タテの国の物語 備忘録

はじめに

信頼フォロワーが「面白い」と言っていたので早速読みました!
作者さんの「俺がみたいSF」という感じで、とても面白かったです!
でもいくつか謎すぎる…と思ったことがあり、自分なりに解決する案を考えざるをえなかった(性格)ので、ここに書いておきます。
最初に言うと私は作者さんのインタビューとかを全く検索しないですし全く考慮しません!いっそ興味がない!というとハイパー感じが悪いですが、漫画とかアニメとか小説とかは、「作品から読み取れることが全て」だと思っているので…許されたい…。

前段

ごく乱暴にまとめると、タテの国は「過去へ旅する・介入することによって、分岐を増やす=違う未来へのルートを確保し、そちらに進む」ことを繰り返していく話だと思うのですが、それを

(疑問)
 ・ルスカが最初記憶を失っていたのは何故なのか?
 ・ルスカが行った「余計なこと」とは?
 ・グルオン(アメーバ)は結局何のためにいたの?
 ・なんでオメガニウムは砂の巨塔に埋まってたの?
 ・ピーピーの世界において復活したオメガ・ラムダ王が「落とし巫女」を知らなかったのは何で?
 ・最初のセグメントで出会ったトクマクとユダと、ピーピーのセグメントで出会ったトクマクとユダは同一人物か?(これは本稿で言及しません)

(前提条件)
 ・この作品における現実世界のことを、「チャンドラ世界」「エンリコ世界」「最後の世界」と呼んでくべるします。
 ・この作品における超科学は、「ワームホールを利用した空間の移動」「ワームホールを移動した過去への移動」「ダークエネルギーを利用した、物質の生成」「人間の心をバックアップ」があると整理しておきます。
 ・タテの国において何か干渉をすると、干渉をした時点で、全てのタテの国に影響があるものとします(時間の概念がふわふわなので)
 ・同一時空に同一人物が存在した場合、それを両者が知覚した時点で、「どちらかが消える」ものとします

上記状態で、疑問を解消しながら、作中の時間軸に沿って、出来事を整理していきます。
これExcelに表で書いてたんですけどあんまり長大なんで…、文章にするか~と思ったら当たり前みたいに長い。

1-1.チャンドラ世界における出来事

 1-1-1.ルスカとリサのフラグたて
  →地球にて、ルスカとリサ、「一緒に冒険をしよう」というフラグを立てる
  →この出来事はエンリコ世界において描かれますが、チャンドラ世界でも同一の出来事が起きていたものとします。ルスカの回想で、似たようなシーンもあるので…。

 1-1-2.地球に隕石が落ち、騒動の中、リサが死亡

 1-1-3.残された人類と種が移民船に乗船
  →グルオン博士が移民船制御システムとしてのオメガシステムを起動させます

1-2.チャンドラ世界、移民船内の出来事(BH前)

1-2-1.ルスカが「余計なこと」をします。
 →ここの「余計なこと」は、私は、「グルオン博士に、1-1-1で起きたリサとの思い出を語る」だと解釈しました。
 →移民船の外の宇宙を眺めながら「リサも来られたらよかったのに」「冒険したがってた」的な発言です。
 →この発言をきっかけに、グルオン博士は「リサは後悔しながら死んだ」と認識し、「リサを生き返らせなければならない」という強迫観念を抱き、ちょくちょくスリープから抜け出して、「ワームホール」の研究をスタートさせたものと解釈します。まさしく余計なこと…。
 1-2-2.グルオン博士の試行錯誤
 →この時、グルオン博士は直ぐに「ワームホールの開発しかない」と実行したわけではなく、まず、「リサの心のバックアップを、自分の心の中に復元させる」を試したと判断します。※1
 1-2-3.ワームホール開発の成功
 →移民船内において、グルオン博士がワームホールの開発に成功します。天才。
 1-2-4.ブラックホール召喚
 →グルオン博士がワームホールを起動、ブラックホールを召喚しますが、つながり先は外宇宙でした。詰みます。

