とある職場について part 2
からの続きです.
# 理想を追い求める
X 医療センター病理部の病理診断のレベルはとても高いです.非常に細かい所見まで丁寧に取っていて,レポートの品質も高めです.専門医同士でのダブルチェックをしているため,プロが見ればすぐわかるくらいの品質です.
そうです,プロが見ればすぐわかるわけです.でも逆のことを言うと素人が見ても,たぶんよくわかりません.100% を完璧なレポートとし,60% を治療方針に深刻な影響を与えないレポートとするならば,90-95% くらいの品質を目指している状況です.でも素人目には少なくとも 80% を超えたレポートはおそらく違いがよくわからないでしょう.
また 50 代の病理医はそれぞれの専門分野で仕事をしてきているので,専門分野には詳しいです.言い方を変えればとても細かいです.そんな複数の専門家が揃っているので,わからないことがあってもすぐコンサルトできるのでとても便利です.
# そして消耗する
専門家はしばしばこだわりますし,そのこだわりが無くなったときが専門家として終わりという人もいます.でもその専門家に振り回される周りの人達は果たしてハッピーでしょうか.
若いレジデントの先生はとても消耗しています.診断症例を 1 例,1 例丁寧に「てにをは」から細かい背景所見まで逐一チェックされ,都度都度呼び出されて所見を訂正されます.丁寧に指導を受けられて羨ましいという先生もいるかもしれませんが,5 分毎に「ここはさー」と指摘を受けるのは精神衛生上良好とは決して言えません.
そのレジデントの先生の実力不足かと思う人もいるかもしれませんが,おそらくその先生は同世代の中で確実にトップクラスにいるくらいの優秀な先生です.いわんや,,,をや,です.
チェックする上司の先生たちも,細かくチェックしないといけない?ので,忙しく仕事をしており,消耗しています.お互いが高い品質を設定しており,それに囚われて,どうしてもリソースが減っていくのです.
# 肝腎の臨床医の評判はいまいち
さて,ここまで書くと,さぞかし臨床医はとても病理部のことを評価していると思いきや,いまいち評価はよくありません.なぜでしょうか.
一番の理由は,TAT (turn around time) が遅いからです.ダブルチェックで,少しでも所見に疑義があれば差し戻しをしています.するとどうなるかというと,平気で数日は診断が遅くなっています.大体生検は 1 週間程度で,検査センターと同程度か少し遅いです.
肝腎の診断の品質については,臨床医が一番知りたいのはどうやら癌か癌でないかということのようで,それ以外にはあまり興味が無いようです.実際に知り合いの臨床医に他の病院と比べて診断レポートはどう?と聞いてみてもうーん,すごいんじゃない?といった具合で,いまいちでした.
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