星野源と福山雅治。そして我々はどうするか。

 なんつっても星野源を見る女子の視線は熱いらしい。俳優業も素晴らしく、音楽はしびれあがるくらい良い。ルックスも柔和で爽やかだ。聞く所によると話をさせても面白いし、気さくで下ネタもイケるらしい。ふざけるな、悔しいじゃないか。

 希代のモテ男と言ったらキムタクか福山だった。その価値を下げることはなく、後続の男前と共存共栄してずっといる。その余りに端正なルックスの次元が違う感じで妬む気にすらならないが、それでも我々、我々と一括りに出来得るほどオレと同じくらい程度の低い同胞も少ないだろうが、からしてみれば「こっちにはコレがある」と大事にしていた砦があった。「かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう」とは早川義夫のアルバムタイトルだけれど、その中身の奥深さとは一線を画す、タイトルの都合のいい解釈をふりかざし、ほんの些細な取るに足らない「ありゃかっこわるいんだよ、本当は」とか言って「勝っている」ところを見つけては踏ん張って来たんだ。

 たとえば福山。かっこいい。演技も出来る。ヒット曲もたくさんだ。それでも自分が聞いているポピュラーではない、だけど素晴らしい音楽と比べるとハングリーさや心の底から女性を渇望したような魂がない。そんな言いがかりを糧に足場を見つけて来た。

 それでも福山は食い下がる。「元々はアングラ指向だった」「sionとかが好きで尊敬している」「カバーアルバムで遠藤賢司を歌ってみる」「ギターも上手く、劇伴作ったりプロデュースも」「はたまた銭形平次を歌ってみておちゃらけたかと見えて、その歌詞の深さを知っている」みたいに言ってくれる。リリーフランキーとの親交で「男同士、中学生みたいにエロ話したりキャッキャやるのが好き」な感じや「包茎なんです」との吐露からボンクラ文化や非モテへの理解と同化を示す。

 そこまでされても「ブラックミュージック成分が足りない」「吹石一恵のオッパイ揉んでるくせにどの口が『モテないんです』って言うんだよ、クソが!お前んちの前で死ぬぞ!」と譲らない。そもそもが次元が違うのに。

 超絶ルックスが良く、音楽においても俳優・タレントとしても一線を走る福山は「いやぁ、微妙にそうじゃないんだよな」「そうは言っても吹石一恵のオッパイ揉んでるんでしょう?握手してくださいよう」の隙を与え続けてくれる。「泣き歌カバー」とかして絶好調のあっち側をやってくれない。非モテであったりボンクラなそういう人なのかもしれないけど、いかんせん他の全部のパラメーターが振り切ってるから、こっち側としてはそれを奪われたらたまんないし、こちらの最後の砦の「負けてるから勝ってる」感はどうしても福山には無い。

 そこで星野源だ。どこをとっても「いい感じ」で「絶妙」。

 その世界ではどメジャーではあるけれど劇団出身。舞台の出だ。劇団四季でもないし、「ロミオとジュリエット」とかじゃない、大人計画出身。エロもタブーもある。音楽。サケロック。めっちゃ気持ちいい。インストバンドっていうちょっと一歩踏み込まなきゃ触れられない位置。いいともでスーダラ節。曲もいい。細野晴臣の寵愛。マーチンデニーとかみたいなエキゾチックだったり軽快なジャズみたいなサウンド。ソロで歌いだしたら、これまた曲が良い。ブラックミュージックの雰囲気もあり良い。コントもイケる。ラジオで下ネタ。20代後半から脚光を浴び始め、オーバーグラウンドに出たのは30超えてから。オレっちみたいにこぼした牛乳を拭いた雑巾を4年間放置してシュレッダーにかけたみたいなのとは比べようも無いほど整ってるけど絶世の美男子っていうほどではないルックス。でも、愛嬌もあるし爽やか。今までずっと超絶モテモテだったわけでもないだろうけど、絶妙にモテてそう。だけど、苦労も失敗も情けないこともしてきてる感じ。死を意識するような大病を経験して、だからこそ見える軽やかさの中の奥行き。紅白。夏帆のオッパイ。

夏帆のオッパイ。

なんだよ、おい。

 こちらが投網漁を横目に「こうやってね、いつ釣れるともわかんないで竿を垂らしてると心が洗われるようなんですよ。そしてね、釣れたら魚を大事に思えるんですよね」なんて誤摩化して、腐った餌をぶら下げてた横で似たような竿で爆釣。しかも、ちゃんと沖に出る船もこつこつ貯めて手に入れる。ふとちゃんと考えたら、こちらは釣り糸も切れてるしそもそもスタートが違った。もっと手前で気付いていれば、ここまで無為に過ごすこともなかったのに。こっち側の佇まいであっち側へ辿り着いてるんだ。で、こっち側と思ってたとこにすら自分はいなかった。

 妬まずにいられようか。毛頭妬む資格などないのだ。だって、自分だってしてたつもりの努力は星野源も当然しているのだし、それ以上なんだ。「こっちにはコレがある」なんてすがっていたものもあっち側にいっちまってるし、シッポを触れてただけで掴んでもいなかった。そもそもみんな持っている。それでも待つのか、足掻こうとする気概で何かしら頑張るしか無いんだ。歯ぁ食いしばってヤンジャンのグラビア睨みつけた人間の下品さだってプラスになるはずだ。でも、それすら星野源はきっと持ってるんだ。負けだ。来世は花になるしかない。

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