1-3.チャンドラ世界、BH後、タテの国建設直前迄

1-3-1.オメガシステムによるグルオン博士の殺害
 →オメガシステムは、グルオン博士がブラックホールを召喚したことを確認。功利システムが発動し、グルオン博士をテロリストとして認定。自動的に殺害します。エンリコ世界の話ですが、割と釈明とかなくノータイムでやるのがヤバいと思います、オメガシステム。
 1-3-2.オメガシステムにより殺害されたグルオン博士を、チャンドラとルスカが目撃します
 1-3-3.タテの国構築着手
 →オメガシステムは、タテの国の構築に着手します。着手時、1-3-1で殺害したグルオン博士の心のバックアップを自身にアップデートしながら行いますが、この時、1-2-1で博士に宿っていたリサの心も一緒にアップデートされます。リサの心には、「ルスカと冒険をしたい」という気持ちがありました。
 (リサの心=まっさらな心でルスカに会う ではありません。オメガ(友)の心=まっさらな心でルスカに会う であり、リサとオメガ(友)は別人という前提で話しています。また、このオメガ(友)の心は、1話におけるルスカとの出会いがあって生まれるものなので、1-3-3時点では発生していないと判断しています。ただ、リサの心自体はあり、それは「ルスカと冒険をしたい」という気持ちだったという話をしています。この段階ではまだ顕現していません)

1-4.タテの国構築

1-4-1.タテの国構築
この段階でタテの国は「後で、チャンドラ・ルスカ・地球人の種の入植」が目的であるので、
①無限に伸びていくという機能を支えるためのエネルギーを供給する概念=「事象の地平線の国」(=後の落とし巫女の国)
②共同体「国・街」を維持していく、という概念
③エネルギーをもとにタテの国を伸ばしていくという概念

が必須条件とします。

まず、①については別にオメガニウムが女の子でなくてもよかったというのは作中で指摘されている通りです。
なので、私はこの時点では落とされているのは単なるオメガニウム錠剤だったと判断しています。
最初期に「オメガ」がいなかったことは、ハトのジジイが「オメガの条項が追加された」と発言しているところも論拠にします。追加されたということは、元々はなかった時期がある、ということです。
そして、①の統治者としてグルオンの心をもとにした「大きい人」がデザインされます。

次に②ですが、最初に規模の話をします。
宇宙船に残っていた種の数はわからないですが、元々は100万人がスリープしていましたので、とりあえずそれくらいの規模の入植が最終的には可能かどうか判断することが必要だったと判断します。
ピーピーの世界における頭尾人の人口は戦時下にあって2万少しなので、100万人が居住するためには、あの頭尾人の居住区エリアのざっと30倍くらいは欲しいものです。
そう思うと、「底の国(グルオン・アメーバのいた場所)」ではちょっと狭い。
もちろん、安全面を考えると「底の国=タテの国の先端」が一番安全ではあるけれど、他の居住エリアが必要となります。
なので、「底の国」以外に、居住エリアとしての「駅」という概念がこの段階で生まれ、駅と駅、駅と「底の国」をつなぐためにワームホールが利用され、そしてそれらを束ねる「王=オメガ・ラムダ王」、そして「ラムダ国民」=「公務員」がデザインされたものと考えています。関所は、管理側の王・公務員のエリアと、被管理側を分けるための概念です。
上記で、ピーピーの世界において復活したオメガ・ラムダ王が「落とし巫女」を知らなかった理由を回収しておきます。そもそもオメガ・ラムダ王がデザインされたとき、落とし巫女のシステムはまだ存在していなかったからです。

①はすなわち「事象の水平面の国」(=後の落とし巫女の国)であり、グルオンをもとにした大きな人が管理します。
②はすなわち「底の国」と「駅」、それらをつなぐ「ターミナル」であり、リサをもとにしたオメガ・ラムダ王(および、その部下の公務員たち)が管理します。

あとは③です。つまり、残り「底の国」において、オメガニウムを用いた建造を行うのは誰か? という話で、それのために人造生命が必要となります。これに求められるのは、「オメガニウムを集めること」「永久に動き続けること」「働き続けること」なので、人間的な判断・統治が求められず、ごく機械的に動けばいい、という判断から、シナプス生命体(=グルオン(アメーバ))が、上記求めに応じ、オメガシステムによってデザインされたものと判断します。彼に宿る生存本能は、「そういう設計をされているから」だと思います。重力0地点も、落ちてきたオメガニウムをあまさずゲットするためにデザインされています。
③の管理者は、①のグルオン(復元)、②のリサ(復元)に相当するような、「だれか(復元)」を作ろうとしましたが、朽ちるし、結局、シナプスがいいだろう。という、オメガシステム(の中の、グルオン博士の心)試行錯誤がこの段階であったものと想定します。

