◆忍殺TRPG◆ 【ショドー・カリグラファー・ヴァーサス・アングリー・ライオン・アンド…】後編 ◆ソロアドベンチャー・リプレイ◆
◆毒々◆この記事は三笠屋=サンが投稿されたニンジャスレイヤーTRPGのファンメイド・ソロシナリオである『ニンジャのアルバイト』のリプレイ小説です◆羊毛◆
(これまでのあらすじ)ミカジメ・フィーの徴収で訪れたヘルライオン・ヤクザクランの事務所で、ソウカイ・ニンジャのハーフペーパーはワカガシラのカツミからメキシコライオン強奪依頼を受ける。新居に引っ越したばかりでカネが入り用だった彼女はこれを受諾し、メキシコライオンが保管されているツキジの廃倉庫へと潜入。ライオンを麻酔で眠らせることに成功した。
◆◆◆◆◆◆
「「センセイ、ドーモ!」」「ドーモ。お願いします」「「ハイヨロコンデー!」」ハーフペーパーが連絡を入れて数分後。回収用トレーラーに乗った二人のレッサーヤクザが倉庫前にやってきた。事務所でも顔を見たスキンヘッドのヤクザと、ケンゴと呼ばれていたモヒカンのヤクザである。
早速二人は荷台から動物用ストレッチャーを下ろし、ライオンの回収作業に取り掛かった。すでに一仕事を終えたハーフペーパーはリラックスしながらその様子を眺める。先程彼女と悶着を起こしてしまったモヒカンヤクザはひどく恐縮していたが。(あとで声をかけておくべきでしょうか……ん?)
突如としてハーフペーパーのニンジャ第六感が危険を察知する。「これは…!?」急いでニンジャ聴力を働かせると、何やらカサカサと動く音が聞こえてきた。それは倉庫の外から…否!「中にいる…!」音はだんだんと近付いてくる!彼女がレッサーヤクザ達に異変を知らせようとしたその瞬間!
「シューーーッ!」「アバーッ!?」「アイエエエ!?」突如として二本の巨大なハサミが振るわれ、瞬く間にスキンヘッドヤクザを切断殺!「なんてこと…!」カラテ警戒するハーフペーパーの目の前に姿を現したのは…ナムアミダブツ!怒り狂った巨大バイオズワイガニである!
「ア……アッ…!」一瞬にして惨たらしいゴア死体に変わった相棒と怪物めいた巨大カニを交互に見ながら、ケンゴは本日二度目の失禁を遂げた。「シューッ…」腰が抜けて立てない。血塗れのハサミを鳴らし、巨大バイオズワイガニはもう一匹の獲物を切り刻もうと迫る!その時!「イヤーッ!」
「グワーッ!?」「シューッ!?」ハーフペーパーが精妙に手加減をしたインタラプト・トビゲリでケンゴを蹴り飛ばした!「グワーッ!」ゴロゴロと転がりながら廃棄資材群に突っ込むケンゴ!「そのまま動かないで!」「ア…アッハイ…」ハーフペーパーは巨大カニと向き合いながら叫ぶ!
「シューーーッ…」バイオズワイガニは油断なき警戒の泡を噴出しながら飛び出した目でハーフペーパーを睨みつける。その強靭な甲殻にはところどころ銃弾がめり込んだ痕や、砕かれたような損傷があった。この場にいる者には知る由もなかったが、このズワイガニこそが以前スケイルシューターという名のソウカイニンジャがツキジダンジョン探索の際に交戦し、無数の銃弾やカラテを受けながらも生き延びて逃走した個体であった!
「シューーーッ!」バイオズワイガニはハーフペーパーのメンポに印されたクロスカタナ紋を発見し、著しく興奮したようにハサミを開閉させる!かつて自分を痛めつけた、憎き敵の同類であると認識したのだ!「本当に、この頃は海産物と縁がありますね…!」ハーフペーパーは再びカラテを構える!
【ワザマエ】判定:5d6>=5 = (2,5,6,6,1 :成功数:3) = 3 成功!
