技師を甘やかすと仕事をしなくなる
ちょっとこれから変わった話をします。おそらく気分を害する人がいるかもしれません。まぁそう言うものなんだと思って聞いてみてください。
たまにこう言う声を聞きます。
技師を甘やかすと仕事をしなくなる。
おそらくこの声に対して共感を抱いている人は少なからずいるのではないでしょうか。またこういう声も稀ですが聞きます。
病理医を甘やかすと仕事をしなくなる。
どちらが正しいのかはわかりませんが、こういう声が聞こえると言うことはそういう意見を持っている人がいると言うことでしょう。
これはどどたん先生的には仕事に対する指向を反映した意見だと思っています。多くの臨床検査の学生と話をしていて、彼らから聞こえてくる声あるいは声なき声のほとんどは、
安定した職を見つけたい(結婚、出産した後でも続けられる仕事をしたい)
ということです。このこと自体を否定はしませんし、もちろんありだと思っています。しかしながら、このような考え方を持っていると、どうしても業務内容にも安定を求めてしまいがちです。
どこの病院とは言いませんが、新しいことを始めようという提案をすると「忙しくて無理です」とか「やったことないのでできません」とか言って嫌がる人が多いです。しまいには「それやる必要あるのですか?」という声まで聞こえてくるとこちらもめまいがしてしまいます。この手法だとこれこれがまずいので、良くないと考えるがどうか、といった提案であれば大歓迎ですが、多くは全く理解せずただ単にやりたくないオーラを出している、そんな感じです。
今臨床検査技師に対してとてもネガティブなことを言いましたが、このことはそっくりそのまま病理医にも当てはまります。
要するに向上心のない、安定を志向した病理医は甘やかすと仕事をしなくなります。これは単に学会に行くとか行かないとかそういう問題ではありません。仕事に対する姿勢の問題です。
ちなみにどういう病理医だと「甘やかすと仕事をしなくなる」と言われそうでしょうか。これも例外がたくさんあってはっきりと規定しにくいのですが、一つ非常に危険な存在がリタイヤあるいはセミリタイアした病理医です。
残念ながら昔と違って今は分子生物学の知識を中心とした、新しい知識がないと病理診断自体ができない時代になってきています。セミリタイアしたということは少なくとも知識の更新があまりなされないということにつながるわけで、ちょうど更新期限の切れたウイルス対策ソフトのようなものです。昔は大丈夫だったら多分大丈夫だって言えるでしょうか。
病理は外科や一部の内科と違ってほぼ完全に知識を切り売りする商売です。厳密には手技的な要素もありますが、それも手先の器用さがものを言うのではなくて、手技を行う上で必要な背景知識が頭に入っているかが重要です。それがないことには、いくら丁寧に切り刻んでもただのゴミな訳です。
もう一つは少し層を特定しにくいのですが、独り立ちすることを諦めたあるいは嫌がっている人です。諸事情でトップに立てない人はたくさんいるのですが、そう言う人を指しているのではありません。トップに立ちたがらず、常に誰かのところで二番目でいたいという人です。もちろんその人に費やすべきほかの重要なこと、例えば研究などがあればよいのでしょうか、それがないと職場で支持を得るのは難しいかもしれません。
稀にいる、「色々とたくさん仕事を覚えていろんなことに挑戦したい」という学生あるいは臨床検査技師はとても優秀ですし、スタートが優秀ではなくても、どんどん成長していきます。こういう人たちに対する支援を惜しんではいけないと常々自分に言い聞かせています。
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