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ハイエンド系とはなんだったのか?

ハイエンド系、それは90年代の古臭くなったエロ絵の更新。
ハイエンド系、それは美大卒の作家による才能のダンピング。
ハイエンド系、それは少女の体をねっとりいやらしく描く新しい波。

90年代末期の頃、ハイエンド系作家によって当時のエロ漫画雑誌に求められる絵のレベルが急激に高まり、仕事を奪われ露頭に迷いニッチなジャンルの同人で食っていくか、それとも吉牛で働いたりバイトで漫画雑誌の編集者になったり。今までは1年に単行本を2~3冊くらいだしてその印税でのほほんとやっていけたエロ漫画家らは大打撃を受けた。
活動の拠点を北海道から東京に移し、今までのペースで単行本を出して、そして同人もやって面白おかしく生きていこうとする作家が上京した瞬間に雑誌の編集長から「悪いけど、もうキミの居場所はないから」と言われ戦力外通告されたという話もある。

かつてガイナックスの岡田斗司夫がガイナが経営難に陥った時に「オーストラリア作戦」という物を思いついた。

オーストラリア作戦とは!?
まずオーストラリア最強の動物は何だと思う?トラ?ライオン?

正解は「犬」だ。


オーストラリアにはトラもライオンも居ない。コアラとかカンガルーとかそんな戦闘力や機動力のある動物が居ないので入植者が持ち込んだ犬こそが最強の動物なのだ。
エロゲの世界にはアニメ業界と違いトラやライオンもチーターも居ない。だから自分らがアニメで鍛えた腕前を発揮すれば勝てると予想したのだ。そのきっかけになったのは「はっちゃけあやよさん」という紙芝居エロゲーで、このレベルでヒットを出せるなら自分等にも出来る!と思ったのだ。
その結果ガイナックスはエロゲ界で覇権を掌握し脱罪をするほど儲かった。

90年代のエロ漫画の世界もすでに古くなった絵柄で相変わらずレベルの低い事をやっていた。東京でトランスフォーマーの動画を描いていた動画マンとか、そんなしょぼくれた人間らをスカウトしたり80年代のロリコンブームの頃からの妙にデカい顔してる古臭い絵柄の鼻くそみたいな作家とか、あの当時のエロ漫画雑誌の読者から言わせてもらえば正直ゴミのようだった。ただ世の中にまだバブルの余波があってなんとなく若者らも金を持っていたから惰性で雑誌も単行本も売れていた時代だ。

そんなレベルの低い世界に美大卒の作家らがやってきた。彼らは彼らで本来ならデザイナーとかアーティストとかもっと志の高い職に就いているはずが不況により居場所が無くてあえて程度の低い世界に才能をダンピングして売り込んだ。
雑誌からすれば「この美大卒の作家がこんなに安く使えるのか!?」と大喜び。特に彼らの描くねっとりとした腰回りの造形は早くのうちからファンロードで有馬啓太郎が「これが新時代!」と指摘していた。
そして彼らのもうひとつの特徴はカラーが抜群に上手かった事。60年代生まれの古い作家はモノクロは上手いのだがカラーが下手だ。白い服の影に灰色や水色を使うようなのは古い作家であり美術を勉強してない証拠だ。美術を勉強したならそこは紫を使うべきなのだ。70年代生まれの作家はカラーが上手い。しかしそれ以降の世代はカラーが上手いがモノクロが下手。70年代作家というのはカラーが上手くてモノクロも上手いという60年代作家とのハイブリッドモデルだ。
透明感溢れる水彩を使い、CGにも早いうちから適応した。CGにより本来の手塗りなら出来ないようなグラデーションや特殊な彩色(金髪の影の部分をピンクで表現するとか)を駆使して今のコンピューターでの塗りの基礎を作り上げた。
しかしこれだけのテクニックを持った人間らがまるで何もなかったかのように忘れ去られたのは何故だろう?

そもそも彼らのフィールドはメジャーじゃない。所詮エロ漫画やその類では大作家にはなれなかったという事か。
メジャー誌の漫画なんて今でも下手くそな作家が多い。彼らはもう高校生のうちから雑誌に投稿しそして美大なんか行かずデビューする。そして別に絵が上手いからと言って漫画が面白いわけでもない。ハイエンド系作家らに漫画を描かせたらつまらない事つまらない事。ベタなメジャーの想像力の方が彼らに勝ったのだ。進撃の巨人の絵なんて横顔が下手くそだったりするのにあれだけ大ヒットした。賭博黙示録カイジとかあんなピノキオみたいな鼻の絵でいいのか!?と思ったが大ヒット。結局ハイエンド系というのはジャンプとかマガジンとかサンデーとかチャンピオンとかヤングマガジンとか、そういう場所に少しでも食い込めなかった。メジャーに挑戦することよりも安易なエロ漫画に才能をダンピングすることを選んだ自堕落な人間とも言える。ゆでたまごみたいな奇抜な発想力があるわけでもなく、ビッグコミックの大御所作家みたいなとんでもない量の資料を漁って勉強しまくった作品を出せるわけでもなく。東方projectみたいな愛され力もなく。時代の徒花としてひっそりと終わったムーブメント。
その手法だけが抜き取られソシャゲやアニメの絵の中で生き続けている。そしてPixivの絵はおっぱいびろーんとかケツの肉盛りまくりとか、90年代エロ漫画のセンスに回帰している。90年代エロ漫画のセンスにハイエンド系から抜き取ったテクニックを融合した新たなるハイブリッド。

そしてその絵をAIが吸収しbotで生成しているという地獄が広がっている。


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