巨大バイオズワイガニの体力5→4
「イヤーッ!」ハーフペーパーは懐から取り出した文鎮をバイオズワイガニめがけて投擲する!「グワーッ!」ニンジャの力で投げられた重く硬い文鎮は、振り上げたハサミによるガードをすり抜け、ズワイガニの強靭な甲殻を貫いた!「シュッ!シューッ!」怒りに燃えるズワイガニは、ハーフペーパーに両手のハサミを交互に叩き付ける!恐るべき時間差攻撃だ!高い知性!
【回避】判定:3d6>=4+3d6>=4 = (3,2,4 :成功数:1) + (5,6,2 :成功数:2) = 3 成功!
「イヤッ!イヤーッ!」だがハーフペーパーは素早くバックステップを踏み、致命的巨大バイオズワイガニ交互ニ連続ハサミ攻撃の間合いから逃れる!さらに!「イヤーッ!」間髪入れずに文鎮投擲!飛来する鉄塊!
【ワザマエ】判定:5d6>=5 = (1,4,2,6,4 :成功数:1) = 1 成功!
巨大バイオズワイガニの体力4→3
「グワーッ!」ニンジャの力で投げられた重く硬い文鎮は、振り上げたハサミによるガードをすり抜け、ズワイガニの強靭な甲殻を貫いた!「シュッ!シューッ!」さらなる怒りに燃えるズワイガニは、ハーフペーパーに両手のハサミを交互に叩き付ける!恐るべき時間差攻撃だ!高い知性!
【回避】判定:3d6>=4+3d6>=4 = (1,1,5 :成功数:1) + (4,1,1 :成功数:1) = 2 成功!
「イヤッ!イヤーッ!」だがハーフペーパーは素早く連続側転を打ち、致命的巨大バイオズワイガニ交互ニ連続ハサミ攻撃の間合いから逃れる!さらに!「イヤーッ!」間髪入れずに文鎮投擲!飛来する鉄塊!
【ワザマエ】判定:5d6>=5 = (4,2,4,4,2 :成功数:0) = 0 失敗…
だが!「シューッ!」「クッ…!」巨大バイオズワイガニはハサミを振り回し、飛来した文鎮を叩き落す!なんたる甲殻類にあるまじき高い学習能力と対応力か!伊達に一度ニンジャと交戦し、生き延びてはいない!「シュッ!シュッ!」そのままハーフペーパーに両手のハサミを交互に叩き付ける!
【回避】判定:3d6>=4+3d6>=4 = (6,1,1 :成功数:1) + (3,4,5 :成功数:2) = 3 成功!
「イヤッ!イヤーッ!」ハーフペーパーは素早くバック転を打ち、致命的巨大バイオズワイガニ交互ニ連続ハサミ攻撃の間合いから逃れる!そして…懐から筆を取り出した!「これならば!イヤーッ!」目にも留まらぬ速度で振るわれる筆!その先から漆黒の刃が…インク・スリケンが飛来した!
【ワザマエ】判定:5d6>=5 = (1,5,1,5,2 :成功数:2) = 2 成功!
巨大バイオズワイガニの体力3→2
「グワーッ!?」ウォーターカッターめいて鋭いインク・スリケンは、無防備に飛び出したバイオズワイガニの右眼球に命中した!「シューーッ!!」視力を半分奪われたズワイガニは狂ったように両手のハサミを振り回し、周囲のコンテナやケージを薙ぎ倒しながらハーフペーパーへと襲い掛かる!
【回避】判定:3d6>=4+3d6>=4 = (1,1,6 :成功数:1) + (4,3,1 :成功数:1) = 2 成功!
「イヤーッ!」しかし、距離感の狂ったハサミ攻撃がニンジャに当たるはずも無し!ハーフペーパーはふわりと後方に跳んで間合いを取り、再び筆を振るう!恐るべき切れ味を誇るインク・スリケンがバイオズワイガニに迫る!
【ワザマエ】判定:5d6>=5 = (2,3,4,2,3 :成功数:0) = 0 失敗…
だが!「シューッ!」「…ウカツ!」巨大バイオズワイガニは眼球の前にハサミを掲げ、飛来したインク・スリケンを受け止めた!ハーフペーパーの狙いがもう片方の眼であることを本能で察知したのだ!なんたる甲殻類にあるまじき高い学習能力と対応力か!伊達に一度ニンジャと交戦し、生き延びてはいない!「シューーッ!」巨大バイオズワイガニは横歩きで高速接近し、ハーフペーパーを引き裂かんとハサミを繰り出す!アブナイ!
