Disney(DIS) Earnings Call Transcriptまとめ


ウォルト・ディズニー・カンパニー 2024年度第2四半期決算説明会要約

会社紹介

ウォルト・ディズニー・カンパニーは、メディアネットワーク事業、パーク・エクスペリエンス・製品事業、スタジオ・エンターテインメント事業、ダイレクト・ツー・コンシューマー事業の4つのセグメントを有する総合エンターテインメント企業である。2023年度の売上高は879億ドル、営業利益は123億ドルであった。

メディアネットワーク事業は、国内外でテレビ番組の制作・配信を行う。ABC、Disney Channel、ESPN、Freeformなどのケーブルテレビネットワークを有し、市場シェアは約30%である。

パーク・エクスペリエンス・製品事業は、ディズニーランドやディズニーワールドなどのテーマパークとホテル、クルーズ船、バケーションクラブなどを運営し、コンシューマープロダクト事業も展開している。世界のテーマパーク市場の約40%のシェアを持つ。

スタジオ・エンターテインメント事業は、実写映画やアニメーション映画、音楽コンテンツを制作・配給している。主なスタジオはWalt Disney Pictures、Walt Disney Animation Studios、Pixar Animation Studios、Lucasfilm、Marvel Studios、20th Century Studiosなどである。世界の映画興行収入の約25%のシェアを占めている。

ダイレクト・ツー・コンシューマー事業は、Disney+、ESPN+、Huluなどのストリーミングサービスを提供している。Disney+は2019年11月のサービス開始以降、2億3,530万人の有料会員を獲得している。ESPN+は2,580万人、Huluは4,850万人の有料会員を有する。

目次

  1. 2024年度第2四半期の業績ハイライト

  2. セグメント別の業績

    • メディアネットワーク

    • パーク・エクスペリエンス・製品

    • スタジオ・エンターテインメント

    • ダイレクト・ツー・コンシューマー

  3. 2024年度通期の見通し

  4. 今後の戦略と成長ドライバー

  5. 質疑応答

2024年度第2四半期の業績ハイライト

ウォルト・ディズニー・カンパニーの2024年度第2四半期の業績は、前年同期比で大幅な改善を示した。調整後EPSは前年同期比30%増の1.21ドルとなった。売上高は前年同期比8%増の238億ドル、営業利益は同23%増の51億ドルであった。

特に好調だったのはパーク・エクスペリエンス・製品セグメントとストリーミング事業である。パーク・エクスペリエンス・製品の営業利益は前年同期比12%増となった。Disney+の有料会員数は6.3百万人増加し、広告付き有料会員を含め、合計1億2,660万人となった。ストリーミング事業全体では、第4四半期中の黒字化を見込んでいる。

一方、メディアネットワークセグメントの営業利益は前年同期比で減少した。アフィリエイト収入と広告収入の減少が主な要因である。

スタジオ・エンターテインメント事業は、第2四半期に大型作品のリリースがなかったため、前年同期比で減収減益となった。しかし、今年後半から来年にかけて有力な作品ラインアップを控えており、業績の回復が期待される。

セグメント別の業績

メディアネットワーク

メディアネットワークセグメントの売上高は前年同期比3%減の73億ドル、営業利益は同15%減の25億ドルとなった。

国内のケーブルテレビネットワークでは、アフィリエイト収入と広告収入が減少した。ESPNではスポーツイベントの放映権料の増加を広告収入の伸びで補うことができなかった。一方、配信サービスへの移行に伴い、従来のテレビ視聴者数は減少傾向にある。

海外のメディアネットワーク事業では、為替の影響もあり減収減益となった。インドのStar Indiaでは、放映権を失ったクリケットの影響が大きかった。

パーク・エクスペリエンス・製品

パーク・エクスペリエンス・製品セグメントの売上高は前年同期比10%増の81億ドル、営業利益は同12%増の27億ドルと好調だった。

北米のパークでは、ウォルト・ディズニー・ワールドとディズニー・クルーズ・ラインが増収増益に貢献した。一方、ディズニーランドでは、人件費の高騰などにより利益が減少した。

