◆忍殺TRPG◆ 【スティンジー・ニンジャ・イン・カジバ・スティール】 ◆ソロアドベンチャー・リプレイ◆

◆毒々◆この記事は三笠屋=サンが投稿されたニンジャスレイヤーTRPGのファンメイド・ソロシナリオである『ニンジャの火事場泥棒』のリプレイ小説です◆羊毛◆

◆スティールホイル (種別:ニンジャ)        PL:どくどくウール
カラテ       5    体力        5
ニューロン     6    精神力       6
ワザマエ      2    脚力        3
ジツ        3      万札        1
DKK       0    名声        0

◇装備や特記事項
◆ムテキ・アティチュード
◆オーガニック・スシ:【体力】を3回復(使い捨て)
◆『○言いくるめ』:シナリオ内でNPCの説得や脅迫を試みて判定に失敗した場合、そのダイスを1回だけ
          振り直せる。加えて、「モータルハンティング」時に【万札】を追加で1得る。

ムテキ・アティチュードとそれなりのカラテ、そして巧みな話術を得意とするニンジャ。
カネにがめつく、強化手術やオンセン旅行はおろか鍛錬のための出費すら嫌う極度のケチ。
金属めいた皮膚と眼の色はサイバネの類ではなく、憑依ソウルの影響による不可逆肉体変化だ。

今回のソロアドベンチャーに挑むのは初登場となるスティールホイル=サンです。やはりダイスを振って無から生成され、かそくする不景気を食いとめたりなどの社会貢献を行いました。

スティールホイル=サンはとにかくカネを稼ぐことが大好きで、そしてケチです。彼の目的は200万円を貯めてキョート様式の豪邸を購入すること!そのためにあらゆる出費を抑え、カネを貯め続けます。鍛錬すらしません!

画像1

(上のイメージアイコン画像はPicrewのストイックな男メーカーで作りました)
ニンジャネームはムテキで金属+言い”包め”からの連想でアルミホイル。そしてニンジャの名前でアルミホイルはどうかと思ったので、より強そうなスティールにしました。カネのためなら盗む方のスティールもするでしょう。

それでは早速プレイしていきましょう!

◆◆◆◆◆◆

「クソッたれ……完全に出遅れちまった……」怒号と悲鳴と銃声が響き渡り、そこかしこに死体が転がるアビ・インフェルノ・ジゴク。その中で、一人の男が途方に暮れていた。男の名はスティールホイル。黒い装束と黒いメンポを身に付け、その皮膚と眼は金属めいた色である。すなわち、ニンジャだ。

ここは重金属酸性雨が降り続くアヤセ・ジャンクションの工場地帯。ソウカイヤと提携しているニルヴァーナ・トーフ社のトーフ工場が、武装アナキスト集団による攻撃を受けた。しかもソウカイヤ首領ラオモト・カンの子息、ラオモト・チバが工場見学中という最悪のタイミングでの出来事である。

チバの身に何かがあっては一大事。この緊急事態に、ほとんどのソウカイ・ニンジャに現場への急行命令が下された。当然、サンシタであるスティールホイルも例外ではなかったのだが…「チバの坊ちゃんを救い出して、ラオモト=サンから特別ボーナス獲得チャンス!…だったのによォ…」

急行命令が下されたとき、スティールホイルは運悪く現場から遠く離れた場所で日課のモータルハンティングに勤しんでいた。慌てて駆け付けたものの、すでにシックスゲイツ級を含む多くのニンジャがチバ救出のために工場内を探索しており、完全に出遅れてしまったかたちだ。

「ツイてないぜ……うん?待てよ…」だが、意気消沈していたスティールホイルのニューロンに一筋の閃きが走った。「今この工場はアナキスト共が暴れまわってて、ケオスの極みだ…そこらじゅう死体だらけ…」ぶつぶつと呟きながら周囲を見渡す。労働者の死体にアナキストの死体。まるでツキジだ。

「つまり、だ…ここで何を奪おうが殺そうが、それはアナキストの仕業にできるんじゃないか…?」スティールホイルの怪物めいた瞳に、欲望の光が灯る。彼は極めてカネにがめつく、儲かるならばどんなことでもする邪悪なニンジャだ。例えそれが、火事場泥棒のような卑劣な行いであっても!

