見出し画像

企業の内部留保は増えてるのに早期退職募集が増えてるってどういうこと!?

どーも、中小企業診断士の「どばしんだんし」です。

本日は企業の内部留保は増えてるのに早期退職募集が増えているというテーマを考察していきます。

はじめに;2つのデータ

財務省は10月30日以下の様な統計結果を発表しております。

財務省が30日発表した2019年度の法人企業統計は、企業が蓄えた内部留保に当たる利益剰余金が前年度比2.6%増の475兆161億円となり、8年連続で過去最高を更新した。消費税増税や新型コロナウイルス感染拡大による景気の先行き不透明感を背景に、企業が投資を抑制し、内部留保が一段と積み上がった。

※出所記事はコチラ↓↓↓

かたや一方で10月30日、東京商工リサーチ社からこの様なニュースが発表されました。

 2020年10月29日までに上場企業の早期・希望退職者募集が72社に達した。2019年通年(35件)の2倍増と急増し、年間で募集企業が70社を超えたのは2010年(85社)以来、10年ぶり。
 募集人数も、判明分だけで1万4095人を数え、2019年通年(1万1351人)をすでに上回った。
 新型コロナウイルス感染拡大が直撃した繊維・アパレル関連に加え、外食が短期間で急増し、業種による偏りが広がっている。また、直近四半期を含め、赤字転落から人員削減に動いた企業は54社(構成比75.0%)で、「赤字リストラ」が再び増加している。

※出所記事はコチラ↓↓↓

内部留保に関しては2019年度末(2020年3月末)でコロナの影響が本格的に出始める前の業績かもしれませんが、企業の内部留保が増えているニュースと、

コロナの影響からか業績が悪くなって早期退職を募る企業が増えているというニュース、

というデータが同時期に発表されたわけです。

上記の2つのニュースだけを見ると

利益を溜め込むだけ溜め込んでおいて
ちょっとでも業績が悪くなったら人材を切り捨てようとする大企業

という印象を受けてしまう方もいらっしゃるかもしれません。

実際中小企業の経営者の方々とお話しすると

「大企業ばかり儲けてウチみたいな中小は儲からないよ」

と仰られる方も少なくありません。

しかし果たして

①今回の2つのニュースは関連があるのか?

②大企業と中小企業の利益は相反するのか?

について考察していきます。

①今回の2つのニュースは関連があるのか?

結論から言いますと「内部留保が増えている」ニュースと「早期退職が増加している」ニュースは関連性が低いと思われます。

何故かというと

・内部留保が多い=キャッシュリッチとは言えない

・大企業が求める人材が変わった

ことが挙げられます。

それぞれ解説していきます。

内部留保が多い=キャッシュリッチとは言えない

「内部留保が多い=キャッシュリッチとは言えない」とは

内部留保の多さと手持ちの現金は全く関係ないということです。

そもそも内部留保は利益剰余金ともいわれ、企業活動を通じて得られた利益から税金や配当、役員賞与などを差し引いた残りを指します。

内部留保(利益剰余金)が増えているといことは株主への配当などを行っても尚利益が残っているということで、

逆に赤字が続けばその分内部留保(利益剰余金)もどんどん減少していき最終的には企業活動は出来なくなってしまいます。

いわゆる倒産です。

つまり、今まで会社が存続しているということは

時に赤字があったかもしれませんが、基本的には健全な企業活動を通じて毎期利益を上げてきたからであって、

自然と内部留保(利益余剰金)は増える結果になります。

そして、内部留保(利益剰余金) が多い=  現金がある

と勘違いしている方がけっこういらっしゃるのですが

内部留保(利益余剰金)がそのまま現金で残っていることはまずありません。

内部留保(利益剰余金)は企業がこれまでの何年、何十年、下手をしたら何百年という歴史をかけて積み上げてきた数字であって、仮に今年でた利益は現金でとっておくのではなく次の企業活動に使われています。

