短期連載UK Drill③ -2020年代のUK Driller-

前回に引き続き、知っておくべきUK Drillerのご紹介です。今回は2020年代のUK Drillerについて。紹介するDrillerの殆どが2010年代から活動していますが、ブレイク又は活動のピークが2020年代という事でご承知ください。


Central Cee

West London出身。2015年頃からキャリアをスタート。初期の頃はトラップサウンドに乗った、今とは異なるスタイルでしたが、マネージャーのYbeezの助言によりDrillサウンドへとシフトしていきました。

2020年、Drillスタイルにシフトしてからの初シングル "Day in the Life" が大ヒット。一躍トップスターの仲間入りを果たします。

Day In The Life / Central Cee

Cenchの代表曲である "Loading" や "Obsessed With You" を聞いてもらえれば分かるように、彼の楽曲はキャッチーだったりグルーヴィーだったりと、明らかに今までのDrillとは一線を画すサウンド。

Loading / Central Cee

Obsessed With You / Central Cee

既存のDrillの枠に囚われたくないというCenchならではの考えが、自身の楽曲に色濃く反映されています。

2021年にはGRM Daily主宰のRated Awardsにて、Male Artist of The Yearを受賞。更に1st Mixtape「Wild West」が全英アルバムチャート2位にランクインと勢いづくCench。そんな彼が今年2月、待望の最新作「23」をリリースしました。

前作同様バラエティに富んだ内容に仕上がった本作は、全英アルバムチャート初登場1位を記録。個人的にもかなりお気に入りの一枚で、特にイタリアDrillerのRondodasosa等を迎えたバンギンな "Eurovision" と、Hank Crawfordをサンプリングしたジャジーな "Retail Therapy" が秀逸です。

Eurovision / Central Cee ft. Rondodasosa, Baby Gang, A2Anti, Morad, Beny Jr, Ashe 22, Freeze Corleone

Retail Therapy / Central Cee


Digga D

1011所属。2017年頃から本格的に音楽活動をスタート。2019年、スマッシュヒットした "No Diet" 等を収録した1st Mixtape「Double Tap Diaries」が全英チャート11位にランクインし、ブレイクを果たしました。

No Diet / Digga D

幼少期にダンスホールやレゲエを聞いて育ったというDigga Dは、ラガフロウを取り入れたオリジナルスタイルを確立。また、随所に発せられる「Woi」のアドリブも特徴的で耳を惹きます。The Face誌のEthan Herlock氏はDigga Dを、「独特の流れと胸を膨らませるエネルギーを示した、UK Drillシーンで傑出したMC」と評価しています。

2020年には、代表曲 "Woi" "Bringing It Back" 等を収録した「Made In The Pyrex」をリリース。

Woi / Digga D 

Bringing It Back feat. AJ Tracey

Made In The Pyrexについて、「俺にとって、この作品はとても意味があるものなんだ。前作からずっと自分の中に溜まっていたものを、今作を通じて全て出すことができた」と語ったDigga D。全英アルバムチャート3位にランクインし、商業的にも大成功を収めました。

そして先日、一年振りとなる3作目のMixtape「Noughty By Nature」をリリースし、遂に全英アルバムチャートで1位を獲得しました。

統一感のあった前作とは打って変わって、様々なサウンドにチャレンジした意欲作。 途中で倍速に切り替わる "Wasted" 、50Centの21 Questionを今風にリメイクした "Hold It Down"  、ラガフロウが炸裂した "2k17" 等、聞きどころ満載な傑作となっています。

Wasted / Digga D ft ArrDee

Hold It Down / Digga D

2k17 / Digga D


Russ Millions

キャリアスタートは2018年頃。Splashシリーズ始めいくつかの楽曲をYoutube上でアップしていたRussですが、最愛の妹の死にショックを受け音楽活動から退いていました。しかし周りからの励ましもあってもう一度シーンにカムバック。精力的な活動を経て、シングル "Gun Lean" をリリースすると、これがたちまち大ヒット。

Gun Lean / RussMillions 

MVでRussが披露している、肩を左右に振る動きがネット上でバズり始め、サッカー選手のJesse Lingardがゴールを決めた際にこのダンスを披露すると一気に人気に火が付き、「Gun Lean Dance」として多くのチャレンジ動画がアップされました。

 RussやDigga D等に見られる、Drillとバッシュメント(パーティで派手に騒ぐという意味のレゲエ用語)を掛け合わせたスタイルは、「Crashment」と呼ばれるようになり、ポップ志向でダンサブルな現在のUK Drillの土台を築きました。

2019 年にはTion Wayneとのタッグで "Keisha&Becky" をリリース。シングルチャート19位にランクインし、Russの人気と勢いは加速していきます。

Keisha & Becky (Remix) / Russ Millions x Tion Wayne ft. Aitch, JAY1, Sav'O & Swarmz

更に2021年、同じくTion Wayneとのタッグでリリースした "Body" で、遂にシングルチャート1位を獲得。大量のRemixがアップされ、大きなムーブメントとなりました。

