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「全身をバランス良く鍛えろ」の真相

「全身をバランス良く鍛えろ」

私はこれまで何回もこの決まり文句を見聞きしました。

「全身をバランスよく鍛える」という言葉はとても便利に使われている気がします。

こういった人に、「なんでバランス良く鍛える必要があるのですか?」と聞いてまともな答えが返ってこないこともあるでしょう。

バランス良くは筋トレに限らず言われるので、バランス良くというと正しい事を言った気になれるのもあるかもしれません。

大体の人が、左右のバランスが崩れると怪我に繋がる(またはパフォーマンスが落ちる)って答えると思います。

まあ、これはこれで間違ってはいないですが、これ以外にもあります。

中にはバランスが悪くても良いパフォーマンスを発揮している人はいますし、そもそも人間の体は左右のバランスが崩れるように出来てますので、バランスは崩れて当たり前なのです。

確かにバランスが崩れ過ぎるとパフォーマンス低下や怪我のリスクは上がりやすくなりますので、崩れすぎないように整えることは大事ではあります。

結論を言えば、バランス良く鍛えることは正しいのですが、その理由をしっかり理解している方がトレーニングに対する考え方が良い方向に変わっていくと思います。

バランスよく鍛える理由は3つあります。

①全面性の原則
トレーニングには原理原則が存在します。過負荷の原理、意識性の原則など、ググれば出てきますが、様々な原理原則があります。全面性の原則はその中の1つです。全面性の原則を教科書的に説明すると、「バランス良く全身を鍛えることが大事ですよ〜」というものです。理由としては、バランスが崩れると怪我に繋がるからと説明されています。

冒頭でも述べましたが、この考え方は別に間違ってはいないですが、これだけだと足りないです。

これと同様に大事なことを忘れがちです。それは、全身を鍛えることが筋力アップには1番効率が良いということです。というのは、例を挙げると、上半身のトレーニングが下半身の筋力アップに繋がるといったようなものです。

筋力を発揮するためには、神経の指令が不可欠です。例えば、最大筋力トレーニングを下半身で行なっているとします。そうすると、神経は出来るだけ多くの筋繊維を動員しようと機能します。これが上半身の筋力アップにも繋がるのです。なぜなら、上半身の筋力発揮の時にも、多くの筋繊維を動員させようという指令が出るようになるのです。

つまり、下半身も上半身も一緒にトレーニングすることで、相乗効果が得られるのです。

ピッチャーは下半身だけ鍛えれば良いという風潮があったりしますが、それだと非効率ということになります。下半身が大事だという考えは十分理解できますが、だからといって下半身だけを鍛えるのは効率的ではありません。上半身の筋トレでも下半身の筋力アップに良い影響を与えるのですから。

一応、注意ですが、「(↑ってことは、)下半身だけ鍛えても上半身の筋力アップ出来るやん」って考え方は間違ってます笑。相乗効果ですので、どちらもやらないとその効果は発揮されません。

②右を鍛えると左も鍛えられる

https://www.rehabilimemo.com/entry/2018/06/14/141744

まずはこちらをご覧下さい。

右を鍛えると左の筋力も上がっているという内容がありましたね。

神経学的に考えると当たり前のことなのですが、左右どちらもやることで、筋肉のセンサーとなる固有感覚器官が鍛えられるのです。別の記事でも出てきた言葉ですね。左右どちらもやることで神経伝達の正確性が上がるのです。

ダルビッシュさんが左で投球練習しているのはかなり有名な話です。本人がどういう目的で行っているかは分かりませんが、あの練習の効果の1つには、この固有感覚器官の機能アップであると考えられます。

私は、高校1年生の時に全治1カ月の肩の故障をして際に、左投げの練習をしていました。左投げは小6からやっていることなんですが、この時は右では投げられなかったので、とにかく左で投げてました。固有感覚器官なんて知ってるはずもなく、ただ単純に楽しかったので遊んでいただけでしたが笑。

そして、肩が治った後の復帰戦でなんと球速が3km/hアップしました。

たった1ヶ月ですよ。この間は正直何もしてません。ウエイトトレーニングとかも特にしてません。とにかく安静と言われたので、ストレッチとローテーターカフのトレーニングぐらいしかしてません。

左投げの練習だけが影響しているとは思いませんが、1つの要因となったんだと思います。正直な話、練習量が減ったから疲労が取れただけな気もしますが笑。それでもこの後は上がった球速が元に戻るようなことはなかったので、左投げの効果は本当にあったのかもしれません。

左右で得意不得意があるのは当然なのですが、出来なくてもとにかく動かしてあげるかとが大事になります。神経伝達が良くなっていけば、不得意な方がだんだんと様になります。

そして、これは私の考えですが、この左右の話は筋力だけではなく柔軟性にも同様の事が言えると考えています。例えば、左のハムストリングが柔らかくなると右のハムストリングも柔らかくなるというものです。とても信じ難い話ではありますが、神経学的に考えるとこれも当たり前のことなんです。(左右どちらもストレッチ等をしているのが前提ではあります)

これは知り合いの整体師の方に聞いた話ですが、右の棘上筋が固まっている人に対して、左の棘上筋を緩めると、右の棘上筋がすこし緩むという話を聞きました。こういった話からも左右の筋肉の質に対しても同様のことが言えるのではないのでしょうか。

③どこかが弱いと他の部分で代償してしまう
いわゆる代償動作ってやつですね。ある動作をするときに、本来その動作を担うべき部分の筋力や可動域が弱いがために、強い力を発揮できる(または余力が残っている)筋肉群にその動作を代わりにやって貰うというものです。投球動作でいうと、胸の張りですね。この胸の張りは胸椎の伸展動作によるものなのですが、この胸椎伸展可動域が狭いと、腰椎伸展や肩関節の過外旋でその可動域を補おうとします。こうなると、あとは時間の問題です。怪我に繋がります。腰椎はそもそもそんなに動かない部分ですし、肩の過外旋というのは、脱臼に近い形です。要するに、本来動いてはいけない可動域まで使ってしまうことで怪我に繋がるのです。
特に投球動作は全身運動です。全ての筋肉を動員させてボールを投げるという動作を行っているのです。発揮されるパワーが大きい筋肉、小さい筋肉とありますが、どちらも大事です。使えていない(弱い)筋肉があるとまず最大限のパフォーマンス発揮は出来ません。場合によっては怪我に繋がります。
一番分かりやすいのは、足裏の機能だと思います。足裏の機能が落ちている人はかなり多いと思います。ここを改善するだけで、かなりパフォーマンス力が変わってきます。

長々と書きましたが、

この話を簡単にまとめてしまえば、

色々な動作をやってください

ってことです。

色々な動作をやることで、筋肉のセンサーが高まっていきます。

筋肉のセンサー=固有感覚器官です。

このセンサーの機能を上げていけば、パフォーマンスは上がっていきます。

これに関しては必ずです。固有感覚器官の機能が上がれば必ずパフォーマンスは上がります。






少し話が逸れますが、肩のインナーエクササイズを投げ手側しかやらない人が多いですが、今回紹介した理由抜きで考えても勿体無いです。グラブ側の肩甲骨の動きは投球の中でも重要な役割を担っています。グラブ側も一緒にトレーニングしましょう。


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