もちおくんから本岡くんへ

最初に見たのは田町でのオフ会の時でした
その時は３０秒ほど話した記憶しか無かったです
印象はヘラヘラ、オドオドしてるなーくらいの印象でした

２度目は渋谷でのオフ会でした
たくさんの人数がいる中、どこで何をするわけでもなく、顔だけは張り付いた笑顔でヘラヘラしながらうろちょろしていました
さすがに見かねて声をかけてみましたが、やはりチケット台本は売れておらず、相変わらずオドオドしていました
たまたまそこにい人達に、彼を紹介してその時は店の手伝いに戻りました

夏の終りくらいでした。
突然TwitterのDMが来ました
「ペンキを塗らせてくれませんか？」
当時は別の若い子が仕事が無くて食えてないとのことで
経験も兼ねてペンキ塗りのバイトをさせていました
それを見て送ってきたのだと思いますが、余りにもいきなりで、何の関係性も無いときだったので、頭おかしいのかなと少し警戒した記憶があります

まずは話を聞かせてよと錦糸町の店に呼び出しました
その日は下町会の会合の日でした
現れた彼は相変わらずの貼り付けた笑顔と飾り物の虚勢を張った顔をしていました
「で？何をしたいの？」
ここから始まりました

話を聞いて数分で妙な気持ち悪さを感じました
（こいつ何を薄っぺらい事を言ってるんだ？）
（まずはこのカッコつけを剥がさないと何も変わらんな）
これが彼の気持ち悪い笑顔の原因かと思いました

「とりあえずビール飲め」
古い考えかもしれませんが、その人の本音を聞かないと信用はできません
そのためにはまずはじっくり酔わせて、腹を割ってもらおうという作戦に出ました

彼の気持ちや生い立ちや経験、それらを聞き出しながら、どんどんお酒を飲ませました
緊張してたのか、スイスイと飲んでいきます

相当飲んだ後にやっと本音がポツポツ出始めました
「結局何がしたいの？」
「…友だちが欲しいんです。何かを分かち合える人が欲しい」

これで彼の仮面の笑顔の意味がわかりました
今までずっとこの仮面を被って過ごしていたんだなと
一度自分のプライドを壊して、本当の自分を出すことを覚えさせないと変わらないなと思いました

僕は若い頃からドカタでした
正直、何度もやめたくなりましたし、違うことをやって何度も失敗しています
ただ毎回思うのはここを経験しておけば、他のことは大抵耐えられる
良くも悪くもこれ以上しんどいのは無い
地獄を見ておくと、大抵のことは楽に感じる
そう思いやって来ました

今も現場に出て穴掘りすることは抵抗ありませんし、下水の中に手を突っ込んで作業することも抵抗はありません

夏は暑いし冬は寒い
昔は誰も何も教えてくれないし、動きが遅いとハンマーが飛んできました
頭にきて、ドカタのおっさんと現場で喧嘩したこともあります
それでもその経験が自分の強さや芯を作ってきたと思います

彼には芯が無い

これが彼に抱いた感想です
だから言葉がフワフワしてる、全然響かない
芯を作るには自分に対しての自信と自分の生き方への覚悟
これを作らないとこのまま変わらないと思いました

「ドカタやってみる？」

まずは体を使ってヘトヘトになるまで働く
そうするとムダなことを考えなくなる
その時に出てくる気持ちを感じて欲しい

なぜドカタなんてやってるのか
どうしてここまで落ちたのか
ここからまた這い上がろう

かっこ悪くていいので本音を出す勇気
惨めな自分を、弱い自分を、過去の自分を受け入れる勇気

これを乗り越えた時に、何かまた見えてくるものがある

数日後には彼はドカタとして現場に立っていました

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あれから５ヶ月が過ぎました

彼はドカタを去ります
人は自分を曝け出すことで何が変わるのか？

自分が変わると周りが変わる

この言葉が当てはまるくらい彼の環境は変わりました
勇気を出して自分を曝け出す
過去の失敗を受け入れる
普通はこんな事、簡単にできません
カッコつけて言い訳して誤魔化してしまいます

しかし彼は全てを素直に出しました

彼の周りには彼をバカにする人はおらず、彼の勇気を称える人がたくさんいました

彼は自力で世界を変えました

彼には仲間ができたのです
彼が望んでいた、自分を認めて気持ちを分かち合ってくれる仲間ができたんだと思います

この５ヶ月、彼を近くで見ていた人間として、確実に言えるのは、

本当によく頑張った

ただこれだけです

人生にはいくらでもやり直せるチャンスはある
人は勇気を出せば変われる
諦めないで行動すれば、必ず打開策はある

彼はたくさんの事を教えてくれました

彼を見て勇気づけられた人が何人いるでしょう
彼を見て自分を振り返ることができた人が何人いるでしょう
彼を見て新しい１歩を踏み出せた人が何人いるでしょう

彼がただがむしゃらに走ってきたこの５ヶ月間で、彼の後ろには沢山の人が溢れています
僕もその一人です
僕が彼の人生を変えたんじゃないのです
僕が彼に変えて貰ったのです
彼のおかげで僕の人生が変わりました
１歩を踏み出すことができました
自分の逃げていた過去を受け入れる勇気を得られました

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今振り返った時にどれだけの人がいるか見て下さい
これがあなたの残したものです
あなたの勇気に魅せられた人たちです

これがあなたの芯です

これからまだたくさんの困難や嫌なことも起こるでしょう
でも忘れないで下さい

あなたはきちんと自分の力で這い上がりました
沢山の人を勇気づけました
自分の意志で行動しました

これからの人生も逃げないで戦って下さい
帰ってくる場所はいつまでも残しておきます

堂々と自信を持って生きていって下さい

束の間の疑似師弟関係楽しかったです
どうもありがとう