白い砂漠

◆忍殺TRPG◆【ウェルカム・トゥ・ヘル・アンド・ステアウェイ・トゥ・ヘブン】#0 ◆ソロ・リプレイ◆

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白、白、白……もうどれだけ歩き続けただろうか。この空間はどこまで行っても白しかない。白い砂と、白い空。それだけだ。生まれ育った故郷の砂漠よりも殺風景な世界があろうとは。スケイルシューターはぼんやりと思考しながら、ただひたすらに歩き続ける。それ以外にできることもないからだ。

ここでは砂に足を取られて体力を奪われることも無い。ここでは空腹に力尽きて動けなくなることも無い。ここでは耐え難い渇きにもがき苦しむことも無い。殺意に満ちた太陽がもたらす暑さも、侮蔑に満ちた月がもたらす寒さも無い。あの懐かしい死の世界とは全く違う。平穏で単調な白い砂漠。

だが、スケイルシューターは知っている。ここが、この白い砂漠こそが。

真の、死の世界なのだ

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マシンガンめいた勢いで放たれる膨大なソニックカラテ衝撃波が、彼の肉体を削り取っていく。必死で回避を試みるもカゼの弾幕は収まらぬ。「サヨナラ!」やがてイエローケーキは青白い光となり、爆発四散し、死んだ。

飛び込み前転と共に渾身の力を込めて放ったパンチは易々といなされ、逆に強烈なクロスカウンターを顔面に食らった。悶絶し、地面に倒れこむより速くカラテを叩き込まれる。「サヨナラ!」オールグリーンは爆発四散した。

背中から悪罵の言葉を浴びせかけられる。自分達の全てがこの男には通用しなかった。カラテも、スリケンも、何もかもが無意味と言わんばかりだった。「サヨナラ!」背骨を踏み砕かれ、ホワイトハートは爆発四散した。

仲間が死んでいく。なすすべなく殺されていく。投げ続けたスリケンは全て目に見えぬカゼに撃ち落されていく。「サヨナラ!」その光景を右目の赤いサイバネ・アイが冷徹に記録し続けた。レッドレンズが死ぬその瞬間まで。

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ZGGGG…「!?」突如として鳴り響き始めた轟音に驚き、スケイルシューターは足を止めた。この空間にそういった変化が訪れるとは思ってもみなかったからだ。「何が起きている…地響きか?これは…」ZGGGGGG…!

「これは…近付いてきているのか…!?マ、マズ」DOOOOOOOM!!「グワーッ!?」スケイルシューターが身構えようとしたその瞬間、彼女の目の前の地面が激しく爆発した!「グワーッ!」衝撃で後方にゴロゴロと転がり、ネックスプリングで起き上がったスケイルシューターは必死で状況を把握しようとした。

爆裂と共に開いた穴からは01の風が竜巻めいて吹き上がっている。「あれは一体…」彼女が遠巻きに観察している内に風の噴出は収まり、白い砂が穴を埋めていった。そして数秒後、更なる衝撃がスケイルシューターを襲った。

「「「「グワーッ!」」」」

叫び声。自分以外の。それも複数人!彼女の目の前に、四色の人間が落下してきたのだ!「なんだ…!?なんだお前達は!」スケイルシューターはカラテを構えて誰何した。純白の砂漠に突如現れた四人は異様にカラフルな服装で、白一色の光景に慣れきっていた彼女の目にはいささか鮮烈に過ぎた。

(この格好…ニンジャか?)呻き声を上げる四人を見て、スケイルシューターは思い至る。程なくして四人は意識を取り戻した。「ここは、どこです…」「オレ達は…死んだはずじゃ」「ウウーン…」「ワケがわからねぇ…」四色のニンジャ達は困惑しながら起き上がり、すぐに訝しげな視線を投げかける砂漠民族装束のニンジャに気がついた。五人はほぼ同時にオジギした。

「ドーモ、スケイルシューターです」「ドーモ、レッドレンズです」「イエローケーキです」「ホワイトハートです」「オールグリーンです」

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「なんだこりゃ…何が起きてやがるんだ…」アイサツを終え、理解が追いつかぬ様子のホワイトハートが呟いた。周囲は白一色の砂漠。目の前には見知らぬニンジャ。気の合う仲間達もいるのが心の救いではあるが、そもそも。

「私たちは、死んだはずです」レッドレンズが自分自身に確認するように口を開く。右目のサイバネ・アイに記録された映像がそれを裏付ける。いま自分と一緒にこの場にいる仲間達の、最期の瞬間が映し出されていた。

「そ、そうだよ!ボク達は、あの恐ろしいニンジャに…殺されて…アイエエエ!!」イエローケーキはひどく落ち着かぬ様子だった。全身をネギトロめいて破壊されたのだ。あの苦痛は今もニューロンにこびりついている。

「オイしっかりしろイエローケーキ=サン!チクショウ許せねえ…あのソニックブームとかいうニンジャ!」オールグリーンは泣き叫ぶ仲間を宥めながら、自分達を惨たらしく殺したニンジャへの怒りの声を叫んだ。

「…ソニックブーム=サンだと?」その名に反応したのはスケイルシューターである。「キサマら、ソニックブーム=サンに殺されたのか?」そう問い掛けられた四人は顔を見合わせ、頷いた。

「フッ…ハッハッハッハ!」スケイルシューターは合点がいったという様子で笑い始めた。「テメエ!何がおかしい!」ホワイトハートが食って掛かる。「フフッ…ということはキサマら。大方ソウカイヤへの恭順を拒んで殺された、愚かな野良ニンジャということだろう」「グ、グムーッ!」図星!