海外のパークでは、香港ディズニーランド・リゾートが大幅な増収増益となった。上海ディズニーランドはコロナ禍の影響から回復しつつある。

コンシューマープロダクツ事業の営業利益は前年同期比7%増加した。

長期的な成長に向けて、複数の戦略的投資を行っている。ディズニーランド・リゾートの拡張計画「ディズニーランド・フォワード」は、アナハイム市議会から暫定承認を得た。

スタジオ・エンターテインメント

スタジオ・エンターテインメントセグメントの売上高は前年同期比25%減の31億ドル、営業利益は26億ドルの赤字となった(前年同期は5,500万ドルの黒字)。

第2四半期は大型作品のリリースがなく、前年同期のような大ヒット作品による収益がなかったため減収減益となった。しかし、今年後半から来年にかけて、『キングダム・オブ・ジ・エイプス』『インサイド・ヘッド2』『デッドプール&ウルヴァリン』『エイリアン:ロムルス』『モアナ2』『ムファサ:ザ・ライオン・キング』『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』『ファンタスティック・フォー』『エリオ』『ズートピア2』『アバター3』など有望な作品のラインアップが控えており、業績の回復が期待される。

コンテンツのクオリティにこだわり、量より質を重視する方針に転換している。たとえばMarvel作品では、年間のドラマシリーズを4本から2本に、映画を4本から2~3本に絞り込む。

ダイレクト・ツー・コンシューマー

ダイレクト・ツー・コンシューマーセグメントの売上高は前年同期比13%増の55億ドル、営業利益は4,700万ドルの黒字となった(前年同期は4億1,700万ドルの赤字)。

Disney+の有料会員数は、第2四半期に630万人増加し、1億430万人となった。内訳は、国内で約800万人の増加、海外ではディール変更や値上げの影響により微減となった。Disney+の月間平均売上高(ARPU)は前期比6%増の7.95ドルとなった。

Huluをディズニーバンドルに統合したことで、加入者数が増加した。今年末までにはESPNのタイルをDisney+に追加し、一部の生中継やスタジオ番組をDisney+アプリ内で提供する。これは、2025年秋に予定しているESPN単体の強化型ストリーミングサービスの立ち上げに向けた第一歩と位置づけている。

ストリーミング事業全体の黒字化のタイミングは、一直線ではない。第3四半期はインド市場のスポーツ放映権料の影響で赤字を見込むが、第4四半期には再び黒字化する見通しである。

パスワード共有への対策として、9月から本格的に共有アカウントへの課金を開始する計画である。Netflixの好調な実績を参考に、大きな効果を期待している。

2024年度通期の見通し

2024年度通期の調整後EPSは、当初予想の20%増から25%増に上方修正した。特にパーク・エクスペリエンス・製品セグメントとストリーミング事業が牽引役となる見込みである。

一方、第3四半期は、パーク・エクスペリエンス・製品セグメントにおいて人件費高騰や新規投資に伴う費用増、スポーツ事業のインドでの放映権料負担などから、前年同期並みの利益水準となる見通しである。しかし、第4四半期には再び二桁の増益を見込んでいる。

ストリーミング事業では、第3四半期は赤字を見込むものの、第4四半期には黒字化し、2025年度にはさらなる利益率の改善を目指す。

今後の戦略と成長ドライバー

今後の成長ドライバーとして、以下の4つの戦略を推進していく。

  1. コンテンツ力の強化:質の高い作品を提供し続けることで、視聴者を引き付ける。

  2. ストリーミングサービスの拡充:Disney+へのHulu統合、ESPNタイルの追加など、サービス価値の向上を図る。

  3. テーマパーク事業の拡大:ディズニーランド・リゾートの拡張や新規クルーズ船の投入など、長期的な成長投資を実行する。

  4. スポーツコンテンツの強化:ESPNのデジタルシフトを進める一方、linear のESPNも並行して展開し、スポーツファンにとって欠かせない存在であり続ける。

パスワード共有対策や広告モデルの導入、テクノロジー活用によるマーケティングの効率化など、収益性改善に向けた取り組みも進めている。

コンテンツのライセンス供与については、一部の作品をNetflixなどの他社に提供することで認知度向上や新規視聴者の取り込みにつなげる一方、自社サービスの独占的価値も重視するなど、バランスを取りながら検討していく。

質疑応答

Q1. パーク・エクスペリエンス・製品セグメントの設備投資計画の前提となる成長見通しについて。中期的にシングルハイの売上成長は維持できるのか?

A1. パーク・エクスペリエンス・製品セグメントは、高い営業利益率と顧客満足度を誇る素晴らしいビジネスである。国内外での入場者数拡大、クルーズ事業の成長など、引き続き投資機会は大きいと考えている。高い投資リターンを期待でき、株主価値向上につながると確信している。

Q2. コンテンツ、特にMarvel作品の競争力について。今後数年間に多数の新作リリースを控えているが、IPの勢いを取り戻す自信はあるか?

