#あなたの大槻ケンヂはどこからですか2

友人のイノイノ君にCDを返却したあとも、ひたすら筋肉少女帯のテープを聴き続けた。
当時は今のようにインターネットで情報収集が出来るわけもなかったので、地元のCDショップに行ってみた。

で、あった。
どれもこれも奇妙なジャケットで、どこか気持ち悪いし、怖い。
特に「月光蟲」のジャケットは怖かった。
比較的、笑えるジャケットだったのが「筋少の大車輪」だった。
「えぇーーーーなんで体操してんのwww」
よく見ると、体操のおねえさん、笑顔でまわってるしw
曲もいっぱい入ってるから、これがアルバムってヤツだな、と認識した。

しかし当時中二の自分には、アルバムCDなんて買うお金がなかった。
でも欲しい。お金ない。なんとかしてお金を作ろうと考えた。

その時、また友人のイノイノ君から「バイトしよーぜ」と持ち掛けられた。
まずもって「バイト」という言葉もよく理解していない。
なになに、アルバイト。あー求人広告は見たことあるな。
え、仕事でしょ?そんなの中二の俺たち、やっちゃダメじゃない?
そもそも雇ってくれないでしょ。
そう思ってたんだけど、カンタンな面接に行って、あっさり採用された。
年齢はもちろん高校生ということにした。
たぶん、あれはバレてたと思う。特に自分は。
イノイノ君は大人びていて、流行りの2ブロックなんて髪型をしていたし、お洒落にも気を遣えるマセたヤツだった。

アルバイトの内容は、年に何度かある大安売りをする会場の駐車場整理。
会場は、昔スケート場だった場所で、その中に日用雑貨だったり、おもちゃだったり、とにかくいろんなものが安く売っている、今で言うなら「ドンキ」っぽい感じのヤツだった。
結構人気のイベント的なヤツで、土日の2日間をそこで働いた。
日給7000円。2日間で14000円。中学生には大金だ。

駐車場整理のアルバイトを終えた日曜の夜。
併設の事務所で、茶封筒に入った14000円を確認し、意気揚々と自転車にまたがり、その足でCDショップに走った。
当然、筋肉少女帯のCDを買うためだ。

狙っていた「筋少の大車輪」を持って、もう一枚ぐらい買えるな、と何にしようか物色していた時、見つけてしまったのが「筋少の大残酷(VHS)」だった。
「えぇーーー!この人たち、ホラー映画にも出てるのーー!!」
まだPV(プロモーションビデオ)なんて知らない人間である。

怖い・・・怖いけど、怖いの好きだし・・・しかも安いし・・・
というわけで、大車輪と大残酷を購入。
お金は余ってるけど、一気に買うと親に怪しまれるから少しずつ・・・

急いで帰って、早速「大車輪」をかけてみた。
厳かなピアノから始まる。今度は聴こえないからってボリュームあげるのはやめようと思った。
「大釈迦」これは一発目から「うぉぉぉ!!!カッコイイ!!!!」と思えた。自分はこういう静と動のギャップがある音楽が好きな傾向があると、後に気付くのですが、大釈迦はまさにその典型だった。

「筋少の大車輪」は、筋肉少女帯導入の足掛かりには持ってこいの作品だと今でも思う。まさにベストオブベスト。
曲の雰囲気、詩の世界観など、みな違うのだが、これが筋少ワールドなんだと思えば、なんともしっくりくるし、ひとつのテーマパークのような感じさえする。

後半に「元祖高木ブー伝説」が入っている。聴いてみて気付く。
「あ!!!俺、筋肉少女帯を知っている・・・以前から知っていた!!」
「高木ブーを歌にしちゃった人だ・・・いくらロックと言えど、これはマズいだろって思ってた人だちだ!」
そう、高木ブー伝説が話題になったことは、何かの雑誌かTVかラジオかで聴いたことはかすかに覚えていた。
点と点がつながっていく感覚に、妙に興奮したものだ。

そして「大残酷」のビデオテープを、おそるおそるデッキに入れてみた。
突如はじまるホラー映画(と、まだ思ってる)をビクビクしながら、かつ
「くるぞくるぞ」とワクワクで見ていた。
障子がパッカーンと開かれ、髪が逆立った人が少女を殴り殺すシーンに、
おもわずポーカンと見入っていたその瞬間、はじまった「釈迦」

あ!これ映画じゃないのか!!(そこかよ)
あれ?この曲「大釈迦」・・じゃないのか、なんか違うけどでもあの曲だよな。
自分にとっては、この「大釈迦」と「釈迦」の違いが、謎のままであることが逆に良かったのかもしれない。とにかく気になるのだ。
え、アレとは違うの?演奏してる人も違うの?とか。
情報があまりに無さすぎるため、その謎が解けないからこそ、引きずり込まれる、そんな感覚であった。

と同時に、筋肉少女帯という集まりを、映像で初めて見たのが「大残酷」。

歌ってる人は、この人なのか。このメガネかっこいいな。
よくクルクルまわす伊達メガネ売ってるコーナーに、このタイプのメガネあったよな、おじーちゃんがかけてそうなヤツ。
それを思い出し、商店街のダイエーの一角にあった、女子が集まりそうなピアスとか売ってる店先にあるメガネコーナーに行った。
あった。この黒縁メガネ。当時から1000円で売っていた。
初のメガネデビュー。

その数週間後、またCDを買うべくCDショップに行くと、今まであった旧作品のほかに、見慣れぬジャケットが表面を向いて陳列されてあった。
「エリーゼのために」と書かれたそれは、怖い人が睨んでいる。
おおおお!!これは、新譜というやつか!
むかしの作品を買うつもりで来たけど、せっかくだから新譜を買おう!と迷いもせずに「エリーゼのために」を購入。
どうやって知ったか記憶にないが、新譜を引っ提げてのライヴツアーがあることを知る。
初めての筋肉少女帯を生で観るチャンスが目の前にあることを知った。

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