Body / Russ Millions x Tion Wayne 


Pa Salieu

アフリカのガンビア生まれの両親を持つPa Salieuは、スラウで生まれた後ガンビアに移住。その後イギリスへ戻り、コベントリーで過ごす事になりますが、幼少期のガンビアでの経験が自身の音楽キャリアに多くの影響を与えたと語っています。

祖母と親友の死をキッカケに鬱に陥ったPaは、リリックを書き溜める事で喪失感から抜け出そうとしていたそうです。これが彼のキャリアのスタートと言えるでしょう。

2017年、Tribal1と言う名でデビュー。当時はDrillやTrapサウンドに乗せた楽曲をリリースしていました。

Tribal Lean / Tribal1

2019年頃からPa Salieuに改名。幼少期、いとこから盗んだiPodに入っていたVybezKartelと2Pacに影響を受けたそうで、Pa Salieuと名乗るようになってからはDrillサウンドから離れ、アフリカンミュージックとDrillの融合を試みます。そして2020年、UKラップシーンを支える人気YouTubeチャンネル 「Mixtape Madness」から “Frontline” をリリースし、大ヒットを記録しました。

Frontline / Pa Salieu 

Pa Salieuのように、AfrobeatsとDrillやReggaeを融合させたUK独自のAfrobeatsの事を、「Afroswing」又は「Afrobashment」と呼ぶそうです。

ブレイクを果たしたPa Salieuはその後、"Hit The Block" や "Year of The Real" で有名Drillerと次々に共演。また同業者のみならず多くの著名人からも支持を受け、イブニングスタンダード紙では「2021年注目のラッパー」として紹介されました。

Hit The Block / SL x Pa Salieu

Year of the Real / Meekz x M1llionz x Teeway x Pa Salieu

しかしDriller達とのコネクションが広まっていっても、Pa Salieu自身は飽くまでAfroswingスタイルを全面に押し出していきます。その志向は、 "My Family" や "Bad" に顕著に表れています。

My Family / Pa Salieu ft BackRoad Gee

Bad / Pa Salieu

Paのオリジナリティ溢れる音楽スタイルは世界中で評価され、2021年にはアメリカの人気テレビ番組「The Tonight Show」に出演。更にGQ誌の「11 "new musicians who'll make 2021 better」に選出。今後の活躍が最も期待されるDrillerの1人として注目を集め続けています。


Tion Wayne

ノースロンドン出身。2010年にはキャリアをスタートさせていましたが、ブレイクのキッカケとなったのは2019年。NSGというグループの "Options" に参加したT-wayneは、この曲でシングルチャート最高7位を獲得しました。

Options / NSG ft. Tion Wayne

その後Russ Millionsとタッグを組み、 "Keisha & Becky" "Body" の二曲が特大ヒット。更に、DutchavelliとStormzyをftした "I Dunno" もシングルチャートでTOP 10入りし、ここ数年でUK Drillシーンにその名を轟かせました。

I Dunno / Tion Wayne x Dutchavelli x Stormzy 

また両親がガーナ出身ということもあり、Optionsに見られるようなAfroswingの要素をDrillと並行して自身の楽曲に取り入れています。

Houdini / KSI ft. Swarmz & Tion Wayne

4AM / Manny Norté, 6LACK, Rema, Tion Wayne ft. Love Renaissance



Etcetera…


ここからは紹介文は省いて、Drillerの名前、重要曲(Essential song)と個人的なお気に入り曲(Favorite Song)を、それぞれご紹介します。

Poundz

Essential songs

 Opp Thot

SKENGBOP


Favorite Songs

Fake Love

Get Rich N Get Paid


Aitch

Essential songs
Rain

Taste (Make It Shake)

Ei8ht Mile

Favorite Songs
Baby


ArrDee

Essential songs
Oliver Twist

Flowers (Say My Name)

Favorite Songs
War


AJ Tracey

Essential songs
Butterflies (ft. Not3s)

Thiago Silva ×Dave

Favorite Songs
Summertime Shootout ft. T-Pain


今回でUK Drill特集は最後。シカゴ / UKと、Drillのルーツを(備忘録も兼ねて)辿っていきましたが、いかがだったでしょうか?USではTrapが未だ覇権を握っていますが、UKは完全にDrillがメインストリーム。NY Drillの興盛もあり、USのHIP HOPシーンに今後Drillがどのように食い込んでいくのか楽しみですね。

ここからは個人的なお話なんですが、コロナの影響で長らくDJをお休みせざるを得ない状況が続いていましたが、マン防も解除されようやくDJ活動が再開できるようになりました。ここ2-3ヶ月はnoteの更新率を上げていましたが、ここからはまたマイペースな更新に戻りたいと思います。その分、現場でDrillをプレイしていくつもりです。最後にGWのスケジュールを載せておきます。次は現場でお会いしましょう。

4/30 @ 中野N's

PARTY

5/4 @ 渋谷asia

EXODUS

5/8
@ 吉祥寺The Daps

The Daps × MOTHER FUNKASTA SHIP


DJ MoB

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