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※閲覧注意 沢田研二 2022年1月7日 「初詣ライブ」評 東京国際フォーラム。

 1月7日。正月も世間的には終わりの日。子供の頃に鏡餅を父が破り、母がお汁粉にして食べさせてくれたのを思い出す。6日に東京は久方ぶりに雪が降り、交通機関が混乱した。12月に新型コロナウィルスのオミクロン株が全国的に拡大の様相を呈している。年の瀬にコロナ禍と自然の猛威が各地を直撃した2022年。
 東京国際フォーラムで沢田研二の『初詣ライブ』を鑑賞することが出来たのは感慨深い。
 古希ライブからギターの柴山和彦と2人で全国を回っていたが、遂にバンド編成に復活した。考え方によるが、70過ぎたら好きなことをやると公言していた沢田研二。そのまま突き進んでもいいところだが、沢田研二サウンドを支えていた柴山氏に以前バックでベースを担当していた依知川伸一氏のバンド、BARAKAの全メンバー。そしてキーボードに斉藤有太。そしてコーラスに音楽劇で、沢田研二の相棒的存在として支えてきた、すわ親治、山崎イサオを加えた8人編成という、大所帯で新年を駆け抜けたことを素直に称えたいと思う。
 73歳となれば世間一般では思考が保守的になるが、沢田研二は更に更に前進することを選んだのである。我々は新型コロナ禍で塞ぎ込んだ2年間といえるが、今回のライブ編成は内向きになる心を打ち砕くようである。
 東京国際フォーラムに入ると、この様な張り紙があった。
「本公演は、冒頭に沢田研二、ご来場のお客様と共に神事による安全祈願を行います。ご参加はご自由となっております。
 安全祈願終了後、
コンサートが開演致します。」
 沢田の新型コロナウィルス、感染者を出さないで、コンサートの全行程が無事に終了させる「真心」を感じ取ることができた。着席するとステージに祭壇がある。本格的なもので沢田研二の祈りの波動が伝わってくる様だ。
 神主がメンバー全員の名前を読み上げ、初詣ライブの全日程、メンバーの無事、そして観客全ての一年の御多幸を祈ってくださった。メンバー、ファンを新型コロナウィルスから護れということか。その想いが曲目から表れた。
 一曲目は『護り給え』である。不覚にもこの曲を聴いた時はピーンと来なかった。脱原発ソングが護憲の歌シリーズの1つと勘違いしてしまったのである。1987年にリリースされた『告白-CONFESSION-』の最後に収録された作曲篠原信彦、沢田研二作詞の佳曲である。沢田の歌詞は後年の脱原発ソングの始祖的な曲をしっとりと歌い上げる。
 そして2曲目も『祈り歌』である。還暦時にリリースした『ROCK'N ROLL MARCH』から『神々たちよ護れ』である。この2年間、我々、沢田研二もこの2年間新型コロナに苦悩させられた。それは仕事、生活のみならず深刻なのは娯楽であった。音楽を素直に楽しめない、コンサートに行くことも、そもそも開催することが出来ないジレンマに翻弄されてきた。2020年は正月ライブは行われたものの、本格的な『Help! Help! Help! Help!』ツアーは中止を余儀なくされた。昨年のツアーはコロナ感染を考えて大人しめの曲が大半を占めていたが、このロックチューンを2曲目に炸裂された沢田研二の鬱憤は我々自身でもあるのだ。実はこの曲のレコーディングには依知川さんは参加していない。沢田は観客に語り掛ける。

