病理診断科における労働衛生 part 3

からの続きです.

# 自己研鑽と労働 ~ 目には見えない過労

通常は感染症などの問題をとりあえずべきだとは思いますが,少し視点を変えて,通常取り上げられにくい問題点について解説を加えてこの項を終わりにしたいと思います.

産婦人科や小児科などをはじめいわゆる激務の先生たちが多いのは重々承知していますし,病理と比べようと思っているわけではありません.そこは最初に言っておきます.

病理診断科が他の診療科と違うところは患者さんを抱えないところだと何度も言っていますが,これが裏目に出ることもあります.例えば臨床科であれば,わからない病気であったとしても,とりあえず前に進むことが求められ診断的治療と称して薬を投与することもあり得ます.

しかし病理だと,そういうことは許されがたいです.中途半端に時間があるために(例えば外来が2日後だったりする)調べだすとキリがありません.そのような症例を複数抱えていると,時間があるはずなのにいつも追われながら仕事をしているという構図が出来上がってしまいます.それも自己研鑽のためだから仕方ないと許容される雰囲気が,今病理にはあります.

# 中途半端で妥協をしてくれる人かどうかで QOL が 180 度変わる

まぁこの点については臨床科もさして変わらないかもしれませんが,上につく指導医がこの長時間労働になりやすい問題点をきちんと理解していない限り,病理の研修医はとても悲惨です.しかも指導医は自分が研修医はこのような指導法で受けてきたからと取り付く島もないことが多いです.

なのでどどたん先生が直接知っている病理の研修医の先生はほぼ全員標本を目の前にして苦しんでいます.夜中まで仕事をすることはざらにあるようですし,本業が忙しくてアルバイトをすることがあきらめた先生も知っています(大学なので収入は安いのに).実際どどたん先生もあまりにやることが多すぎて追いつかないことがって,家が徒歩 10 分の距離にあるにもかかわらず,きつすぎて病院で寝泊まりをしたことも少なからずあります.

# 変えられる環境は変えるべき

作業環境面ではまだまだ改善すべき点があるものの,近年では病理検査部門に対してスポットが当たることが少しずつ出てきました.ホルマリンの規制や(悪名高い??)ISO もありますが,基本的には我々の作業環境および健康に対してプラスに働いてくれるはずです.

しかしながら作業そのものについてはまだまだ改善といえるほどのものはないし,これからますます増える検体量に対してどのように対処していくのか,AI 技術をどのように支援として取り入れていくのかなどやるべきことはたくさんあるでしょう.

そして蜂先生もそうですし,どどたん先生もそうですが,この酷い環境の中病理を選んだ,自分たちよりも少しだけ若い先生たちにできる支援をしていきたいと思って日々活動しているところです(ちなみに三流病理医マニュアルシリーズもその一環です).

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