「こいつはいいぞ…!他のニンジャ共もチバの坊ちゃんを救出することに必死だ!今なら俺のジャマをする者は誰もいない!運が向いてきやがったぜ…!イヤーッ!」荒稼ぎのチャンスと見たスティールホイルは俄然勢いづき、鉄色の風となってエントランスを駆け抜け工場内へとエントリーした!

「うへぇーこりゃヒドイな」工場内に入ったスティールホイルの目の前には、溢れ出したトーフエキスが床を覆い、その上を逃げ惑う労働者とそれを襲うアナキストによる地獄絵図が広がっている。なんらかのケミカル物質が発火したらしく、あちこちから火の手も上がっていた。「これならマジで何をやったってバレることは…ア?なんだ?」「アイエエエ助けてーッ!

スティールホイルの視線の先、職員と思しきサラリマンが労働者を突き飛ばしながらこちらへ走ってきた。「どけ!どけマケグミ共ーッ!私は高い学歴があり社会的貢献性が高くここで死ぬには惜しい人間なんだーッ!」「ふーん。高い学歴があって社会的貢献性が高いのか。だったらさ」「アイエッ!?」走り来たサラリマンの顔面を掴んで動きを止める。何たる握力!

【カラテ】判定:5d6 = (1+3+2+3+5) = 14 サツバツは無し

当然、持ってるカネの額も高いってことだよな?イヤーッ!」「アバーッ!」頭部握力粉砕!サラリマン即死!「どれどれ財布の中身はっと…なんだよ、万札1枚だけじゃないか。アンタ、自分で言うほど高い価値がある人間じゃなかったみたいだな」首無しサラリマンからの返事は当然、無い。

【万札:1】【DKK:1】獲得 所持万札:1→2 所持DKK:0→1

「まぁ社会には貢献してくれたさ。俺という社会にな。アバヨ」万札をしっかりと自分の懐に収めながら、スティールホイルは更なる金目のモノを探して歩き始める。周囲に転がっている死体も抜け目なくチェックしていくが、アナキストか自分以外のニンジャが奪っていったのか、大したものもない。

まったく許せんな。俺のためにカネを置いておくべきだぜ…オッ?」身勝手かつ理不尽な独り言を呟きながら工場内を探索していたスティールホイルは、壁に張られた工場の見取り図を発見した。「ホホーウ!工場長の部屋か!」工場長ということはここの責任者であり、部屋の中には金庫に収められた万札やトロ粉末、カケジクやカタナなどのトレジャーがあるはずだ!

「ワクワクしてきたぜ!イヤーッ!」スティールホイルは見取り図をニンジャ記憶力で暗記し、工場長の部屋に向かって全力疾走する!「イヤーッ!」死体とトーフが流れるベルトコンベアーを跳び越え「イヤーッ!」死体とトーフが散乱する通路を駆け抜け「イヤーッ!」死体が今まさに生産されている部屋へと飛び込んだ!「「「アババババーッ!」」」「なんだ!?」

響き渡る悲鳴!銃声!駆動音!電子音声!『ドーモ、モーターヤブです。直ちに休憩してください』「オイオイ!こんなところにヤブかよ!」然り。部屋の中央に陣取ってガトリングガンを乱射し、労働者を虐殺しているのはオムラ・インダストリ製のロボニンジャ、モーターヤブであった。アナキストにハッキングを受けて暴走しているのだ!「クソ、ジャマくせえなぁ…」

普段であれば迂回するところだが、運の悪いことにあの暴走ヤブが塞いでいるのは工場長の部屋に通じる唯一のルート!避けては通れない!『休憩、休憩、休憩だ!』BRATATATA!「「「アババババーッ!」」」「さてどうすっか」眼前で展開されるゴア光景を気にせず、スティールホイルは思考する。

(連続側転で一気に潜り抜けてもいいが、失敗したらアブナイだ。なんか遮蔽物でもあれば…)そこに駆け込んでくる人影。避難してきた労働者だ!「こ…ここまでくれば……アイエエエ!ニンジャナンデ!?」「あるじゃねえか遮蔽物」スティールホイルはNRSを起こしてへたりこんだ哀れな労働者の襟元を掴み、「イヤーッ!」「アイエエエ!?」ヤブに向けて放り投げた。

