#ディストピア小説
どこへでも行こうと思えば行けるので行きたい場所が思いつかない
移動手段の進化による弊害の短歌
郷愁のなかに草木は生えてない
長いあいだ自然と隔てられてきた川柳
この先はアップデートが必要です 古い機種では会えなくなった
VRでしか会えない短歌
新しい重さの単位を決めましょう 未来を量るのに用います
命の重さを量って選別しようとしている短歌
買いたてのカメラを虫と間違えて叩き潰した十万損した
悔やむべきはそっちじゃない短歌
鉄の道 鉄の橋の下 鉄の川
景色のすべてが人工物の川柳
宇宙から見れば輝くミラーボール
すべての地表と海面に蓋をされた川柳
雪だけが境界線を消したのに ここから先はもう積もらない
気象もコントロールできる時代の短歌
体と脳 どちらを自分と定めるか 決めて下さいと役所は言うが
脳移植が個の境界を曖昧にした短歌
思い出は1ピクセルも色褪せず ただ蘇る 鮮やかさもなく
全ての営みが記録され思い出補正が消えた短歌
人類を半分減らしたマシーンの ねじの頭がプラスチックとは
誰かが止められたはずの短歌
楽園の空気を吐き出すファンの群れ 壁の外から狙う密猟者
絶滅寸前室外機の短歌
つぎはぎの都市を上れど出口なし
山で遭難したら登れと言われたが…の川柳
今晩は かぶのスープをロボットに 僕はいつもの栄養ドリンク
無理して最新鋭のやつを買ってしまった短歌