見出し画像

今「Fujin」に起きている事

このような事態になってしまったことが心苦しい。

ファンコットにおける定番フレーズに、「Fujin」というものがある。
「Fujin」という言葉を耳にしただけで、
ファンコッターは「ああ、あのメロディだね!」とすかさず反応する。
それほどにファンコットシーンに定着し、親しまれていたのだ。

このFujinに対して、これまでに無いほど繊細な問題が発生した。
Fujinを含む楽曲を選曲するとこを自重してしまうDJや、
Fujinを選曲したことを反省するDJが出てきてしまっているのだ。

なぜなら、このFujinのネタ元について、
2022年2月に発生してしまった、あの軍事侵攻と
少なからず関わっているからだ。

私はこの記事を書こうか書くまいか、そして発表するかどうか、悩んだ。
決して楽しい話題ではないし、様々な立場での意見がある話題だと感じているからだ。
出来ることならこのようなことは私自身も、本来なら書きたくはなかった。

しかし、いちファンコットを愛する人間として、
なにより「大日本ティッケー軍」という 傍から見たら物騒で不謹慎なサークル名を名乗っている者として、
筆者はこの件に関する立場を明らかにしなければならないと思ったのだ。

勝手な願いではあるが、本稿を通してそのような思いを少しでも汲み取って頂けると幸いである。

1.ファンコットにおける「Fujin」

まずは「Fujin」とはなんだ?という人に向けた説明をしたい。
……そもそもこのnoteにたどり着く時点で 相当なファンコッターであろうとは思うので説明不要な気がするが、念の為。

まずは、下記リンクに掲載されている[School of Funkot mix 2012]というmixtapeを聴いてほしい。

このDJmixを聴いてまず最初に流れる4小節のメロディこそが
ファンコッターの間で「Fujin」と呼ばれているメロディである。

このシンプルながら楽しげ(短調だが)なメロディが、インドネシア人の琴線に触れたのか、
このメロディが引用されたリミックスが無数に存在する。

YouTubeで「fujin funkot」と検索すれば、
いつ誰が製作したかも定かではないトラックが無数に出てくる。

そして、ファンコット特有の
「楽曲の途中で全然関係ない曲のフレーズが流れる」文化により、
何の関連性もないトラックで突如このメロディが流れることもしばしばある。

「なぜ?」と言われても説明ができない、良いものだと思っているから取り入れているのである。多分。

2.「Fujin」の正体

ところが、このファンコットで頻出する「Fujin」というメロディについて、
少なくとも、日本にファンコットが上陸した2009年から、2013年まで、元ネタが不明だった。

当時とある方がインドネシアのDJに質問をしたところ、
「FujinはFujinだよ!」という回答をもらった、という話を聞いたことがある。(※記憶を頼りに書いている為事実と相違があるかもしれません)

そんな最中、時に2013年5月。とあるファンコットDJが、ひとつの発表をした。

「Fujinの元ネタは ロシアのТакого как Путин という曲である」

……ロシア由来だった。

日本のファンコッターは「Fujin」という響きから
「風神」みたいな和風なものを予測していた人が多かったらしいのだが、
和風どころかロシア発のメロディだったのだ。

実際に曲を聴くと、間奏で流れるメロディが、ほぼあのFujinなのである。

参考までに曲を視聴できる動画を下記に貼り付けておく。


そして曲のタイトルを訳すると

「プーチンのような(男)」。

プーチンとは言わずと知れたロシア連邦の大統領のことを指している。
歌詞の大意をまとめると、「プーチンみたいな彼氏が欲しい」と歌っているのだ。

そしてひとつの仮説が成り立った。

「Fujinとは、プーチンがインドネシアの中で転訛したものである」

これはすなわち、

「最初はおそらくブートレグリミックスからはじまったが、
 引用しているうちに、インドネシア人も元ネタを忘れてしまった」
ということにも繋がるのではないだろうか。
……信じがたいかもしれないが、インドネシアでは時折このようなことがあるらしい。

そしてこの元ネタの存在が、2022年の今「Fujin」のフレーズが入った曲を選曲しづらくしている大きな要因として、日本のファンコット界に伸し掛かっている模様なのだ。

以下当該の大統領の名前について、キリル文字の「Путин」で表記したい。同じ意味ではあるが。

3.いま「Fujin」に降り掛かったもの

2022年2月24日、ロシア軍がウクライナに軍事侵攻したとの報道があった。

詳細な説明についてはさほど詳しくない為 割愛するが、
いかなる理由があったとしても、今の日本で生きる我々から考えると、衝撃的な事であるし、「力をもって攻め入る」というのは、感覚的になかなか信じがたい事である。

この悪い夢のような出来事を受けてから、Fujinに対する見方が変わった。
なにしろ歌の内容が、「侵攻を実施した側」である国の代表である
Путинを讃える歌なのである。

筆者は恐れていることがある。
たとえば、あの軍事侵攻を許しがたいと考えている人が、
歌の内容を不謹慎だと思うあまり、メロディまで憎く思ってしまっていないだろうか?
「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ということわざのような状態に陥っているひとがいるのではないか。

今までさまざまなファンコッターに愛されてきたフレーズであり、
多数のファンコットに引用されてきたトラックである「Fujin」が、
いまもっとも苦しい状態に立たされているように感じるのだ。

・・・・・・考えすぎなのかもしれないが。

4.「Fujin」に対して、ファンコッターとしての筆者の願い

私からファンコットを愛する皆様へ、お伝えしたいことがある。

もしもファンコットDJが「Fujin」のフレーズを引用したファンコットの曲を選曲したとしても、「不謹慎だ」と目くじらを立てないでほしい。
DJも、選曲した楽曲に「Fujin」が含まれていたとしても、自分を責めないで欲しい。

トラックメイカーはきっと、単に「皆好きなフレーズだから」「良いメロディだから」引用したのである。
DJも決して、あの軍事侵攻を実行してしまった国の代表を称える意図があって、「Fujin」を含むトラックを選曲しているのではない(と思われる)のだ。

ファンコッターなら理解できると信じているが、
彼らは、いや私達は、は曲の旋律を、律動を、愛しているのだ。

このフレーズを愛しているからこそ、さまざまなファンコットのトラックでこのフレーズが飛び出すのだ。
それこそがファンコットが持つ「全然関係ないフレーズ」の妙味なのだ。

筆者個人の考えではあるが、
これからどんな事起ころうとしても、
ファンコッターとしての筆者が抱いていた「Fujin」と呼ばれたフレーズを好いていた気持ちは、今も胸の内にあり、これからも揺らぐことはないのだ。

「でもきっとインドネシア人はそんなに難しく考えてないと思うよ」

・・・そうね。

(インドネシア現地の大御所Apin先生によるロシアンハードベースのファンコット)

おまけ-過去に製作したトラックの話-

余談だが、この「Fujin」というフレーズをフィーチャーしたトラックを、
筆者も製作したことがある。

2015年末〜2016年初頭に制作したものだが、
ちょうど私がNexus2のエクスパンションパック
Hardcore Italia」を買って間もない頃だったので、
このエクスパンションパックに収録された音色をたくさん使用している。

結果、Fujinの旋律に合わせてディストーションキックが鳴るという
変な曲に仕上がってしまった。

詳細は差し控えるが、軍の頒布物1号に当該の曲を収録しているので
お持ちの方は大事にしていただけると幸いである(再公開の予定はございません)。

またFujinとは直接関係がないが、個人的にロシアの音楽は好きなものが多い。
そのような思いを抱いた末に、最近ロシア民謡(というよりテトリス)のリミックスを勝手に製作した。
聴いていただけると幸いである。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?