選択肢1:労働者をオトリにしてその隙に突破(自動成功)
【DKK:3】獲得 所持DKK:1→4

休憩ーッ!』「アババババババーッ!」「助かったぜ!」ガトリングガンの掃射を受けて空中でネギトロと化した労働者を横目に、スティールホイルは駆け抜ける!目指すは工場長の部屋のみだ!「カネの匂いが近いな!」

工場長の部屋を目指して、スティールホイルはどんどんトーフ工場の奥へ奥へと進んでいく。プラントには「四角い存在」「凝固したアモルファス」などの製品名がショドーされている。ニルヴァーナ・トーフ社の主力製品だ。

「もうすぐ工場長の部屋に着くな…オッ?」細い廊下を全力疾走しているスティールホイルは、前を走るソウカイニンジャの姿を認めた。(目的は俺と同じか…?いや違うな、ありゃチバ坊ちゃん目的だ。気にする必要は…)ガゴンプシュー!《ヌゥーッ!?》(オットット、ウカツだねぇあいつ)

何らかのトラップに引っかかったのか、前のニンジャは突如下りてきた隔壁に閉じ込められてしまった。《クソッ!トラップか!?カラテでこじ開け…ゲホッ!息が…》中からは喚き声と共に壁をガンガンと殴りつけるような音が聞こえてくるが、呼吸もままならないのか破壊するには至らないようだ。

(うーん…どうすっかな。別にほっといてもいいんだけどな)スティールホイルは閉じられた隔壁の前で思案する。工場長の部屋は別方向であるため、このまま立ち去っても全く問題はない。そして、閉じ込められたニンジャはそのうち力尽きて窒息死するだろう。「よし」スティールホイルは……。

選択肢3:【ニューロン】で制御端末をハッキングして救出
【ハッキング】判定:6d6>=4 = (2,1,5,4,6,2 :成功数:3) = 3 成功!

「制御端末は…これだな」なんと、スティールホイルは廊下に置かれたフクスケに偽装された制御端末をハッキングし…ガゴンプシュー!ゲホッ!ゴボッ!ハァーッ…!ハァーッ…!」隔壁の中からユバまみれのソウカイニンジャを救い出したのだ!無論、仲間意識や良心から来る行動などでは決して無い。(これで俺はお前の命の恩人だ。タップリと恩を返してもらうぜ…

他者を蹴倒してのし上がるソウカイヤにあって、スティールホイルのブッダにも等しい慈悲深さは多くのソンケイを集める(欺瞞!)【名声:1】獲得

内心でほくそ笑みながら、スティールホイルは這い蹲るソウカイニンジャに手を差し出し、アイサツした。「ドーモ、スティールホイルです。アブナイところだったな」「ハァッ…ハァッ…ドーモ…スケイルシューターです。すまない、おかげで助かった」スケイルシューターと名乗ったニンジャはその手を取り、立ち上がる。目元以外を覆う砂漠民族めいた装束の女ニンジャだ。

「アンタもチバ=サンの救出に?」「ああ…出遅れてしまったがな」スケイルシューターはユバ・エキスを吸ったターバンを剥ぎ取って呼吸を整える。その褐色の肌と黒髪にも粘ついた白い液体は付着しており、彼女は不快そうに顔を顰めた。「俺もさ。そもそもチバ=サンがどこにいるのかもわからなくてね、方々探し回ってたところだ」欺瞞である。彼の目的は工場長室だ。

「私も似たようなところだ。とにかくお前のおかげで命拾いした。この礼はトコロザワ・ピラーに戻ってからさせてもらうよ、スティールホイル=サン」「なに、いいってことよ。それじゃお互いチバ=サン救出に向けて頑張ろうぜ」「ああ、オタッシャデー!」「オタッシャデー」走り去っていくスケイルシューターを見送ってから、スティールホイルは邪悪に目を細めた。

「マヌケなやつだぜ。今からチバ坊ちゃんの救出に走ったって間に合うわけがない。俺みたいにカネを稼ぎに行くのが賢いやり方ってもんさ」ナムサン…なんたる退廃的思考!彼の価値観において全てに優先されるのはカネなのだ!「さぁ工場長の部屋はもうすぐ目の前だ!大金をゲットしてやる!」

スティールホイルはひたすら走り続け、ついに工場長の部屋の前に辿り着いた。だが、ドアの前には先客がいた。(アナキストか…?)どうやら、施錠されているドアを開けようとピッキングを試みているようだ。(他のアナキストが命がけでアナーキー行為をしてるのに自分だけコソ泥のようなマネをしようとは…まったく見下げ果てた奴だな!)どの口が言うのであろうか?