この時点においては、タテの国は上記のようなシステムで構築されていたものと思います。
 ①~③をすべて統治しているのがオメガシステムです。
 砂の巨塔にオメガニウムが埋まっていたり、駅にオメガニウムがあったりしたのは、この段階では、①から落とされるオメガニウムは少女のかたちをしておらず、錠剤のままで、ぱらぱら落ちてきていたためだと考えます。「底の国」に到達せず、途中でひっかかったものが、後々まで埋まっているということです。

しかし、ここで重大事件が起こります。

1-5.チャンドラ世界におけるルスカの入国

1-5-1.ルスカの入国
 →ルスカが、タテの国のシステム(1-4-1)が上手く起動しているかどうかを確認するため、入国します。
 →チャンドラがいくか? ルスカがいくか? で、ルスカが行くことになったことに、かつて、リサと約束した「冒険」を、一人でもやってみよう、「ずるいっていわれちゃうかな」って思いながら、気弱そうにみえるチャンドラ世界のルスカが行くことになったのかと思うとちょっと泣ける。
 →でも、チャンドラが、自分が行きたくなかったからルスカに行かせた説もちょっと残る。素直ないい子っぽかったので…ルスカ(チャンドラ世界)は…。

1-6.タテの国におけるルスカによる視察

1-6-1.ルスカの視察
この段階ではまだ戦争や毒ガス等がタテの国には存在しないため、ルスカが前述の①~③の全てが視察対象だったと考えます。
視察であるため、ルスカは当然、②ラムダ国も訪れるはずです。そして彼は、そこで「ラムダ国王」として崇められているオメガ・ラムダと出会います。

ルスカが記憶を失う出来事があるとしたらやっぱこのときじゃないかな?! と思うわけです。

想像力を最大限働かせると、「リサの姿をしているが、今はシステムの一部として王となり、その責任から離れられないようにプログラムされている」オメガ・ラムダ王に対して、ルスカは、1-1-1で交わした約束通り、「一緒に冒険をしよう」と誘ったのではないでしょうか。
このタイミングでルスカの記憶が失われたものと想定します。※2

そのルスカの願いに呼応して、オメガ・システム内で削除されずにいたリサの心が呼応しますが、「私はリサではない」(102話)ことから、普通にタテの国の一住人として転生することを拒否(?)、「オメガニウム+設計図」として、タテの国を落ち続ける「落とし巫女」としてルスカにいつか出会う、という「回りくどい」方法でルスカに会うことを望みます。(102話)※3

そしてこの現象(ルスカに呼応して、オメガシステム内のリサの心(オメガ)が、独断で、リサの形状とリサの心をもつ落とし巫女=オメガを誕生させたこと)が、82話における大きい人(=グルオン博士)の、「オメガ、お前は何もかも忘れたのか、私はお前を許せぬ、私の心を返せ」に相当するのかな、と考えています。
 私の心=グルオンの心なんですが、リサの心はグルオンの心の中にバックアップされていたので、リサの心を使うこと=グルオンにとっては、もはや自分の心を使うことと同じ、というような解釈です。

1-6-2.落とし巫女システムの誕生
 ここで、落とし巫女のシステムがタテの国に組み込まれ、1-4-1でできたシステムが若干変わります。
①「事象の地平線の国」が「落とし巫女の国」になります
②共同体「国・街」を維持していく、という概念は続きますが、一部、③に到達する前に②にひっかかったオメガが現れ(駅長オメガ等)、錠剤オメガニウムの供給は止まります。オメガが重要になるため、関所のルールにオメガ関連のものが増えます。これ、ここまでは「空から降って来た錠剤は、ガメずに何も考えず落とすこと」みたいな感じだったと思うのですが、ここからはそれが少女の姿をしているのでちょっとアレな掟になりました。
③グルオン(アメーバ)のもとに到着するのは、オメガニウム(錠剤)ではなく、オメガ(少女の姿)になります。グルオン(アメーバ)、心を病み始めます。かわいそ。

1-6-3.タテの国のリスタート
 オメガ・ラムダ王とルスカから、全ての記憶が消された状態でスタートです。
 この段階で、ルスカとオメガ(落とし巫女のどれか)が出会うよりも早く、次のアクションがうたれます。ブラックホール発生からここまで、現実世界における経過日は2日未満、次の主役はチャンドラです。

1-7.チャンドラによるタテの国のリスタート

1-7-1.チャンドラによる介入
 チャンドラは、ルスカを取り戻すため、「兵器の開発」と「ドラゴンの誕生」を実現することを画策します。
 そのため、②、つまり居住区に干渉します。
 チャンドラは本当によくがんばったよ。
 ②における人類(=ラムダ国)の仮想敵として頭尾人をデザイン。兵器を作ってほしいから博士を特別性にして、あとここからケルビンの話も始まるんですけどもうめんどうなのでここでとめます。後半は気が向いたら書きます!!

