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語彙のマガジン

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小学校の国語のテストで必ずあった「○○を使って短い文をつくりなさい」という問題が好きでした。それをやります。
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#小説

「運否天賦」の例文

 あの電車だ。あの電車に乗れれば間に合う。ホームに停車しているその車輌は、しかしフェンス…

あきやま
1年前
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「たつき」の例文

 金魚はうまくやれば儲かるんだ、と聞こえた。昼下がりの駅のホームで、老夫婦と呼んだらぎり…

あきやま
1年前

「しずしず」の例文

 祖母の家は大工が建てた。そう聞いている。家の中央あたりに太い大黒柱がどっしりと立ってお…

あきやま
1年前

「度し難い」の例文

 滑り台は難しい。今日もサミネは上手に着地できずに尻もちをつく。伸ばした足をそのまま地面…

あきやま
1年前
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「汗顔の至り」の例文

 雨の道路ですべってころんだ。正確に言うと、雨でぬれた葉っぱを踏んですべってころんだ失敗…

あきやま
1年前
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「口吻を洩らす」の例文

 口が小さいのでハンバーガーをハンバーガーとして食べられません。まず上のパンを、次にアボ…

あきやま
1年前

「行き掛けの駄賃」の例文

「声の大きさは関係ないんだよ、それは物理次元の尺度だから」  そう言ってシババヤシ モリは空を見上げ、こう続けた。重要なのは声の美しさなんだ、重要なのは。あ、澄んだソプラノボイスがいいとか、だみ声はダメだとか、そういう話じゃないよ。噺家さんのがらがらした声が心地よかったりするじゃない。落語はね、透き通った声でやられたって深みもなにもありゃしない。  「ありゃしない」のところで、シババヤシ モリは小さく首を回した。それが何かのスイッチだったかのように突然黙ると、両手を突き上げて

「手慰み」の例文

 窓際の席は太陽の動きがよく分かる。さっきまで短かったグラスの影が今はだいぶ伸びている。…

あきやま
1年前
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「老いさらばえる」の例文

 年齢は膝に出るだの、腰に来るだの、毛髪は逝くだの、うるせえ。と、サワタグロは悪態をつく…

あきやま
1年前

「とば口」の例文

「趣味はカメラです」  という人の中には、カメラが趣味なのではなく写真を撮るのが好きなだ…

あきやま
1年前
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「恬として恥じない」の例文

 以下の理由から、マモミはミナハルとのキスを拒んだ。 ・つい10秒前に交際を始めたばかり…

あきやま
1年前

「当意即妙」の例文

 怪物が襲ってくる。  動物園で見るカバくらいの大きさで、YouTubeで見るアフリカのカバくら…

あきやま
1年前
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「薫陶を受ける」の例文

 そんな字面のウインナーがあったような気がする。漢字二文字の商品名を、スーパーの精肉売り…

あきやま
1年前
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「籠絡」の例文

 足の生えた蛇を見たことがある。私がそう話すと、たいていの人は「それはトカゲじゃないの」とか「ムカデだろう」とか言って否定してくる。もう二度と誰にも話さないと毎回誓うが、ハイボールを5杯飲んだら忘れてしまう。カウンター6席だけの狭い居酒屋で隣り合わせた初対面のおじさんに、裏山で見た生き物について聞かせた。  10歳まで住んでいた家のすぐ裏に山があった。まったく高くない、ちょっと傾斜のある森くらいの山。二階の部屋の窓からその裏山に給食を捨てていた。当時の私は好き嫌いが激しく、