから飛び降りる樫野さんの後ろ姿を見ながらココロの粒子になりたい。

【各話保管庫】

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