「ようこそお越しくださいました。ありがとうございます!(拍手)明けましておめでとうございます。今年もまだ、新型コロナはまだまだ終息する様子もなく、本日、東京は922名を新たな感染者が発表されました。そんな中、また、足元の悪い中をようこそ、本当においでくださいまして、ありがとうございました!さて、今日は、七草です。秋の七草、桔梗、苅萱、女郎花、葛、萩、撫子、藤袴。春の七草、芹、薺、ゴギョウ、繁縷、ホトケノザ、スズナ、スズシロ。
 今日七草粥を食べるという風習も中国から伝わったそうですが、憶えたついでに七福神。(笑)恵比寿、広尾、六本木、(笑)日比谷線か!?」
 このオチで『そのキスがほしい』になだれ込む。秋の七草、春の七草を記憶したのは秋に公開される映画『土を喰らう十二ヶ月』の影響か?(笑)
 コロナ禍で打ちひしがれていた我々の心を解放する90年代の名曲!マスクをして歌えないが、静かに口ずさむ。客席では座りながらも、皆振り付けをしている。感動的な場面であった。そして80年代の名曲『THE VANITY FACTORY』、『ス・ト・リ・ッ・パ・ー』と畳み掛ける。
 そしてハイトーンな『6番目のユ・ウ・ウ・ツ』である。この曲の登場は意外の中の意外であった。73歳になる沢田研二が元気に走り回りながら歌う『6番目のユ・ウ・ウ・ツ』を生で聴けるとは誰が想像したであろうか。
 沢田研二は常に攻めの姿勢である。
 そして、怒涛の阿久悠ヒットソングゾーンに突入。古希のライブでも歌われた『カサブランカ・ダンディ』、そして久々に、芸能生活50周年ライブ以来の(1番のみ)『憎みきれないろくでなし』!井上堯之との絡みはBARAKAの高見一生と再現。高見さんは身長が高く、華やかなルックスなので観たかったシーンをやっと拝めたという感慨がある。そして加瀬邦彦追悼セットリストライブ以来の『恋のバッド・チューニング』!!攻める攻める。ロックに年齢は関係ないのだ。ポール・マッカートニー、ローリング・ストーンズを見よ!そして沢田研二を見よである。
 ギター一本ライブで白い着物で熱唱した『サムライ』。そしてレア曲『LOVE(抱きしめたい)』。73歳の男が歌い上げる阿久悠が託した愛の讃歌である。心に深く染み入る。『世紀の片恋』。下山淳が沢田研二に託したロックな名曲。会場は熱気に包まれる。『核なき世界』。やはり脱原発を希求する怒りのジュリーは健在である。
 『A・C・B』。ザ・タイガースのメンバーが見護るなかで、この曲を再びバンド編成で熱唱する意味は重要であろう。本編はここで幕を閉じる。アンコールとなるが、沢田の格好はドンキ・ホーテといえば良いのか、はに丸くんなのか…(笑)特に沢田自体がその格好について触れることはなかったが。そして語り始める。
「(笑)ありがとうございました。(拍手)もう、私、得意の水芸が使えなかったので、飛沫が飛ぶということで、禁止されておりましたので、全部飲み込んでしまいました(笑)(拍手)まだ、色々やりようがあるんですけど、もう、コロナは嫌だ。ほんとうに、まあ、そんなこといっていても始まりませんので、また、感染者が全国的に増えて参りましたので、この先どうなるかというのが、この1月だけに関しても、もう、蔓延防止云々が、あのー、広島、山口、沖縄に9日から発令されるということで、東京の方もどうなるかわからないし、大阪もどうなるかわからないし、名古屋もどうなるかわからないという状況の中ですが、まあ、でも、とにかく前向きに、前のめりに、やっていくしかないと思っております。(拍手)結局は僕たちだけじゃなくて、会場に来ていただいている皆様に1番リスクがかかることになるわけですが、本当に来ていただけて、感謝申し上げます、本当にありがとうございます。(拍手)
 兎に角、私どもも、舞台に立つ人間も、なんとかしてやりたいということで、やっているわけですが、これがどこまで続くんだろうか?続いたにしても、何とか運良く、ぬって、ぬって、やっていけないものかと、思っております。この間の秋のツアーの場合は予想外の福岡への台風上陸というのがございまして、コロナはなんとかやり過ごせたんですが、流石の台風は福岡に上がるとは思ってませんでしたので、それも、全部中止にはしなくて、今から思えばそれこそ、2020年のライブの中止は私自身も本当に悔やまれてなりません。もっと冷静に判断出来なかったかなと今も悔やんでおります。
 まあ、そんなことはしょうがないとはいえ、まあ、これも教訓に、前向きに残り少ない、歌の人生を全うしたいと思っております。そして、その新しいメンバーが、今日のこの7人でございます。いろいろ、いろんな考えがあってこのメンバーにしたわけですが、とにかく切磋琢磨して、これから日々、少しでも、レベル、ハイに行けるように、そうやってみんなで頑張っていきたいと思っております。(メンバー紹介)名前はつけないでおこうと思って(笑)七福神とか、(笑)ウルトラセブンとか(笑)、えーっ、ねっ!七草(笑)質ネタ(笑)いろんなことを考えます。個人個人で参加してもらっているという気持ちでございます。それでは、オマケです!」
 そうでしたか…2020年のツアー中止を気にしていらしたのですね。沢田さん、音楽人生は残り少なくないですよ!

 そしてアンコール一曲は還暦アルバムに収録されていた『ROCK’N ROLL MARCH』。還暦の時にも歌われていたが、私には沢田研二が死ぬまでロックを歌い続ける誓いの歌の様に感じられた。我々も沢田研二を先頭にそのマーチの末席に加わりたいと願う。
 そして『マンジャーレ! カンターレ! アモーレ!』アモーレは我々ファンのことではないだろうか。前向きで未来を感じさせる2曲をアンコールに据えたのは「前のめり」に生きる沢田研二なりの決意表明であると捉えたいと私は思う。
 もっと聴きたい欲求があるが、沢田研二の体が大切なので、セーブしながら音楽活動を88歳以上継続してもらいたい。
 ここからは私の雑感である。やはり沢田研二のファンも直接会場に足を運ぶのは難しい年齢になってきたのは否めない。お体が動かなくても今の沢田に寄り添いたいファンは沢山いるはずだ。
 纏まったライブ音源はザ・タイガースの2013年再結成ライブ。そして森本太郎のライブDVDで歌うくらいで60以降のライブ音源はリリースされていない。(音楽劇系は除く)やはり古希を超えてライブを継続している存在は文化遺産であり、人間国宝であろう。ライブでカメラ撮影している様子はない。ならばせめてライブ音源は記録しておいていただきたい。 
 贅沢をいうならば、値段は高くても構わないのでCD化リリースを待望したい。  
 今の沢田研二の歩みはグループサウンズの歴史でもある。ツィッター等のSNSでは、その様な声で溢れている。是非ココロ様にはご一考いただきたい。
 2023年までライブの予定が入っているジュリー。元気な姿で歌い、新曲をリリースする我らがヒーロー。今年のメインライブも目が離せないのは間違いあるまい。
 

2022年1月7日(金)東京国際フォーラム ホールA セットリスト
護り給え
神々たちよ護れ
そのキスが欲しい
THE VANITY FACTORY
ス・ト・リ・ッ・パ・ー
6番目のユ・ウ・ウ・ツ
カサブランカ・ダンディ
憎みきれないろくでなし
恋のバッド・チューニング
ポラロイドGIRL
サムライ
LOVE(抱きしめたい)
世紀の片恋
核なき世界
A・C・B

〜アンコール〜
ROCK’N ROLL MARCH
マンジャーレ! カンターレ! アモーレ!



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