「その口ぶり。もしや貴女もソウカイヤとやらのニンジャなのですか?」レッドレンズの明晰な頭脳が鋭い推測を弾き出した。「その通りだ。ソニックブーム=サンは私の上司にあたる。直属の、というわけではないがな」

「で、でもアンタもボクらと同じで、死んだんだろ!」イエローケーキが叫ぶ。「きっとここは死後の世界で、ボクらもアンタも死んだからここにいるんだ!アンタはどんな死に方したんだよ!」「ハッ!なぜ言う必要がある」

「どうでもいいぜ!そんな事はよォ!」オールグリーンが腕を捲くりながらスケイルシューターに近付き、凄んだ。「ムカつくぜこのアマ!ストレス発散も兼ねて囲んで殴ってファックしてや」「イヤーッ!」「グワーッ!?」

不用意な言葉を言い切る前に、スケイルシューターの鉄の拳がオールグリーンの顔面を打ち据えていた!「失せろ!」BBLAM!さらに額に銃弾を二発!「アバーッ!サヨナラ!」オールグリーンは爆発四散した!

「下劣なサンシタが。会話相手にでもなるかと思ったが、やめだ!」スケイルシューターは吐き捨てるように言い放ち、他の三人にも銃とカラテと殺気を向けた。「よ、よくもオールグリーン=サンを!」「来い!サンシタの血でも景色の彩り程度にはなるだろう!」もはや一触即発!「ウオーッ!」

「待ちなさい!」ホワイトハートが今まさに殴りかからんとしたその時!レッドレンズが強く制止した。ホワイトハートも、イエローケーキも、スケイルシューターさえもが動きを止めて彼を見た。「これを…見なさい…!」

レッドレンズが震えながら指差した先には、オールグリーンがいた。今さっき爆発四散したはずの彼が、仰向けに倒れていたのだ。「ン…ンン?」しかも、生きている!額の穴も綺麗に塞がり、何事も無かったかのようである!

「な…!?」「信じられない…」「オイ、どういうことだよ!?」「生き返った…?いやボク達はもう死んでて…でも今こうして生きて…?」スケイルシューターも含め全員が状況を呑み込めず、激しく狼狽する!そして!

『011001ドーモ、皆さん。お待ちしておりました1010110』

「「「「「!?」」」」」全員である。全員がニューロン内に響き渡る超自然の声を聞いていた。男とも女とも、若者とも老人とも取れぬ不可思議な声。困惑の極みといった様子で周囲を見渡す五人に、さらに声が届く。

『スケイルシューター=サン。レッドレンズ=サン。ホワイトハート=サン。イエローケーキ=サン。オールグリーン=サン。あなたたち五人にはこれから、アノヨ・ダンジョンの攻略に挑んでいただきます』

アノヨ…」「ダンジョン?」わけのわからぬ単語。彼らが脳内の声に問い返そうとしたその瞬間。先ほどよりも更に凄まじい轟音が鳴り響き始めた!

ZGGOOOOM…!

「これは……!」轟音と共に砂中から現れたのは、不気味な白い巨大トリイ・ゲートであった。「トリイだ…」「一体なんだってんだよ…」

『トリイ・ゲートをくぐってください。その先が、アノヨ・ダンジョンです。さぁ皆さん、モタモタしている時間はありませんよ。なるたけお早く』

「じ、時間が無いってどういう…」「おいキサマら、見えるか…?」スケイルシューターが指差す方向をレッドレンズ達も見た。先ほどまで砂丘であった場所が消失している。砂が流れ落ちるような轟音は、鳴り止んでいない。

白い砂漠を円く飲み込むように、無限の奈落めいた黒い穴が迫りつつあった。その速度は恐ろしく速い。ほどなくして彼らが立つこの場所も穴となって消滅するだろう。そうなればどうなるか。想像するだに恐ろしい!

『さぁ、お早く』

謎の声はただ平坦な口調で促すのみである。「イヤーッ!」そして、オールグリーンがいち早くトリイへと駆け出した!「オールグリーン=サン!?」「どっちみちこのままボッとしてたら絶対ロクなことにならんぜ!胡散臭ェが行ってやろうじゃねえか!」彼は猪突猛進的行動力の持ち主だ!

「イヤーッ!」スケイルシューターもその後を追うように走り出す!「ダンジョンだと?面白い!ツキジだろうがアノヨだろうが行ってやろうじゃないか!どうせ私も…死んだ身だからなッ!」その目は爛々と輝いていた!

「この私が状況判断で後れを取るなど…イヤーッ!」そしてレッドレンズ!「ボ、ボクも行く!ダンジョンなんてちょっと興味あるし…イヤーッ!」イエローケーキが!「オイ!お、置いてかないでくれ!イヤーッ!」最後にホワイトハートがトリイに向かって全力疾走する!そして……

「「「「「イヤーッ!」」」」」

五人のニンジャが謎めいた巨大純白トリイ・ゲートをくぐり抜け、純白の砂漠から姿を消した。そして彼らが見落としていた物に、優れたニンジャ洞察力を持つ者ならば気付くことができたであろう。

それは純白トリイの額束に記されたショドー。その恐るべき内容を、トリイと共に遥か天頂に出現した黄金の立方体が、静かに照らし出していた。

『この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ』


0110110101010101100…

【ウェルカム・トゥ・ヘル・アンド・ステアウェイ・トゥ・ヘブン】#0 終わり。
【ウェルカム・トゥ・ヘル・アンド・ステアウェイ・トゥ・ヘブン】#1 に続く。


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