【回避】判定:3d6>=4+3d6>=4 = (2,1,1 :成功数:0) + (5,2,1 :成功数:1) = 1 一発目失敗! 二発目成功!
ハーフペーパーの体力4→3
「ンアーッ!?」ナムサン!致命的切断攻撃は避けられたものの、振り回される巨大ハサミの質量がハーフペーパーの身体を強かに打ち据え、吹き飛ばす!「アイエエエ!ハーフペーパー=サン!」物陰に隠れて様子を見守っていたケンゴが思わず声を上げる。常人であれば全身の骨が砕け散っているであろう衝撃だ。いくらニンジャといえど、あの細い身体では…
「静かになさいッ!」「アイエッ!」ハーフペーパーは脇腹を押さえながらも立ち上がり、ケンゴを叱咤すると、情け容赦ないカラテを構えた。「このカニは私が退治します。あなたと、あなたの仲間のご遺体と、メキシコライオンは必ず守ります。ヘルライオン・ヤクザクランに連れて帰ります!」
「ハ…ハーフペーパー=サン…」ケンゴはそれ以上何も言えなかった。巨大バイオズワイガニが再び横歩きで高速接近し、ハサミを振り上げる。ハーフペーパーにトドメを刺し、ケンゴと、ケンゴの仲間の死骸と、メキシコライオンを貪り食うために!ハーフペーパーは…「イヤーッ!」踏み込んだ!
【カラテ】判定:4d6>=5 = (3,1,5,6 :成功数:2) = 2 成功!
巨大バイオズワイガニの体力2→1
「グワーッ!?」ハーフペーパー渾身の迎撃ポムポム・パンチが、恐るべき速度と質量を伴って振り下ろされたハサミを弾き返し、甲殻を砕いた!これがニンジャのカラテである!「シューッ!シュシューッ!」思わぬ反撃に泡を食いながらも、巨大バイオズワイガニは再びハサミ連撃を繰り出した!
【回避】判定:3d6>=4+3d6>=4 = (5,4,5 :成功数:3) + (3,6,3 :成功数:1) = 4 成功!
「イヤーッ!」ハーフペーパーは胴体切断を狙った右ハサミ攻撃をその場で跳躍して回避!「イヤーッ!」さらに胸部切断を狙った時間差左ハサミ攻撃に対して蹴りを繰り出し、その衝撃をトライアングル・リープめいて利用して大きく跳び離れた!「シューッ!」カニとの間合い、タタミ十枚分!
(あの甲羅に守られている以上、私のカラテや文鎮投擲、インク・スリケンでは決定打を与えることは難しい…)着地し、体勢を立て直したハーフペーパーは素早く思考する!「シューッ!」カニとの間合い、タタミ八枚分!
(狙うならば甲羅に守られた体内!つまり…あの場所!)ハーフペーパーのニンジャ視力とニンジャ洞察力が、巨大バイオズワイガニの強靭な甲殻に穿たれた大穴を捉える!あの穴こそは、スケイルシューターという名のソウカイ・ニンジャがその鉄拳にて穿ったものであり、いまだ再生されていない致命的な弱点であった!「シューッ!」カニとの間合い、タタミ六枚分!
(あそこへの一撃。さらに何か…何かもう一つ加えられれば……)ハーフペーパーは周囲を見渡し…ドラム缶の中になみなみと湛えられた”それ”を見つけた。「工業廃油…!」然り。何処かの暗黒メガコーポが、ここが廃倉庫であるのをいいことに不法投棄していった物だろう。恐るべき猛毒である!「これを流し込めれば…」「シューッ!」カニとの間合い、タタミ四枚分!
(でもどうやって?)この廃油を塗布できるような武器はない。(いいえ、ただ一つだけある。今持っている)ハーフペーパーは躊躇した。(でも、それは許されざる蛮行)ハーフペーパーは懐に手を入れる。(けれど)指に触れたものを、名残惜しげに撫でる。(今なすべきことは)カナエ・スミコは懐から筆を取り出した。(彼らを守ること!)廃油に、筆を浸け込んだ。
「……ッ!」もはやこの筆は使い物にならぬ。彼女のショドー家としての誇りに文字通り泥を塗るような行い。だが、それでも!「キエーッ!」袖を捲くり、黒々とした毒油をたっぷりと染みこませた筆を握り締め、今やタタミ二枚分の距離にまで迫り来る巨大バイオズワイガニめがけて…駆け出した!