A2. 今後の作品ラインアップには自信を持っている。クオリティにこだわり、作品数を絞り込むことで、IPの価値を高めていく。2025年の『デッドプール』『キャプテン・アメリカ』に続き、その先も有望な『アベンジャーズ』新作の企画が進行中である。スタジオ事業の業績回復を期待している。

Q3. Disney+の契約数と視聴時間が減少しているが、エンゲージメント向上に向けた施策は?テクノロジーの刷新やUI改善の取り組み状況は?

A3. エンゲージメントを高めるカギは、良質なコンテンツの提供である。話題作が目白押しの強力なラインアップを揃えている。また、レコメンデーションエンジンの改善、スポーツコンテンツの拡充、ラテンアメリカでのサービス統合など、ユーザー体験の向上に努めている。テクノロジーへの投資も引き続き行っていく。

Q4. ESPNのデジタルシフトの方向性、リニアとの兼ね合いは?NBA放映権獲得に向けた交渉の見通しは?

A4. リニアのESPNは今なお圧倒的な強さを発揮しており、スポーツコンテンツの価値は揺るぎない。デジタルシフトを進める一方、当面はリニアとデジタルを並行して展開し、スポーツファンに様々な選択肢を提供する。NBA交渉については、長期的な視点に立ってESPNにとって最適なパッケージを追求している。リーグの成長性を評価しており、Win-Winの合意を目指す。

申し訳ありません。Q5の回答を再度記載いたします。

Q5. インド市場の見通しについて。Hotstarを来年連結対象から外す予定とのことだが、Hotstarを除くダイレクト・ツー・コンシューマー事業の業績見通しは?

A5. インド市場は、巨大な成長ポテンシャルを秘めている一方、事業環境の不確実性が高い。Hotstarの業績が全体の足かせにならないよう、連結対象から外すことを決めた。Hotstarを除くと、グローバルでのストリーミング事業の収益性は一段と高まるはずだ。料金改定やバンドル販売、マーケティングの最適化などの施策を着実に実行していくことで、中長期で二桁の営業利益率達成を目指す。

Q6. ケーブルテレビ局Charter Communicationsとの提携について、初期の手応えは?加入者数や解約率への影響は?今後も同様の提携を拡大していく考えか?

A6. Charterとの提携はまだ始まったばかりだが、契約数の伸びは想定通りで、解約率も低く抑えられている。ユーザーエンゲージメントも良好だ。個々の事業者のニーズに合わせたカスタマイズが必要なので、一律のテンプレートにするつもりはないが、win-winの関係を築けるパートナーを開拓していきたい。

Q7. サードパーティへのコンテンツ供与について。売上拡大の機会としてどの程度有望視しているのか?一方で自社サービスの独占的価値を毀損するリスクについてはどう考えるか?

A7. Netflixなど一部の事業者へのライセンス供与は、コンテンツや当社サービスの認知度向上に一定の効果があると考えている。とはいえ、自社サービスの差別化要因が失われるリスクも十分認識しており、慎重に見極めていく。現時点で大規模に展開する計画はないが、引き続きオープンマインドで検討したい。

今後の業績見通しに関する考察

ウォルト・ディズニー・カンパニーは、メディア・エンターテインメント業界のリーディングカンパニーとして、強固な事業ポートフォリオを有している。
特にメディアコンテンツについては、ディズニー、ピクサー、マーベル、スター・ウォーズ、ナショナル・ジオグラフィックなど、他に類を見ない強力なIPと制作力を誇る。
ダイレクト・ツー・コンシューマー事業では、Disney+の好調が続いており、Huluとのバンドル販売やESPNコンテンツの拡充によって、さらなる成長が見込める。
パーク・エクスペリエンス・製品事業も、ポストコロナの需要回復と戦略投資により、利益率の高い安定成長を維持できるだろう。

一方、メディアネットワーク事業は構造的な変革期にあり、従来のテレビ広告モデルから、ストリーミングを軸とした新たなビジネスモデルへの移行が進んでいる。
ESPNのデジタル化を含め、視聴スタイルの多様化に合わせたサービス展開を模索していく必要がある。
スタジオ事業は、パンデミックなどの影響を受けやすいが、定評あるフランチャイズ作品を数多く抱えており、潜在力は高い。
テクノロジーへの投資や事業オペレーションの効率化など、事業基盤強化に向けた取り組みも着実に推し進めている。

トップラインの伸長、ストリーミング事業の収益化、コスト管理の徹底により、2024年度の業績目標達成は射程圏内だ。
中長期的にも、強力なIPを核とした事業展開と、DXを梃子にしたビジネスモデル変革を通じて、持続的な成長を実現できるものと期待される。


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