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『萩原健一の狂気と、その時代』そして、『前略おふくろ様』へ。その2。

  ここで、私なりのショーケンの主観を述べさせていただく。私が特にショーケンを意識したのは1993年10月に放送された『課長さんの厄年』である。私は拙著『沢田研二と阿久悠、その時代』で、その当時のショーケンについて書いた。ここで少し弁明めいた感傷的な文章を書かせていただきたい。
 私が『沢田研二と阿久悠、その時代』はアメブロ由来のものであり、沢田研二さんにフォーカスをしているが、1960、70年代を彩った阿久悠先生、安井かずみ、なかにし礼、久世光彦等様々な人々をそれぞれクローズアップすることで、今の芸能界に繋がるのではないかと考えた本であった。無論、執筆時はアメブロとは並行して進行しており、沢田研二のライブ評も交えながら、論考を進めていた。
 そこで頭に常に引っかかっていたのは萩原健一のことであった。私がブログを書き進めていた時には、まさかショーケンが病魔に侵されているとは夢想だにしなかったのである。
 2018年には『Shoken Records』を設立し、同年の5月9日に22年ぶりとなるシングル『Time Flies』をリリース。同年3月24日NHK放送の『どこにもない国』で吉田茂を、ラグビーを愛する中年男を演じた『不惑のスクラム』、テレビ朝日の『明日への誓い』。そして2019年の大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』では、高橋是清を演じた。
 そして2018年にはブルーノートでのライブ活動など、ショーケンはこれから再出発するのだと私は考えていた。やんちゃから明らかな成熟へ。古希を迎えて新しい時代に歩みを進めると私は確信していた。まさか彼が完治不能な病魔に罹患していたとは……。 
 私の著書でも森茉莉がショーケンについて触れたエピソード(『ラストダンスは私に』)や、沢田研二がレコード大賞を受賞した時、ショーケンが「遅かったくらいです」と舞台で述べていたのも今を生きるショーケンを顕彰したかったからであり、存命であったからこそ意味筆致を抑えた面もある。
 語弊はあるがショーケンが亡くなり、追悼本が発売され、そしてBSでドラマが再放送されることで、俳優萩原健一を改めて自分の中で再検証しなければならない。それが本稿を書くきっかけなのである。


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