見出し画像

新規事業立ち上げのプロに『良い事業アイデアの出し方』を聞いてみた

ドコモグループの事業創出プログラム「docomo STARTUP」の一環として、4/22にゲスト講演が開催されました。
今回は数々の企業における新規事業立ち上げを実現、新規事業立ち上げのプロである株式会社CINCAさんに新規事業創出における落とし穴について講演いただきました!

株式会社CINCA
新規事業の0から1の段階に特化して支援。
主にアイデア創出、事業検証、事業構築を担い、事業が立ち上がるタイミングで、クライアント様へ事業の引き継ぎを実施。
自社の新規事業室のように、コストとリスクを最小化しつつ、事業立ち上げを行う。



新規事業開発の全体像

「事業アイデアの出し方」というテーマですが、まずは新規事業の全体像についてお話します。
新規事業開発は天才的なビジネスを作ることではありません。
どんなに素晴らしいアイデアでも、7割以上が失敗する、というデータもあります。
そのため、事業の重要なリスクから検証して、不確実性を下げながら正解にたどり着くことが新規事業開発であると一般的に言われています。

重要なリスクとはなにか

新規事業のリスクはリーンキャンバスに沿って大きく9つに分類できます。
その中でも特に失敗しやすいリスクが5つあります。

  1. 顧客が存在するか

  2. 重要な課題があるか

  3. 提供価値が合っているか

  4. プロダクトを作れるか

  5. 顧客にリーチする手段があるか

これらのリスクを検証する順番にはセオリーがあり、フィットジャーニーと呼ばれています。フィットジャーニーでは、以下の順でリスクを検証します。

  1. CPF(Customer Problem Fit)→誰が、どんな課題を持っているか

  2. PSF(Problem Solution Fit)→課題の解決策が合っているか

  3. SPF(Solution Product Fit)→解決策は実現できるか

  4. PMF(Product Market Fit)→プロダクトを顧客に届けられるか

フィットジャーニーはあくまでセオリーなので、この順番にならないこともあります。例えば、「顧客が確実に欲しがるが作ることが難しいプロダクト」であればSPFが最初のフェーズになります。

どのくらの期間でリスク検証をするか

ここまでの話はいわゆるスタートアップの教科書的な内容です。
では、実際我々はどのくらいの期間で事業検証するかというと、
CPFとPSFは一緒に実施することで期間を圧縮して、約3ヶ月程度。
SPFはMVPを作るので半年程度です。
はやく失敗しながら細かくピボットしていくことが重要となります。
ピボットせずに成功する事業はほとんど見ません。


失敗しやすい事業アイデアの発想方法

企業内の新規事業コンテストに携わらせていただく中で、審査で落ちる事業アイデアの発想法には特徴があると気づきました。それが以下です。

1、よくある経験からの発想

誰もが抱える課題から発想したアイデアは、だいたいの場合、解決策が実現できない、ニーズがないということがほとんどです。
自分より優秀な人は世界にはたくさん存在し、その人たちが解決できなかったということです。

2、社会的意義だけの発想

社会的意義を達成する、ということだけに焦点を置き、顧客が欲しいものを考えることができていないことが多いです。
社会的意義のある事業案は人気のため、1、とおなじく解決できる仕組みが存在しない、需要がないことも考えられます。

3、よく聞く課題をリサーチせずに発想

ニュースでよく耳にする課題は、視聴者や閲覧者の目をひくように、キャッチーにデフォルメされています。
例えば孤独な高齢者がいるという課題がニュースで発信されていたとしても、その高齢者が誰でもいいから話相手を探している、というわけではありません。
本当の課題は、孫と話したい、という可能性もあります。

4、アイデアを出す前に会社から求められる条件はなにかを把握していない

①ハイリスク、急成長=今後社会トレンドになる領域(Web3、AI、宇宙など)
②ローリスク、堅実成長=自社のアセットを活用できる領域、顧客リストの活用、既存サービスの活用

①、②どちらのアイデアを求められているのかを把握しておきましょう。


おすすめの事業アイデア発想方法

理想的には市場トレンドに沿っていて、自身や自社のアセットが活用できる事業アイデアが良いです。
そういった事業アイデアを発想するために、内部環境と外部環境の両端から発想する方法を紹介します。

内部環境とは

内部環境とは、自身にしかない経験や、自社のアセットなどです。
自身にしかない経験からの発想 いわゆる原体験ベースのアイデア発想ですが、重要なのは、原体験というよりも、一般的に知られていない情報であり、原体験であれば良いというわけでないです。

自社のアセットからの発想

自社のアセットからアイデアを発想する場合は、社内で有効活用できていなアセットはなにかを考えることがおすすめです。
本当に使えるアセットは既存事業部が有効活用しきっているので、重要なのは余っているアセット、使われていないアセットで有効活用できるものがないかという視点です。

外部環境とは

外部環境とは、市場のトレンドや成功事例などです。

市場トレンドからの発想

トレンドのキャッチアップ方法は多々ありますが、効率の良い方法として政策一覧をみることがおすすめです。
国の政策と一致した事業は行政からの後押しもあり伸びやすいです。
過去の事例ですと、ふるさと納税や脱炭素、外国人労働者の受け入れ、リモートワーク推進などが挙げられます。

