病理診断科における労働衛生 part 1

# 実は病院の中で病理は一番危険な場所

今回は病理診断科における労働衛生のお話です.我々は産業医学の講義で

作業管理
作業環境管理
健康管理

だと習います.どどたん先生は学生の頃は公衆衛生の試験はなく,レポートだけなのであまりまじめに覚えませんでしたが,試験に出すとすればこれは絶対的に外れない,原理原則に近いものです.

さて,病院の中で労働衛生に対する意識が最も低い場所でどこだと思いますか?もうタイトルに書いてあることを聞くのは野暮なことですが,どどたん先生は病理が一番危ないと思っています.理由は簡単で患者さんと接する機会が少ない上に数々の危険因子がそこにあるから.

患者さんと接する機会がないという点では放射線科もあり得ますが,放射線科の場合は主には被曝が問題となるに対して,病理の場合は感染症,刃物を扱うことからの切創や針刺し,有機溶剤などの暴露による中毒,もちろん(現実的にはほぼゼロですが)放射性同位元素を用いたセンチネルリンパ節の同定法による被曝など種々の危険な要因に囲まれて仕事をしているわけです.

# 安全に対する危機意識が病理は不足している

ここからは自戒の意味を込めて書いています.どどたん先生が最初臨床から病理に入ったときの光景を見てびっくりしました.生検体を処理する際に感染症があろうとなかろうと血が垂れ流しになっていたり,また針山のようなものを作って針をリサイクルして使っていたりしていました.

注射針をリサイクルするなど,現在の臨床医の観点からは頭がぶっ飛んでるとしかいいようのないくらいあり得ないことですから,最初めまいがしていました.まぁ慣れましたけど.

この様な作業を普通に白衣のままやっていたり,先生によっては私服のまま作業をしたりしていて,ここやべーなと正直思ってしまいました.

昔の病理の先生たちの話を聞いていると,「結核にかかってから一人前だといわれたんだよ」という話を聞くことがあって,これを聞いてもまためまいがしてしまいました.ちなみにどどたん先生は T spot (+) ですが.

# 産業医や感染対策委員会が入りずらい場所

なぜ病理部門の労働環境がこれまで改善しなかったかというと,種々の理由があると思われますが,やはり患者さんと直接接しない部門は後回しにされやすいこと,そして病理医自身が環境改善に声をあげなかったことが考えれます.

前者については,どうしてもしょうがない面があります.順序をつけようとすうと,患者さんから見えるところから改善するのは仕方がないところです.そして後者の理由もしかりで,病理診断を片手間にすることが多かった昔は当事者意識をもって声をあげる人が少なかったんだろうと推測されます.

そして最後に重要なこととして,これはどどたん先生がじかに感じていることですが,業務自体が他の臨床科と違って特殊性が強くて,口を出しにくい,ということがあります.要は病理診断の業務に精通している人あるいは関心をもつ人が少なくて改善につなげにくいのでは?と思っています.もっとも病理医の中には性格が悪くて色々難癖をつけてくる人が多いというのは秘密です.

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