(とにかく、カネを頂くのはこの俺だからな…)スティールホイルはニンジャ野伏力を発揮してピッキングに夢中なアナキストの背後に忍び寄り…。

【カラテ】判定:5d6>=4 = (3,1,1,2,3 :成功数:0) = 0 失敗…?

「ドーモ」「アイエッ!?」ぽん、と肩を叩いた。「ニンジャナンデ!?」「ありがとうな。俺のためにドアを開けてくれたんだよな」「エッ…違…」「だってそうだろ?他のアナキストのみんなは必死に戦ってるってのに、一人だけコソコソとカネを盗んでトンズラしようなんてわけないもんな?」「ウ……!」当然、図星である。スティールホイルもそれを理解している。

当のスティールホイル自身が、チバ救出のために必死な他のソウカイニンジャを尻目に卑劣な火事場泥棒に勤しんでいるのだから。(同じ穴のラクーンが考えることはよくわかるのさ。ただ、コイツと俺に違いがあるとするならば…)「ウ、ウウ…」ピッキングアナキストは手をわななかせた。罪悪感が彼を責め苛んでいるのだ。(そんなモノのために揺らぐ意思の弱さだな)

スティールホイルは極めて邪悪なニンジャであり、こうして言葉で弱者を弄ぶことがカネを稼ぐことの次に好きだった。「ウオーッ!ウ、ウルサイ!オレは…オレはーッ!!」逆上したアナキストはトゲトゲしたピッキングツールを手にスティールホイルに襲いかかり…「イヤーッ!」「アバーッ!?

【回避】判定:6d6>=3 = (6,6,5,4,3,1 :成功数:5) = 5 成功!

反撃のカラテで首をへし折られ、死んだ。「オツカレサマ」スティールホイルはドアにもたれかかったままのピッキングアナキストの死体をぞっとするほど冷たい金属めいた目で見下ろし、邪魔臭そうに蹴り飛ばしてからピッキング済みのドアノブに手をかけ…ついに工場長の部屋にエントリーした。

「ドーモ、オジャマシマス」「だ、誰だ!カギは掛け…て…ア、アイエエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」高級そうなスーツを着た中年サラリマンは、突如として部屋に入ってきた男を見てNRSを発症。そのまま失禁した。その胸には〈工場長〉の名札。間違いなく彼が工場長だろう。

机の上には唐草模様のバイオフロシキが広げられており、その上には万札やトロ粉末が乗っていた。アナキストの襲撃を防げなかった責任を取らされるのを恐れて、金庫や机から金目のモノをかき集めて逃げようとしていたのだろう。「やぁ、アンタが工場長=サンですね?ゴクロウサマデス」

スティールホイルはにこやかに微笑みながら後ろ手にドアをロックし、ツカツカと工場長に歩み寄った。「流石は工場を預かる責任ある身ですね。この緊急事態にあっても自身の仕事や立場を放り捨てて逃げたりせず、残り続けていたとは!」「ア…いや…私は……」「ンン?そのフロシキは一体?」

工場長が狼狽するさまを楽しみながら、スティールホイルは注意深くフロシキの中身を確認した。(よしよし、安く見積もっても10万はある……ん?IRCに着信?)端末を取り出し、メッセージ内容を確認したスティールホイルの顔から笑みが消える。『チバ=サンを発見。保護完了につきミッション終了。救出命令を受けていたニンジャは帰還せよ』「…アイ、アイっと」

もう楽しんでいる時間は無い。他のニンジャ達に怪しまれる前に目的を果たして帰還せねば。「スミマセン工場長=サン、急用ができてしまったのでこれでお暇させていただきます」「ア、アッハイ」「では、オミヤゲを頂いていきますね」スティールホイルは机の上のフロシキを掴む。「アイエッ!?それは!」「実に趣味のいいフロシキだ。中身も私好みです」非道!