成功事例からの発想

一番おすすめの発想法として、成功している事業のリサーチが挙げられます。
成功している事業=すべてのリスクを検証済み、ということになります。
事業が成功しているかの判断は、資金調達のフェーズがシリーズAに到達しているかで推測することで可能です。
crunch baseなどを使い、例えば、2021年以降創業、2022年以降にシリーズAまで成長している事業を検索することで、ここ数年で急成長しており、PMFフェーズに到達している事業を洗い出すことができます。


事業アイデアのセルフチェック方法

アイデアを出したあとに以下のセルフチェックを行ってください。
審査で落ちる事業アイデアは以下の項目のいずれかに当てはまる場合がほとんどです。

1、顧客数が少なすぎないか

SOM(事業が実際にアプローチできる顧客の市場規模)が最低でも10億になるような事業アイデアが求められています。
見せかけのTAM、SAMを算出するのではなく、可能な限りのエビデンスを用意してください。

2、顧客像が複数になっていないか

市場規模を大きく見せるために、AさんにもBさんにも使えるなど、顧客像が複数になっていないかを確認してください。 絶対にプロダクトを購入する顧客の共通項をまとめてください。

3、顧客がお金を支払う人になっているか

顧客とはお金を支払う人のことで、お金を支払う人の目線でどのようなメリットがあるか、顧客の課題にアプローチできているのか確認してください。

4、都合の良い顧客像になっていないか

例えば「●●に興味がある顧客」などといった、都合の良い顧客はいません。良い顧客像は実際の行動が伴っている顧客です。
例えば、〜〜にお金を支払っている、〜〜を月3回以上している等が挙げられます。

5、課題がお金を払うほど重要な課題なのか

本当に重要な課題であれば、現在お金を払っているか、代替行動があります。特に何も行動していなければ、我慢できるレベルの課題の可能性が高いです。

6、代替手段に不満があるのか

代替手段がある場合に、大きな不満がないかぎり、
わざわざ新規のサービスなどへ乗り換えません。

7、ビジネスモデルが複雑になっていないか

事業立ち上げの初期から関係者を増やすと、その分不確実性が増します。例えば協業前提にしたビジネスなどです。協業ではなく受発注などの主従関係が明確な関係にしましょう。

8、課題と解決策がマッチしているか

例えば「虫歯になりたくない」人に対して、「歯医者のレコメンド」といったサービスは課題と解決策がマッチしていません。面倒な仕事に目を向けて、顧客が一番求める解決策にしましょう。

9、なんでもできるプロダクトになっていないか

なんでもできるプロダクトは、課題を絞りこめていないと判断されます。
ユーザ目線でも、なんでもできるは記憶に残りません。一番の提供価値をシャープにしましょう。

10、価格が安いことが優位性になっていないか

価格が安い理由が明確にあれば良いですが、単に利益率を下げて価格を安くすることによる優位性は、競合もすぐに追随できるため優位性とは言えません。


以上が今回の講演内容となります。
アイデア発想法から、アイデアのセルフチェックのポイントなど、今日からでも使える実践的なお話をしていただきました。
これから事業創出に挑戦する人はもちろん、いま新規事業立ち上げで行き詰まっている人にも、立ち返ることができる、為になるような講演内容だったなと思います。

docomo STARTUP運営者コメント

docomo STARTUPについて

「docomo STARTUP」は、ドコモグループ社員の皆様のアイデアを事業化するためのプログラムです。不確実性の高い領域に対し、スタートアップで用いられる「リーン・スタートアップ」の手法をベースに、アイデアの検証を行い、事業化を目指します。
新規事業の成功確率は1000分の3(センミツ)と言われており、検証を進める中で事業化を断念・撤退することの方が多いですが、同時にチャレンジしなければ成功もあり得ません。「docomo STARTUP」では、事業化にこだわりながら、チャレンジする人を最大限応援します。

3つのフェーズで構成される「docomo STARTUP」


「docomo STARTUP」は、新規事業のスキル・マインドを学ぶ「COLLEGE」、新規事業のアイデアを応募するコンテスト「CHALLENGE」、事業化の可能性が確認できた事業アイデアを育てていく「GROWTH」の3つで構成されます。
2024年度は「CHALLENGE」からプログラムを開始します。
現在の部署や業務に関係なく、0→1の新規事業創出に挑戦したい人、持っているアイデアで新規事業を創出したい人等、熱い想いをもった方々のご応募をお待ちしております。

【ドコモグループ社員のみなさまへ】

docomo STARTUP CHALLENGE(新規事業創出コンテスト)へ挑戦しませんか?

現在の部署や業務に関係なく、0→1の新規事業創出に挑戦したい人、持っているアイデアで新規事業を創出したい人等、熱い想いをもった方々のご応募をお待ちしております。

エントリーは2024年5月13日まで!
応募詳細など「docomo STARTUP」に関する情報はHP、SNSおよび社内報等にて発信しております。

docomo STARTUPについてさらに知りたい方は!

ぜひこちらもご覧ください。
◆docomo STARTUP公式HP

◆docomo STARTUP公式X(Twitter)

◆docomo STARTUP公式Facebook

◆docomo STARTUP公式Note
https://note.com/docomo_startup

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?