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とある職場について part 3

からの続きです.

# 優秀な臨床検査技師たち

さて,ここで少し視点を移して臨床検査技師について見てみましょう.

X 医療センター病理部の臨床検査技師はとても優秀です.県内でも講習会で講師を務めるくらい,教育熱心です.他の施設からあー,〇〇さんがいる病院ですか!というくらいによく言われます.

# 外の教育と内の教育の温度差

病理組織や細胞診の講習会では講師を務める彼らもなぜか部内の新人に対する教育については消極的です.正直良くわかりません.講習会に対するモチベーションの数 % でも若い技師に対して割いてあげると全然違うんだけどなぁと思っているのですが,どうやら外での教育と内での教育というのは違うみたいです.

だから若い臨床検査技師たちは基本的に自力で勉強しています.もちろん上司たちは聞けばいろいろと教えてくれますが,基本的に自力で勉強するわけです.本当の初心者というのは何を勉強していいかわからないわけで,そこから教えてあげないと soft landing できないと思うのですが.

特に細胞診なんかは悲惨です.サイトスクリーナーの試験問題を見たことある人ならわかると思いますが,検査技師の学校を卒業して解ける問題ではありません.受験するための予備校があるくらいですから,それを自力で勉強している X 医療センターの臨床検査技師たちには頭が下がる思いです.

# 標本の品質よりも手順を重視

X 医療センター病理部では数年前に検査部とともに ISO を取得しており,そろそろ更新をひかえています.ISO は手順というものをとても重視しています.その影響か,X 医療センターの臨床検査技師も取り間違えをしないような手順をとても重視しています.

そのためか,数年前からかけるリソースが手順の遵守に向かってしまい,肝腎の標本の質が低下しています.もちろんある程度のところはキープしているのですが,病理医にとって見やすい,あるいはかゆいところに手が届く,とは言い難い状況です.

もっというと,トラブルが起こるたびに手順を増やしているため,あまりに複雑になってしまい,手順を勝手に省略してしまうという事象が起こって,例えば検体紛失などのトラブルも起こってしまうということもあります.

# 医師の指示を聞かない臨床検査技師

X 医療センターの病理部の臨床検査技師たちは自分たちの仕事に誇りを持っています.自分たちの仕事は臨床医にとって必要であり,病理医にとってもかけがえのないパートナーだと思っています.そして標本作製や細胞診のスクリーニングは専門性の高い仕事だと思っています.

そして X 医療センター病理部の部長は院内政治に熱心で,部内のことについては消極的です.すると残りの 50 代の二人の先生がいがみ合ってしまい,下の先生たちは翻弄されてしまうわけです(もちろん臨床検査技師たちも翻弄とされています).すると,どういう状況になるのか.

例えば,若いレジデントの先生がこれをしてほしいといいます.すると,彼らは無理です,といいます.しかし,部長が同じことをお願いするとすんなり聞いてすぐに取り掛かります.要するに相手によって対応に差をつけてしまうのです.

病理医の統率が取れていない状況下では,誰かの言うことを聞いていると,他の先生から批判が来る可能性があるため,状況の制約の結果として,部長の意見さえ聞いていればよいという結論になります.よって臨床検査技師は(部内運営に興味のない)部長の方を向いて仕事をしていれば楽で,他の意見は「病理医たちで意見をまとめてから我々に伝えるか,部長を通して意見をしてください」といって蹴散らしています.

若いレジデントの先生たちとしては,どんな意見を表明しても確実に反論されてボコボコにされるので,意見をすること自体をもう諦めています.

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