泣き叫ぶ工場長を尻目に、スティールホイルは部屋の中を見渡す。(もう一つくらいは金目のモノが欲しいな…)彼の視線の先にあったものは……。

◇重点!◇
本来ならここで1D6を振り、以下のリスト参照でアイテムを獲得します。
1か2:カタナ
3か4:偉大なるショドー
5か6:見事なカケジク

ですが、スティールホイルはどれを手に入れても躊躇せず売却し、万札5に変えてしまうでしょう。彼にとってカネは全てに優先されるからです
なので少し改変させていただき、出目1~5なら万札5相当の、
出目6であったならば万札10相当のトレジャーということにします。
◇重点!◇

【トレジャー】判定:1d6 = (1) = 1 万札:5獲得!
所持万札:2→17 さらに「トロ粉末」を獲得!

カワイイなマネキネコの置物だ!しかもカワイイなだけではなく…「コイツの眼はエメラルドだな!」ブルズアイ。その瞳には美しいヨロシ・グリーンに輝くエメラルドが使用されていたのだ。これは相当に高く売れるだろう!

スティールホイルは意気揚々と工場長の部屋を後にした。残されたのは金目のモノを全て奪われ、翌日にはアナキスト襲撃の責任を取らされセプクの運命が待つであろう哀れな中年サラリマンだけであった。「アイエエエ…

戦利品の入ったバイオフロシキ包みを背負い、スティールホイルはウキウキ気分であった。「へへへ…カネの重みが心地良いぜ。チバ坊ちゃんを助けたのが誰かは知らないが、そいつが受け取るだろうボーナスよりきっと俺のほうが稼いでるに違いない!」彼は済んだ事をクヨクヨ考えない性質である。

(うまいスシ、上等なサケ、ホットなオイラン…まだ我慢だ。目標額にはほど遠いんだからな…ひとまず貸し金庫にこのカネを……ッ!?)死体だらけの狭く長い通路を歩いていたスティールホイルは、突如として強大なニンジャ存在感を感じ、そして足を止めた。否、止められたのである!一体何事か!

ウウウ…」おお、ナムアミダブツ!床に転がっていた死体の一つがスティールホイルの足首を掴んでいるのだ!しかも…「グワーッ!?」彼の金属めいた肌がブスブスと煙を上げ、溶かされはじめている!「なんだこれは!」

スティールホイルは狼狽し、必死で己の足を掴む死体の腕を振り払った。「ア…アア…!」やがてその死体は立ち上がった。若く、小柄な女の死体であった。見る見るうちに“彼女”の身体からライムグリーン色の液体が溢れ出し、周囲の床をドロドロに溶かし始めた。すなわち、極めて強力な酸だ!

不可思議な光を漂わせる超自然の酸は装束となって“彼女”の全身を頭部から爪先までくまなく覆い、凄まじいほどのカラテを発し始めた。これはニンジャソウル憑依…それも強大無比なアーチ級のソウルである!『ア……ウ…』酸のニンジャは呻きながら身じろぎし、やがてスティールホイルを視認した。

『…ドーモ』それはぽたぽたと雫を垂らしながらオジギし、名乗った。『アシッドレイン……デス…!』アイサツを終えると同時に、ノッペラーボめいた顔面の、右目があるであろう位置にぬばたまめいて黒い単眼が現れた。

「ド…ドーモ、アシッドレイン=サン。スティールホイルです」スティールホイルもダラダラと汗を垂らしながらオジギし、名乗った。彼に宿ったソウルも実際高位のものであるが、勝てないと直感で悟った。強大なアーチ級ソウルに憑依された直後のニンジャは、その半神に等しい力を制御できずに暴走状態に陥る場合がある。目の前のアシッドレインはまさにそれであった。

『……』「……」人ならざる眼を持つ二人のニンジャはしばし睨み合い…同時に動いた!『イヤーッ!』アシッドレインが床を溶かしながら滑るようにせまる!「イヤーッ!」スティールホイルは即座にバック転を打ち、カネの詰まったバイオフロシキを絶対に落とさぬよう必死に抱えて走り出す!

