暗黒面
厚労省の調査によると、うつ病などの精神疾患発症から6日以内に自殺をした人の数は、2012~17年度に労災認定された過労自殺者497人のうち半数を占めているということだ。
そんなネットニュースの記事を読んで思った。
あ~、自分あぶなかったんだなぁ。
これ、まんま自分のことだなぁ、と。
自殺の原因を細分化した中に、
「仕事内容、仕事量の大きな変化」があった。
自分がまさにこれだった。
業務処理を行うシステムの改変で、今まで正しく、しかも自動処理されていたものが機能しなくなり、全て人の手で処理を行わなければいけないような状態に陥った。
通常、自分たちの仕事というのは、その自動処理が例外的にできないものを処理するのが役目なのに、通常の処理もしなければいけないうえに、システム改変が間に合わないから手伝ってくれ、とか「素人に出来るわけねーだろ」案件まで背負わされた。
マジで限界。
正しくは、それをトラブルなくこなすことまでが限界値であり、つまり、トラブったら限界突破。溢れる。壊れる。
そう感じていたし、実際にそうなった。
うつ病を発症すると、人によって様々だが一定の症状が出るらしい。
会話が減る、睡眠障害、食欲不振、ほかにもたくさんあるし、人によっては出たり出なかったり。むしろその逆もあったりするので、それを家族や、上司や同僚が気付くことは、私個人の意見ではあるが、まずムリだと思う。
まず本人すら自覚症状がないんだから。
会話だって、そんな仕事中にベラベラ喋ったりしないし、睡眠障害って言っても、寝てる自分じゃ分からないし、ゲッソリ痩せ細るほど食べられなくなることもないし。
自分の場合は、症状というより考え方に変化が出たのが一番大きかったと思う。
電車で通勤していて、人身事故に遭遇すると
「朝からフザケんなよな!死ぬなら全部血を輸血して死ね!」とか「他人に迷惑かけて死んでんじゃねーぞ」と思っていた。
ところがである、
「はぁー、電車に飛び込むヤツの気持ち、なんか分かるわぁ・・・」
と考えている自分に気付いた瞬間、全身鳥肌がたった。
背中に寒いものを感じた。
あーーーこれ、ヤバイんじゃない?
そう思ってから注意深く自分の思考を、日々の生活のなかで観察した。
なんか以前と違う
以前は、攻撃的に反発していたが、なんだか急に「すべてを受け入れる」ような、一見して「むしろ心が広くなったんじゃね?」「オレ大人になったんじゃね?」みたいな感覚。
危険だ、とは思わなかった。
こんな小さな変化、他人が気付けるわけがない。
まして一般常識的に見ても、良い変化だ。
他人がそんな小さな変化を気にしてくれることなんかあり得ないと思う。
自分にだって気付けないことかもしれない。
うつ病は自覚症状がないまま進行していく。
過労による自殺者の半数以上が、精神科など疾患に関する医療機関を受診していないらしい。そりゃそうだわな。
自分が精神科を受診するなんて「あり得ない」と思ってる人がほとんどだと思うよ。自分もそうだったし。
自分の場合は、
「考え方の変化」でなんとなく気になり、
仕事中のミスが重なったことによりパンクして思考停止し、
数日休んでから会社に行こうとしたら電車に乗れない、目に見える拒否反応があったことで、ようやく受診しなければ、という流れである。
ハッキリ言って、運が良かっただけのこと。
あのまま、数日休んで仕事に復帰していたら、過労自殺者と同じ運命だったかもしれない。
うつ病って誰でもなりうるし、誰もが既にうつ病なのかもしれない。
そういう前提でいても良いのかもしれない。
そして精神科、メンタルクリニックなどは、もっと気軽に受診して良いことを認識してほしい。
案外「うつ病ですね」と診断されたほうが気が楽なのである。
そのほうが自分自身、納得できる場合もある。
納得すれば受け入れやすくもなる。
うつ病の回復の第一歩は、自分自身がまず受け入れる、認めることだと思う。そのスタートラインにすら立てないまま、暗黒面に引きずり込まれては抜け出せるものも抜け出せないのだ。
きっと、たぶんそうなんだろう。
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