ましてや大企業(上場企業)であれば株主への説明責任もありますのでいたずらに現金を貯め込んで効率的に運用できなければ経営上の問題にもなりかねません。

以上のことから内部留保(利益剰余金)が多いからといって現金が多いとは限らないので景気が悪くなったからといって余剰な人員を雇い続けることができるかというとそうでもないということが言えます。

大企業が求める人材が変わった

「大企業が求める人材が変わった」とは

これまで大企業では「社内調整力」を持った人材が重宝されてきました。

「社内調整力」はその企業に長く勤め様々な部署を経験し社内に顔が効くことが重要で、生え抜きで社歴が長く、業績よりも周囲との調和をとれる人物が持ちあわせる能力でした。

しかしこの能力には

・社外では何の価値もない

・スピーディーで合理的な意思決定をする上で役に立ちにくい

といった大きな弱点もあります。

大企業が求める人材が「社内調整力」からスピーディーで合理的な意思決定に対応できる「適応力」に変わったことで

社内に長く残っている人の優位性が薄れたことが大企業が早期退職を増やしている本質的な原因だということです。

実際に早期退職というと60代や50代という企業がこれまでは多かったのですが、最近は40歳からという企業も増えの、対象年齢もどんどん若年化しております。

画像1

<出所;東京商工リサーチ、主な上場企業 希望・早期退職者募集状況(2020年8月13日付け)>

この傾向はコロナが始まる前から始まっていましたので

コロナはあくまで一旦であって

根本的には「企業が求める人材が変わった」ことが本質だと思います。

②大企業と中小企業の利益は相反するのか?

結論から申しますと大企業と中小企業の利益は相反するよりはむしろ連動します。

画像2

<出所;2020年版中小企業白書>

例えば建設業や製造業の様な下請け構造が出来上がっている業界では当てはまることもあるかもしれませんが、基本的には上のグラフのように大企業と中小企業の利益率は相反せず連動しています。

ただ、大企業が中小企業に比べて利益率が2倍ほど高いので不公平感はあるかもしれせん💦

では何故これだけ利益率に差があるのでしょうか?

理由としては

・大企業の方が規模の経済が働きやすい

・大企業の方が業務効率化に積極的

などの理由もあると思いますが、

1番の理由は

商品やサービスがコモディティ化している

ことだと私は考えます。

コモディティ化とはどこにでもあって差別化できていないということで、

そうなると結局値段の叩き合いでしか差がつけられないので結果的に利益が削られます。

海外に仕事を取られたという中小企業の恨み節を効くこともありますが、これも商品やサービスが差別化できていれば大半が解決できる問題です。

更に付け加えると上記の「大企業が求める人材が変わった」ことも

人材のコモディティ化

が進んだことが関連すると思います。

大企業、中小企業という枠組みは別として、

人、物、サービスのコモディティ化をいかに解消していくかが今後の企業活動の重要なファクターになるのではないでしょうか。

まとめ

「内部留保が増えている」ニュースと「早期退職が増加している」ニュースについてその関連性や「大企業と中小企業の利益は相反するか」について考察して参りましたが、結論をまとめますと以下になります。

・内部留保が増えたからといって現金がたくさんあるは勘違い

・事業を継続していれば内部留保が増えていくのは当然の結果

・大企業が求める人材が「社内調整力」から「変化への対応力」に変わった

・人、物、サービスのコモディティ化を解消することが直近の経営課題

参考書籍

「コモディティ化」についてその内容や対処方法などをわかりやすく書いてある書籍として瀧本哲史さんの『僕は君たちに武器を配りたい』を参考にさせて頂きました。

もしよろしければご一読下さい↓↓↓

最後に

本日は内部留保と早期退職のデータをもとに色々と考察してみました。

私自身もニュースなどパッと見の印象だけで判断してしまったり、

安易に因果関係をこじつけてしまったりということで

間違った選択をしてしまい反省する日が多々あります💦

不惑の歳に入ったはずなのに迷ってばかりです笑笑

イメージだけに囚われず、物事の真相や本質に目を向けられることを目指し日々精進して参ります

最後までお読み頂きありがとうございました。

本日は以上になります。(了)





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?