#SOUKAI_NET:STEALFOIL:帰還中に敵性ニンジャ存在発見。アーチ級可能性あり。救援求む///

「ハァーッ!ハァーッ!」携帯IRC端末を取り出し、ソウカイネットに緊急報告を行う。返信が遅い。スティールホイルの背後に恐るべき怪物が迫る。『イヤーッ!』「アイエッ!」ニンジャ第六感に従って咄嗟に身を屈めた彼の頭上を、高速で飛来したボール状の物体が掠めていった。

BOOOOOM!「うおッ!?」その正体はアシッドレインが投擲した超自然の濃硫酸砲弾である!着弾と同時に周囲に大量の酸を撒き散らす危険なジツ!スティールホイルは必死で飛沫を回避しつつ、IRC端末に目をやる!

#SOUKAI_NET:SONICBOOM:了解。座標を把握。すぐに向かう。持ち堪えろ///

(よ、よかった!救援がくる!それもシックスゲイツ!このチバ坊ちゃん救出作戦に彼らが駆り出されていて助かった!)……そう考えたのも束の間である。救援のニンジャが今すぐ瞬間移動してくるわけでもなし。この場を自身の力で切り抜けねば、どのみち死あるのみだ。「腹を括るしかねぇ…!」

スティールホイルは後方に向き直り、カラテを構えた。すでにアシッドレインは彼のワンインチ距離にまで迫っていたのだ。『イヤッ!イヤーッ!』情け容赦ないアシッドカラテパンチニ連発がスティールホイルを襲う!

【回避】判定:3d6>=4+3d6>=4 = (5,3,2 :成功数:1) + (4,3,5 :成功数:2) = 3 両方成功!

「イヤッ!イヤーッ!」スティールホイルは必死で身をそらし、回避!濃硫酸を滴らせた拳は例えほんのわずか掠っただけでも危険だ!『イヤーッ!』アシッドレインは右腕を振り回し、酸の飛沫を浴びせかける!「イヤーッ!」バックステップで距離を取るスティールホイル!『イヤーッ!』

アシッドレインの右チョップ突き!だが間合いが…「グワーッ!」ブ、ブッダ!これは如何なることか!?スティールホイルが苦悶の叫びを上げる!腹部には焼け爛れた裂傷!『SYYY…!』アシッドレインの単眼が邪悪に歪んだ。その右腕には…おお、ナムアミダブツ。硫酸の刃が生成されていた!

これぞナガレ・ニンジャクランの秘儀、分泌した硫酸を刃状に固形化し、斬撃を繰り出す恐るべきリキッド・ソードである。回避困難の長いリーチに加え、カラテ防御を行えばその刃は砕け散り、飛沫が敵の装甲を融かし、皮膚を焼く。『イヤーッ!』アシッドレインは左腕からもソード生成!二刀流!

少しスティールホイル=サンには苦労していただきましょう。リキッド・ソード二刀流となったアシッドレイン=サンの攻撃はダメージ2・回避難易度HARD・二連続攻撃となります。これを2セットこなしてもらいます!

イヤーッ!イヤーッ!』恐るべき速度で振るわれる二本のリキッド・ソード!撒き散らされる酸の飛沫が工場の床を、転がる労働者死体を無惨に溶かしていく!「イヤーッ!イヤーッ!」スティールホイルは必死で回避!

【回避】判定:3d6>=5+3d6>=5 = (3,1,5 :成功数:1) + (5,5,1 :成功数:2) = 3 両方成功!

イヤーッ!イヤーッ!』恐るべき速度で振るわれる二本のリキッド・ソード!撒き散らされる酸の飛沫が工場の壁を、転がるアナキスト死体を無惨に溶かしていく!「イヤーッ!イヤーッ!」スティールホイルは必死で回避!

【回避】判定:3d6>=5+3d6>=5 = (1,5,6 :成功数:2) + (4,4,2 :成功数:0) = 2 片方失敗…
スティールホイルの体力5→3

「グワーッ!」だが、怒涛の連続斬撃に加えて膨大な量となった硫酸飛沫がついにスティールホイルを襲った!金属めいた皮膚が切り裂かれ、焼け爛れる!(チクショウ…!このままじゃマズい!)彼は激痛の走る傷口を抑えながら次の攻撃に備えようとし…我が目を疑った。「ウソだろオイ……!

