とある職場について part 1

♯ とある職場の話について〜プロローグ

この話はフィクションです。あらかじめ言っておきます.

これまで経験したいくつかの職場環境を織り交ぜて,かつ創作を加えています.とある職場環境 X を例に,職場とはどのようにすべきかを考えていきたいと思います.しばらくお付き合い下さい.この記事では病院,もっと具体的にいうと病理部を例にしていますが,物事の本質はそんなに変わらないと思います.

X 医療センターは 1000 床クラスの大学病院に匹敵するくらいのとても大きな病院です.ほぼ全ての診療科が揃っており,命だけは平等だ!(徳州会ではありませんが,苦笑)をスローガンに日々検査や手術,治療をこなしている比較的忙しい,大学病院と野戦病院をあわせたような病院です.

そこの病理部,病理診断科のお話です.最近は病院機能評価の関係で病理部という名称を辞めて病理診断科という診療科で呼ばれるようになって久しいですが,この X 医療センターでは古くからある病理部という名称も合わせて利用しています.ここでは医師だけではなく臨床検査技師なども含めた話なので,病理部で統一します.

# X 医療センター病理部は頭でっかち

X 医療センター病理部の医者は全部で 6 人で,臨床検査技師も 6 人という少しアンバランスな職場です.なぜかというと,まず医者不足だから来る者は拒まずでどんどん集められています.しかし,臨床検査技師は供給>需要の傾向があり,また医者と違ってそう簡単には辞めないことが多いので,どうしても採用自体,病院が許可をしてくれないことが多いです.そのため同人数という若干奇妙な構成になっています.

また医者の年齢構成が少し歪になっています.50 歳代の病理医が 3 人で,そのうちの一人が部長です.その下に 50 手前の先生が一人,さらにその下に若いレジデントの先生が 2 人という,比較的年齢差のある構成になっています.

これ,ある意味今の病理医の年齢構成の縮図に近いところがあります.病理業界では労働条件が極端に悪い時期があり,その時期に病理を志望する医者が極端に少なかったのです.なのである世代の病理医は極端に少ないと言われています.

# 医局長の憂鬱

50 手前の先生が医局長をしているのですが,その先生はいつも悩んでいます.業務の振り分けやいろいろな決定事項を押し付けられるのです.それはそれでまだ良いのですが,一番難しいのが,義務はあるのに権限がないということ.

もちろん上に立つ部長の指示は原則絶対です.しかし,医局長の決定に対して他の 50 代の病理医がアレヤコレヤと文句を言ってくるのです.そして彼らの主張というのはそれぞれ言っていることは正しいのですが,しばしばお互いに矛盾をしていて,どちらかを立てようとすると,どちらかの主張を否定するような方向に動いてしまうのです.

例えば,道路も右側通行,左側通行があり,日本は左側通行ですが,お隣韓国は逆です.どちらかいいかという議論をしてもしょうがないことが多いです.右側通行と左側通行を両立するとどうなるでしょうか?確実に事故を起こします.実際 X 医療センターではそのような事故と呼んでいいのかよくわからないような衝突が頻繁に起きています.

切り出しの順番も外科手術検体で,郭清リンパ節を先に切り出ししたほうがいいという先生とリンパ節は最後でいいという先生がいたりして,それぞれの先生が文句を言い合っています.

続きは


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