運命共同体

今日、彼女を食べた。人間はザクロの味がするなんてことをテレビで見たのを思い出しながら、食べた。酸っぱくて、あまり美味しいとは言えない肉。かたい肉。血抜きをして、ちゃんと彼女の肉を叩いたんだ。でもかたかったな。

彼女を殺した時は泣き叫んでいたよ。俺は貴重な水分が目から流れ落ちるのが恨めしくて、舐めとった。あの子の涙も、僕の細胞の一部になるんだ。

ああ、とても心地いい。今 彼女の声が聞こえてくる。食べてくれてありがとう、ずっと一緒だよ。そんな声が。

彼女全てを食べるのには苦労した。肉と骨を皮を剥がしてさ。骨は砕いて、薄くして、んで、粉状にして、おせんべいみたいにして食べた。

皮膚は肉と合わせて何かできないかと思って、何個か案を思いついたんだけど……彼女が餃子を食べたいって言った気がするから、皮膚とひき肉で餃子にするんだ。

やっぱり餃子のひだを作るのは難しいね。彼女にすごい怒られちゃってさ。

「私の体を無駄にしないで!」

そんな感じで怒られたんだよ。うん。きっとそうだよ。

脳みそはどうしたのかって?ああ……脳みそってさ、「みそ」って言うもんだから、溶けるのかな?って思ったんだよね。

でも、全然溶けなくてさ(笑)

お腹の中の彼女もクスクスと笑ってた。最初は味噌汁にしようと思ったんだけど、無理そう。

白子っぽいじゃん?脳みそって。だから、ポン酢をかけて食べたんだ。通だと思わない?

味はなんだろうな、結構クセがあって苦い。やっぱり彼女は苦労してきたんだろうなって。そんな味だった。苦しい思い出がいっぱいなのかなぁ。

あ、脳漿?よくそんなの知ってるね。脳みそ食べる時、ワインっぽくグラスに注いで飲んだよ。なんか脳漿って変な味。なんだろうな、あんまり味がしないんだ。でも、とても悲しい味だった。

彼女と一緒にいたくて、食べた。細胞まで同化したかった。
でも聞いたところによると、体の細胞は半年後には全て変わるらしい。だから、半年後には死のうと思う。

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