『……』スティールホイルの視線の先、アシッドレインは立ち止まっていた。より正確に言うならば、構えを取っていた。すでにその両腕からリキッド・ソードは消えていたが、深く腰を落とし、両掌を合わせるような奇妙な構えは、先ほどまでの攻勢が児戯に思えるほどの威圧感を放っていた。

その足元からはごぼごぼと超自然の酸が溢れ出し、渦を巻いて周囲のあらゆる物体を呑み込み、溶かし尽くしている。『ア…アア…Aaaa……!』やがて酸の渦はアシッドレインの脚を伝い、胴を伝い、腕を伝い、両掌へと収束する。これはヒサツ・ワザの予備動作だ。スティールホイルはそう直感した。

(食らえば死ぬ。身を隠す場所は…)この細い通路ではそれは不可能だ。(跳ぶか?伏せるか?)その程度で回避できる攻撃でないことは明白。(背を向けて逃げる?)その瞬間にあの恐るべきジツが解き放たれ、なすすべなく爆発四散するだろう。「……やるしかない」スティールホイルは覚悟を決めた。己のジツで……ムテキ・アティチュードで凌ぐ以外に術は無し!

【ジツ】判定:9d6>=4 = (2,2,6,5,2,1,1,3,4 :成功数:3) = 3 成功!
スティールホイルの精神力6→5

「イヤーッ!」スティールホイルは決断的にスプリントする!(防御のためにムテキを使ったところでムダだ!間違いなく溶かされて死ぬ!だったら…!)『…Ha!HaHa! A!CI!』アシッドレインは真っ直ぐ己に向かってくる獲物を嘲りながら致命的なジツを浴びせかけんと…「イヤーッ!」『!?』したその瞬間!スティールホイルが回転ジャンプしたのだ!

ム!テ!キ!」空中で高速回転しながら、スティールホイルはジツを発動した。瞬時に彼の肉体は完全な鋼鉄の塊と化し……『グワーッ!?』その大質量はカラテ回転エネルギーを保ったままアシッドレインに激突した!

ゴウランガ!なんたる追い詰められた必死さとカジバヂカラの生み出す起死回生鋼鉄車輪めいた攻撃か!『AAARGH!』アシッドレインは大きく体勢を崩し、ジツのコンセントレーションも乱れている!(よしッ!今の内に…)スティールホイルは即座にムテキを解除し、逃げ出そうとした。

だが、その気の緩みが彼の足を掬った。(エッ…)立ち上がろうとした彼は酸で溶かされた床で滑り、ブザマに転倒したのだ。「グワーッ!?」『AARGH!』すでに体勢を立て直したアシッドレインはすぐさま両掌を突き出し、足元でもがく愚かなサンシタニンジャに向けた。

死ぬ?ここで死ぬのか?俺は?)スティールホイルの主観時間は泥めいて鈍化し、眼前でゆっくりと渦巻くライムグリーンの殺意を見た。(こんなところで死ぬのか?まだ目標額の十分の一…20万すら貯めてないのに?)スティールホイルは憤った。(((俺はカネを貯めて豪邸を買う!そのためならなんだってするぜ))) 数週間前の記憶。ソーマト・リコール現象が始まった。

(((目標額は200万だ。だから俺はカネを稼いで、稼いで…)))「フザケルナ!何がソーマトだ!そんなもの一銭の価値も無い!!」スティールホイルは憤った。勝手に死の準備を始めた己自身のニューロンに対して。「死んでたまるかッ!俺はこんなところで死なねぇぞ!絶対に!」叫ぶ、叫ぶ!だが…無情にもアシッドレインのヒサツ・ワザは今まさに放たれようと……。

BLAM!BBLAM!『グワーッ!?』放たれようとした、その瞬間であった!アシッドレインの後頭部に三発の銃弾が突き刺さる!超自然のメンポに食い止められ致命傷とはならなかったが、激しくニューロンが揺さぶられた事でジツのコンセントレーションは完全に解け、両掌の酸の渦は雲散霧消した!