【カラテ】判定 「精神力成功」により自動成功。
「シューッ!?」弾丸めいた速度で迫り来る獲物に、バイオズワイガニは激しく狼狽し…「アバーッ!?」次の瞬間には、苦悶の叫びを上げていた。バイオズワイガニの懐に飛び込んだハーフペーパーは、甲羅に穿たれた穴にドス・ダガーめいて筆を突き立てていた。「ごめんね…」「アバーッ!」深く、より深く。柔らかな肉を抉るようにして筆を捻り込んでいく。
「アバババーーッ!」工業廃油の危険極まりないケミカル毒成分が、巨大バイオズワイガニの体内に浸透する。二人のニンジャと死闘を繰り広げた恐るべきバイオ生物は、口からゴボゴボと泡を吹き出しながら悶え苦しみ…
巨大バイオズワイガニの体力1→0 戦闘終了!
「アバッ……」仰向けに倒れ、やがて動かなくなった。「……」ハーフペーパーはそれを見届けると、倉庫の入り口へと歩き出した。「ハ…ハーフペーパー=サン…」「戻りましょう。ケンゴ=サン、メキシコライオンと、そちらの…」「ア……コモダです。アイツの名前…」「…コモダ=サンを連れて」「ハ…ハイ、ヨロコンデーッ…!」二人はそれ以上言葉を交わすことなく、眠るメキシコライオンと、寸断されたコモダの亡骸を荷台に詰め込み、トレーラーを運転してヘルライオン・ヤクザクランの事務所へと向かった。
◆◆◆
「ドーモ!」ヘルライオン・ヤクザクランの事務所に戻ったハーフペーパーを出迎えたのは、ドゲザするワカガシラのカツミであった。彼は道中でケンゴから事のあらましを聞き、顔面蒼白で二人の帰りを待っていたのだ。
「…そちらのコモダ=サンをお守りできませんでした」「アニキ…」「……」カツミは開け放たれたトレーラー荷台の中、眠るメキシコライオンと、変わり果てた姿の舎弟を見た。そして震える手を握り締め、ハーフペーパーに向き直ると、誠意と謝罪と感謝の120度オジギと共に、封筒を差し出した。
「ハーフペーパー=サン。本当にご面倒をおかけしやした。そして、ウチの若いモンがカニなんぞのエサにされないように守ってくださった事に…本当に、本当に…アリガトゴザイマシタ!ドーゾ受け取ってくださいッ!」「アリガトゴザイマシタッ!」ケンゴも涙を流しながらオジギをした。ハーフペーパーは何も言わずに封筒を受け取り、二人に対し深々とオジギを返した。
前金と合わせて【万札:10】獲得。所持万札6→16
「ハーフペーパー=サン…他に、他に何かお望みのものはありやせんか」カツミが尋ねる。「いま自由にできるカネはそれが全部ですが、自分にできることなら…」「…いえ、特に」何もない。そう答えようとした瞬間、ハーフペーパーのニューロンに閃きが走った。この機を逃してはならないと。
「…あの、あなた方は、ヤクザですよね」「えッ?ええ、ハイ」カツミは思わず顔を上げる。夕暮れの中に浮かぶハーフペーパーの顔は逆光でよく見えなかったが、どこか、カツミにとって親近感の湧く表情に見えた。大切な誰かのために、藁にもすがろうとする者の顔に見えた。「探してほしい人がいます。あなた方の情報網を使って」「…そのお名前は」「……スズリです」
【ショドー・カリグラファー・ヴァーサス・アングリー・ライオン・アンド・ハングリー・キャンサー】終わり。
◆◆◆
「Sy…SSyyyy……」ツキジ・ディストリクト。誰にも顧みられることのない廃倉庫の中で、生臭さとケミカル臭が混じり合ったような悪臭を撒き散らしながら、巨大な影が身じろぎし…やがて、闇の中へと消えていった。
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