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その答えは妥当だが、妥当すぎる。 16bitセンセーション ANOTHER LAYER第四話の感想。

前回までの感想もあります。


守を説得する四話

四話はコノハちゃんが守を説得する回でした。

コノハちゃんは過去にタイムリープすることで、現代ではできなかった夢のあるゲーム作りに参加することができていました。しかしそれはプログラマーである守がいなければ実現しません。そのため開発チームから抜けようとする守を、何とかして説得する必要がありました。

守の意思を頑なにしていたのは、98への愛でした。

それをコノハちゃんはどのように説得したのでしょうか。

説得する必要はなかった。

蓋を開けてみれば、コノハちゃんは守を説得する必要はなかったのかもしれません。
守は98への愛を持つ一方で、事実に基づいて冷静な判断を下すことができる人物でもあったからです。

四話冒頭からしばらく、守は98でなければ開発に参加しないという意志を曲げません。しかしある事実を知った途端、それをあっさり引っ込めます。その事実とは、コノハちゃんが未来人であることでした。

コノハちゃんが持っていたタブレットを修理した守は、それが1996年の技術で作られたものではないことに気づきます。これがコノハちゃんが自身を未来人だというのが事実であることも示し、そして、そのコノハちゃんが98を全く知らなかったことから、未来には98が存在しない。つまりWindowsに飲み込まれてしまうことをも指し示してしまいます。

「未来からやって来たお前は、パソコンのことを知ってるのに98のことは全然知らなかった。お前の時代、未来には98はもうないんだな。」

16bitセンセーション ANOTHER LAYER第四話より

この後の守の転身はスムーズでした。

守は最後のけじめとして98への愛をコスプレ(?)で表現し、以降は98の終焉を受け入れ、Windowsでの開発に参加すると言います。守は事実を冷静に見つめ、愛を持ちながらも落ち着いて判断することができる人物でありました。

私は三話の感想で守を説得するのはかなり難しいのではないか、と予想しました。しかしこれは的外れでした。

守が開発に参加し、事態はこれで丸く収まる…かと思いきや、彼のこの態度を咎めたのは、他でもないコノハちゃんでした。

いったいなぜ?

すれ違っていた守とコノハ

98の未来での事実を知るや否や、その愛を引っ込めた(ようにも見える)守ですが、コノハちゃんはこの態度を認めません。

「守君は、それでいいの?」

16bitセンセーション ANOTHER LAYER第四話より

98の未来をそんなに簡単に諦めてしまっていいのか、と守に言うわけですが、しかしコノハちゃんのこの主張は、よく考えてみると変です。

なぜならコノハちゃんは、元々は守にWindowsでの開発に参加してもらうことを願っていたのですから。

98を諦めるという苦渋の決断を下すことは、彼女が守に求めていたことそのものであったように思います。

そうだとすれば、ここでコノハちゃんが言うべきセリフは「ごめんね、守君…」辺りになりそうなものです。しかしコノハちゃんは守に謝ったり礼を言ったりするどころか、その態度を咎めます。

ここから、コノハちゃんと守は、実はその考えですれ違っていたことが明らかになったように思います。

コノハちゃんは、守にWindowsでの開発に参加してほしいと願いつつも、98を諦めてほしいとは全く思っていなかったのです。


夢を、愛をそう簡単に捨てるな

「だったら、98のない未来なんて守君が変えちゃえばいいんだよ。」
「守君の98愛って、そんなものなの? そんな未来なんて、嫌な未来なんて変えていいよ。いいんだよ。」

16bitセンセーション ANOTHER LAYER第四話より

未来など変えてしまえばいい。

コノハちゃんの熱い言葉で、守は気持ちを改め、98版とWindows版の同時開発を条件に、アルコールソフトに復帰します。この時、守は二話で示した美少女ゲームへの偏見も、ひとまず引っ込めたのではないかと思っています。

めでたしめでたし…?

話のオチとしては妥当なところだと思います。ただ私は、二人がたどり着いたこの結論には、少しガッカリもしました。

その答えは妥当だが、妥当すぎる。

コノハちゃんと守が出した答えは、無難で、妥当な落としどころだと思います。

ただ、妥当すぎて面白くはない…というのが、私の正直な感想です。

夢を諦めるな。愛を捨てるな。未来など変えてしまえばいい。

なるほど、どれもカッコいい言葉です。胸に掲げて生きていきたいものです。ただどの言葉も精神論の範疇であり、現実的な問題に立ち向かうには力の弱い言葉だと思います。

2023年、現実問題として美少女ゲームは衰退していますし、98は現役ではありません。

私は、本作がこの厳しい現実に対し、どのような答えを出すのかに注目しています。立ちはだかる現実と理想の対立はありふれたテーマですが、具体的なモチーフとして美少女ゲームを取り上げていたので、本作に興味を持ちました。

そのアンサー…現実に立ち向かって夢を叶えるための答えが「諦めるな」というのは妥当で無難ですが、妥当で無難すぎて面白くありません。

現実は強固で、カッコいい言葉だけでは崩せない。では、コノハちゃんはその夢をどのようにして持ち続けるのか? 叶えるのか?

本作がこの部分への踏み込みを、上記の妥当で無難なところまでで留めてしまうとするならば、私の本作への最終的な感想に、大きな影響を与えるかもしれません。

とはいえ、まだ八話も残っています。

コノハちゃんがどのようにして夢にアプローチするのか。これを楽しみに視聴を続けます。


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