短期連載シカゴDrill① -Drill 101-
お久し振りです。
このnoteでは基本的にNY Drillを専門として運営してきたんですが、「Dr. Drill」と名乗る以上いつかはシカゴDrillについて言及しないとだなと常々思っていました。最近Twitterで若い子からフォローされる機会が増えた事もあり、そろそろシカゴDrillに向き合おうじゃないかと、重い腰を上げる事にしました。
んでnoteを書く為にあれこれ調べていたんですが、調べれば調べる程書きたい事が増えてしまい、こりゃ1回で全てまとめるのは無理だなと判断しました(笑)なので短期連載という形で、数回に分けてシカゴDrillの記事をアップしていきたいと思いますので、しばしお付き合いの程よろしくお願いします。
という事で連載1回目は、Drillの概要から。
1. What's the meaning of Drill ?
プロデューサーのYoung Chop曰く、Drill Musicは元々Dead Musicと呼ばれていたそうです。彼等の生まれ育った地域では殺人や強盗が当たり前のように起き、その事についてラップしていたからだとか。
Young Chop「周りの連中は普段から人が殺されてるのを間近で見てるから、俺達の歌に共感できるのさ」
そして"Drill"という言葉は元々、彼等の仲間内で良く使われていた共通言語だったそうです。「お前の新しいスニーカー、超ドリルじゃん」「なあ、ドリルしようぜ」と言った具合にどのような意味にもなる言葉で、Gunnaが最近流行らせた🅿️と同じような意味合いだと思ってもらえれば分かり易いでしょう。
「タフなライフスタイルを表現するには自分達の言葉が必要だった」と語るキーフ達は、次第に自身の音楽をDrillと形容するようになったそうです。
2. Who Started Drill ?
Drillという言葉が一番初めに使われた曲は、L.E.P Bogus Boys第3のメンバーとの呼び声が高かった、故Pacman(2010年没)の「It's A Drill」でした。
しかし、Drillを世に広めその礎を築いた人物は間違い無くChief Keef。
95年生まれのKeefは、12歳の頃に叔父の紹介で日本人プロデューサーDJ KENN氏と知り合います。
KENN氏のビートメイクを見ている内に自身も曲作りに興味を持ったキーフ。2011年、KENN氏と共にシングル「Bang」をリリースしました。
氏のスタジオでわずか30分で撮影したというこのMVが大ヒット。その後リリースした「Aimed At You」や1st Mixtape「Bang」も軒並みヒットを記録し勢いづくキーフとKENN氏。そして迎えた2012年、全米中にその名を知らしめる事になった代表作「I Don't Like」をリリースしました(こちらはYoung Chopがプロデュース)。
暴力的なリリック、ダークで激しいビート、自宅で撮ったローファイなMV等、Drillの要素をふんだんに盛り込んだこの曲のヒットによって、Drillミュージックは世界中へ広まっていきました。
強烈なバズを産んだキーフはその後、レーベル争奪戦の末インタースコープと契約し、デビューアルバム「Finally Rich」をリリース。晴れてメジャーアーティストの仲間入りを果たしました。
3. Where is the O'Block ?
Drillerのインタビューやリリック等で頻繁に出てくるこの言葉は、シカゴ南部の "Parkway Garden Homes" と言う低所得者用集合住宅(サウスキングドライブの6400ブロック)の事を指します。
以前はWIIIC Cityと呼ばれていましたが、2011年に敵対するギャングメンバーによって殺されたOdee Perryを偲び、Odeeの頭文字を取ってO'Blockと名付けられました。
建築家ヘンリーK.ホルスマンによって建てられたこの集合住宅は、差別的な住宅政策によって追いやられたアフリカ系アメリカ人達が90%以上を占め、ギャング活動が盛んになるにつれてシカゴで最も暴力的な街区の中心となってしまいました。
そんなO'Blockは、Chief KeefやLil Durk、King Von等、数多くの有名Drillerが育った場所として有名です(実はミシェル・オバマ元大統領夫人もO'Block出身)。
劣悪な環境が彼等のアーティスト性を研ぎ澄まし、全米規模のヒットに繋がると言う皮肉。Drillが2010年代以降のGangsta Rapと称される由縁です。
2011年11月22日には、建築上の重要性とアフリカ系アメリカ人のコミュニティ開発における役割のために、O'Blockが国家歴史登録財に追加されました。
今日はここまで。こんな感じで色々な角度からシカゴDrillについて書いていきますので、今後もお付き合いよろしくお願いします。記事が気に入ったらフォローやいいねも是非!
DJ MoB
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