タテの国面白かったです!!!

おまけ

※1
心のバックアップ機能自体は、オメガシステムがグルオン博士のバックアップを保持していたことから、タテの国の技術ではなく、チャンドラ世界の技術としてすでに存在していたものと判断します。グルオン博士の心の中に、リサの心が存在していたこと自体は102話で語られます。私は、「リサとルスカを眺めていた博士自身の心」ではなく、「博士の心に守られていた、リサの心」が存在した、と判断しているので、それはこの段階で博士の心の中になければ他のタイミングがありません。リサの生前に既に実施済だとしたら、さすがにキモいからです。エンリコ世界での話を論拠にしてはいますが、チャンドラ世界でも同様であったと判断します。ピーピーとラニ博士の事例より、一つの固体に二つの心を宿らせることは可能です。
でも博士は、この実験の成功をもって「リサが復活した」とはとらえず、ワームホール開発に歩を進めます。(あるいは、この実験の成果をルスカが聞いて、「それはリサの復活とは言わない」という異議を唱えた=これがルスカのした余計なこと、ということも考えられます。いずれにせよ、ルスカが、「ワームホールの開発」という狂気に博士の背中を押したこと=ルスカの行った余計なこと、という判断です。タテの国内における大きい人=グルオン博士の心は、ルスカが余計なことを言わなければ、自分はリサの心のバックアップを自己の身体にインストールすることを以てして、リサの復活だ、と諦めきれたのに、お前がそれは違うとかいうから! というような流れです)

※2
1-3-1において、オメガシステムによるグルオン博士殺害の時のシチュエーションを整理します。
・チャンドラは、ブラックホールがグルオン博士由来ということに気づきもしていなかった
・チャンドラは、「宇宙船の事故で」グルオン博士が死んだと発言している
・ルスカの台詞は、「…チャンドラさん、…どうしたらいいですか? グルオン博士が…」(85話)。状況からいって、チャンドラよりもルスカのほうが早くグルオン博士の遺体に近づいている。
・功利システムによりグルオン博士をオメガシステムが殺害したとき、「テロリストグルオン博士の排除を確認しました」(99話)という
なので、正確には「ルスカによるグルオン博士の殺害」も可能性に入りますし、これを「余計なこと」と考えることもできるのですが、そうなると「なんのために?」みたいな話になってさらに多く置かなければならない仮定が増えるので私は採用していません。
ただ、ルスカが、「テロリストグルオン博士の排除を確認しました」というアナウンスだけは聞いた可能性があると思っています。
それを効いたとしても、チャンドラ世界のグルオン博士死亡時点で、ルスカは、「どうして、オメガシステムがグルオン博士のことをテロリストだと認定したのか」を知りません。
ただ、タテの国に入り、(視察のために)オメガ・ラムダ王と相対したとき、リサの面影があるかの王を見て、ルスカは、グルオン博士の真意「リサを復活させたい」という気持ちと、それにトリガーを引いてしまった自分の行動(1-2-1)に、ここで気づけたのではないか? と思います。
自分が、リサの復活に向け、グルオン博士の背中を押してしまった。それがゆえに、今回のようなことが起きてしまった。それも含めて、「すべて忘れて」「リサと二人で冒険をする」ことを、彼は受け入れたのではないか? ということを話しています。オメガにより強引に消された(102話)でもいいけど、ちょっとまあ…主人公として…「それを受け入れた」ことに対するロジックが欲しい…。

※3
正直ここがま~ったくわからん マジで落とし巫女になる必要はないし、本人も「回りくどい」と言っている…(102話)
「ルスカと冒険をしたい」というリサの気持ちを受け継いでしまった、オメガシステム内のグルオン博士の心の中にバックアップされていたリサの心=オメガが、「けど私はリサさんじゃない」から、って、「ルスカの記憶を消し、自分のデータも封印して、まっさらな気持ちで出会うために、落とし巫女になろう」ってなる…? 前半まではまだギリわかるんだが、「落とし巫女」になる必要は…なくないか…?! オメガシステム内のリサの心がだいぶ容量として大きいので、通常の人物として具現化することができなかった? と思うものの、ピーピーのサイズで二人分いけてるんだよなあ…。
まあここは…ボーイミーツガールなんで…そういうことだったと…理解する…。

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