細胞診は診断か否か part 1

# 細胞診とは

まず細胞診とはなにかという紹介からこの記事は始まります.病理検査には大きく組織診断,細胞診断,病理解剖という 3 本柱で成り立っていて,近頃は分子病理診断を別枠として扱う向きもあります.それはともかくとして,これまでずっとこの 3 本を軸にやってきたわけです.

時代が下るに連れて病理解剖は件数が減ってきました(いろいろな理由があるのですが,まずは医療技術が向上したために死後に解剖を行わなくても死因がわかるようになったことが大きいです).

それに比して組織診断,細胞診断は件数を大きく伸ばしました.20 年前の倍以上の件数,という病院も少なくないはずです.新しい器具も開発されたりしていく中で,従来できなかったところの検査が比較的容易にできるようになったのです.

組織診断については行うのはもっぱら病理医,医者です.細胞診断はというと,医者と臨床検査技師が協働して行っています.今回はこの細胞診断の制度のあり方にスポットを当てているわけです.

# 診断はだれがするもの?

もう少し背景を説明しましょう.そもそも病院で行われる診断って誰がするものでしょうか.答えは医者のみです.厳密に言うと医師国家試験に合格して医籍登録をした医師のみです.それ以外はできませんし,すると法律違反になります.

病理診断という領域は古くからあったにもかかわらず,診断ではなく検査の扱いを受けてきました.胃カメラを受けて,組織を一部採取されて,それを顕微鏡で観察して癌かどうなのかを見る検査.検査といえば検査ですがここを間違えるとこの先のすべて狂ってしまいます.治療方針に大きな影響を与えるようなこんな重要なものは責任のある立場の人がすべきで,病理医という人たちが行ってきました

じゃあなんで病理医たちは病理診断を検査として扱われることに反発しなかったのか.これは少し事情が複雑なのですが,昔は診断病理というのは研究の片手間にするものだという認識が強くて,病理医(病理学者と呼びましょうか)の業務の中からはかなり端っこに位置しています.

しかし,時代が下るに連れて,医療における病理診断の重要性が上がっていき,片手間でやるには少し厳しくなってきました.それとともに病理診断は医行為(医療行為で医師のみができることだということです)ということになりガラッと変わりました.

というわけでここでは病理診断は医行為で医師のみができるということを抑えておきましょう.これが問題を起こすことになるのです.

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