背後からアンブッシュ銃撃を行ったニンジャは、褐色の肌に黒髪の女であった。「スティールホイル=サン!無事か!」「スケイルシューター=サン!?」「早く逃げろ!」「…! すまない。助かった!」スティールホイルは今度こそ立ち上がり、全速力で駆け出した。それを見届け、スケイルシューターも小さく呟いてその場から走り去る。「借りは返させてもらったぞ」

(クソッ!クソッ!完璧に返されちまった!カネをふんだくるつもりだったのに!)走りながら、スティールホイルはまたしても憤った。(あそこで転んでいなければ、スケイルシューターに恩を着せたまま帰還できたのに!)

後方からは激しいイクサの音と、恐るべきヤクザスラングが聞こえてきた。救援が到着したのだろう。もう心配はあるまい。あのシックスゲイツのカラテは暴走するアーチ級ニュービーなどに後れを取ることは決してない。スティールホイルは戦利品の詰まったバイオフロシキを抱え、工場を脱した。

ここはソウカイヤの本拠地、トコロザワピラー。今宵の帝王ラオモトは上機嫌であった。「ムハハハハ!よいぞ!迅速な報告、的確な対応、実にアッパレであった!」「ハハーッ!もったいなきお言葉!」実子であるチバが無事に救出されたことに加え、稀少なアーチ級ソウル憑依者を発見して報告し、救援到着まで持ちこたえたスティールホイルの働きは大いに評価された!

「貴様に褒美をとらす!」ラオモトがぽんぽんと手を叩くと、漆塗りのオボンを持ったオイランがしずしずと現れ、ドゲザするスティールホイルの前に差し出した。オボンの上には…ゴウランガ!札束が乗っている!「ア…アリガタキシアワセーッ!!」「ムッハハハハハ!今後も励むがよい!」

【万札:10】 【名声:2】 【余暇:2】を獲得
◆最終リザルト◆
【万札:27】 【名声:3】 【余暇:2】 【トロ粉末:1】

◆◆◆

イヤーッ!」『グワーッ!』「イヤーッ!」『グワーッ!』「イヤーッ!」「…ンアーッ!?」激しいソニックカラテ衝撃波の乱打を受け続け、アシッドレインが身に纏った超自然の硫酸装束は今や完全に剥がれ落ちていた。ソウルの暴走も収まりつつある。「やっと大人しくなりやがったか。イヤーッ!」「ンアーッ!」ダメ押しに一発カラテストレートを叩き込む。

「ゲホッ…ゴホッ…」その偉丈夫は立ち上がる力も失った若い女の薄緑色の髪を乱暴に掴み上げ、先ほどまでアシッドレインだったそれに声を掛けた。

「改めてアイサツしてやる。ドーモ、アシッドレイン=サン。俺はソウカイ・シックスゲイツのニンジャ、ソニックブームだ」「…ドー…モ…ソニック…ブーム=サン……ゴホッ」女は弱々しい声でアイサツを返そうとする。「わたし…は……ユリ・ウノ…です……」そして、そのまま気を失った。

「…チッ。余計な荷物増やしやがって」ソニックブームは吐き捨てるように言うと、ユリ・ウノを米俵めいて担ぎ上げ、その場から立ち去った。すでに今回の緊急事態で駆り出されたソウカイニンジャはほぼ帰還している。ここからは事後処理の時間だ。彼が率いるスカウト部門の仕事も山積みだろう。

「とりあえず…コイツはリー・アラキ行きだ。生かすにしろ、ソウルだけ“使う”にしろな」「ハイヨロコンデー」工場前。拘束衣を着せられたユリをクローンヤクザに預け、彼は再び燃え盛るニルヴァーナ・トーフ工場へとエントリーする。バンディットからもニュービーを一人確保したと報告があった。

これだけ派手に死傷者が出ているならば、ニンジャソウル憑依者が出現する可能性も実際高い。ソニックブームは経験則上それをよく知っている。ならば、ネコソギするまでだ。「さァて…楽しい楽しいスカウトの時間だ!

◆◆◆

ネオサイタマ某所。うらぶれたUNIXカフェの一室で、金属めいた肌の色を持つ男が金属めいた輝きを放つ眼で万札を数えていた。「くくく…何度数えても27枚ある!一気に目標額に近付いた…!まったくラオモト=サン、バンザイだぜ…!」その男の名はスティールホイル。カネを稼ぐことが何よりも好きな、邪悪で、決して懲りることの無いソウカイ・ニンジャである。


【スティンジー・ニンジャ・イン・カジバ・スティール】終わり。

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